唯一人愛している2010-07-04

アリョーシャに会って希望を取り戻すドミートリィ

≪И вот слышу, ты идёшь, - господь, точно слетело что на меня вдруг: да ведь есть стало быть человек, которого и я люблю, ведь вот он, вот тот человек, братишка мой милый, кого я всех больше на свете люблюи кого я единственно люблю! И так я тебя полюбил, так в эту минуту любил, что подумал: брошусь сейчас к нему на шею! Да групая мысль пришла: "повеселю его, испугаю". ≫

<試訳>「そこにちょうどお前がやって来るのが聞こえて、ああ、突然僕に何か感慨が襲ったんだ。そうだ、この僕だって愛する人がいるじゃないか、ほら確かにあいつだ、やってくるあいつ、この世で一番好きで唯一人愛している僕の可愛い弟だ!それでその瞬間お前をすっかり好きになってしまって、今すぐ飛びついてお前の首に抱きつこうと思ったのさ。驚かして喜ばしてやろうという馬鹿な考えが湧いたんだ」

首を吊ろうかとまで落ち込んでいたドミートリィがアリョーシャの足音を聞きつけて急に元気を取り戻すのです。彼にこのような感情の激しい変化、病的な興奮の気質があることを作者は以前説明しています。それにしてもアリョーシャの存在が荒んだ兄の気持ちを救って生きる希望を与えるところに、苦悩の底で絶望的な状況にあってもなお人間への信頼を描く作者のメッセージを感じます。小説の力です。