これ以上何を悩むことがある2010-07-03

ドミートリィが心の動きを説明する

≪- Стой. Посмотри на ночь: видишь, как мрачная ночь, облака-то, ветер какой поднялся! Опрятался я здесь, под ракитой, тебя жду, и вдруг подумал(вот тебе бог!): да чего же больше, маяться, чего ждать? Вот ракита, платок есть, рубашка есть, верёвку сейчас можно свить, помочи в придачу и - не бременить уж более землю, не бесчестить низким своим присутствием! ≫

<試訳>「まあ待てよ。この夜を見てみなよ、ほら、何て暗澹たる夜なんだ、雲が覆っていてひどい風が出てきたな!僕はここで身を隠していたんだ、柳の下でお前を待ってな。そして急に思ったんだ(誓って本当だ!)これ以上何を悩むことがあるんだ、何を待つことがあるんだってね。ほらここに柳があるしスカーフもシャツもある、今すぐ綱を編めるしおまけにズボン吊りまである。もうこれ以上大地に迷惑をかけたり、低劣な僕の存在で辱めることはないんだって!」

ドミートリィがアリョーシャを待ちながら自殺の思いにとらわれた心情を語ります。自分の存在が大地を汚しているとの自責の念と、待つべき希望もないという絶望感に襲われたのです。それを弟に率直に語るところがまた彼の純真さでしょうか。「大地」は地球、地面、この世などの意を持つ語ですが、ロシアでは特別な語感を伴うことがあります。「罪と罰」で殺人を犯したラスコーリニコフが大地に接吻して赦しを乞うように、大いなるものの象徴のようです。広大なロシアの大地ならではです。