もう一度口づけしますわ2010-06-17

カテリーナとグルーシェンカの微妙なやりとり

≪- Не погнушались мной, милая, достойная барышня, - нараспев протянула Грушенька всё с тою же милою, радостною улыбкой.
- И не смейте говорить мне такие слова, обаятельница, волшебница! Вами-то гнушаться? Вот я нижнюю губку ещё раз поцелую.≫

<試訳>「私を見下したりなさらなかったですもの、ご親切な、ご立派なお嬢さんですわ」 相変わらず美しい、嬉しそうな微笑をたたえながら歌うように言葉を伸ばしてグルーシェンカが言った。
「そのような事をおっしゃらないで下さいな、魅力的な方、夢のように美しい方! あなたのような方を見下すなんてとんでもない。私、ほら、もう一度あなたの下唇に口づけしますわ」

カテリーナがグルーシェンカを褒めちぎりますが、心からと言うよりも演技じみた感じがあります。それに対してグルーシェンカは、笑みを浮かべながらも距離を置いています。相手は遍歴を重ねた街の女、自分は由緒ある婚約者、しかもホームグラウンドでとなれば状況はカテリーナが優位なのですが、やりとりで立場が微妙に変化していくのが分かります。二人の女性の描き分けの巧みさに引きこまれてしまいます。