私達は優れているわけじゃないのです2011-01-01

 ≪- Нет, Lise, нет презрения, -твёрдно ответил Алёша, как будто уже приготовленный к этому вопросу, - я уж об этом сам думал, идя сюда. Рассудите, какое уж тут презрение, когда мы сами такие же как он, когда все такие же как он. Потому что ведь и мы такие же, не лучше. А если б и лучше были, то были бы всё-таки такие же на его месте...≫

<試訳> 「いや、リーズ、蔑視なんてありません」 この質問にはすでに準備ができているかのように、きっぱりとアリョーシャが答えた。「僕はもうこの事について、ここへ来る道すがら自分で考えたんです。考えてもごらんなさい、私たち自身があの人と同じ、いや皆があの人と同じ存在なのですからどうして蔑視などするでしょうか。私達は優れているわけじゃないのです。仮にそうだとしてもあの人のような立場になったら同じようになるでしょう・・・」

・ リーズの懸念がはっきり否定されて、考え抜いた彼の人間観が確信をもって語られます。二十歳前の若者二人がこうして人間の尊厳について深く考え合う姿が清々しく眩しく感じられます。時は過ぎゆきましたが、今もなお作者のように若い世代に期待したい状況に変わりはありません。

取るに足らない人間2011-01-02

 ≪Я не знаю, как вы, Lise, но я считаю про себя, что у меня во многом мелкая душа. А у него и не мелкая, напротив, очень деликатная... Нет, Lise, нет тут никакого презрения к нем!≫

<試訳> 「僕はあなたがどうかは分かりませんが、リーズ、自分については多くの点で取るに足らない心の持ち主だって思っているんです。ところがあの人は取るに足らないどころか、正反対ですごく礼節のある方で・・・ あり得ない、リーズ、あの人を見下すなんて決してありません!」

・ 蔑視など全く思いもよらない事をリーズに心から訴えるアリョーシャですが、そこに偽りはないと確信させられます。カテリーナから託された事を果たすのはアリョーシャにとって何の見返りがあるわけではありません。難しい役割を誠実に実行しようとする彼の努力はゾシマ長老の教えに沿ったものに思えます。

本心からですの2011-01-03

 ≪- Подойдите сюда, Алексей Фёдорович, - продолжала Lise, краснея всё более и более, - дайте вашу руку, вот так. Слушайте, я вам должна большое признание сделать: вчерашнее письмо я вам не в шутку написала, а серьёзно... И она закрыла рукой свой глаза. Видно было, что ей очень стыдно сделать это признание. Вдруг она схватила его руку и стремительно почеловала её три раза.≫

<試訳> 「こちらにおいでになって、アレクセイさん、とリーズは赤らめた顔をいっそう赤くしながら話し続けた。「お手を借りますわ、ほらこうして。私、大変な事を白状しなければなりませんの。あなたに書いた昨日のお手紙は、おふざけなんかじゃなくって本心からですの・・・」彼女は両手で目を覆った。この告白が彼女にとってとても恥ずかしいことが明らかだった。ふいに彼女は彼の手をつかむと素早く3回口づけした。

・ アリョーシャの思慮深さや謙虚さにリーズは改めて尊敬の念を抱き、彼に対する気持ちを素直に表すのです。時に辛辣だったり茶化したりする彼女ですが、それは本来の姿を隠して演じているのでしょう。互いに想いを寄せて結婚を望んでいる二人が感性や考え方に共鳴し合う清々しい場面です。

あなた以上の相手はいません2011-01-04

≪- Скажите лучше, за что вы берёте меня, такую дуру, больную дурочку, вы такой умный, такой мыслящий, такой замечающий? Ах, Алёша, я ужасно счастлива, потому что я вас совсем не стою!
- Стоите, Lise. Я на-днях выйду из монастыря совсем. Выйдя в свет, надо жетиться, это-то я знаю. Так он велел. Кого ж я лучше вас возьму... и кто меня креме вас возьмёт? Я уж это обдумывал.≫

<試訳> 「それよりもお尋ねしたいの、なぜあなたは私をお選びになったの、こんなお馬鹿さんを、病気の愚かな娘を。あなたの様に賢くて思慮深くてよく気がつく方が。ああ、アリョーシャ、とっても幸せですの、私、あなたにはちっとも相応しくありませんのに!」
「相応しいんです、リーズ。僕は数日中に修道院を出てしまうんです。世間に出ていくからには結婚しなければならないという事は僕も分っています。そうするようにあの方もお諭しになったんです。あなた以上の相手はいないんです・・・ それに、あなたの他に誰が僕を選んでくれるでしょう。僕はもうこの事をとことん考えたんです」

・ まだ遠い先の結婚について素直に心を通わせ合う二人の姿に微笑ましさがあります。他の場面では葛藤や興奮のやり取りが多いので、ここでの温かさが引き立ちます。それにしても彼が修道院でリーズの手紙を見たのがつい昨日の夜の事で、まだ1日しか経っていないのです。それがこのブログでは、もう5か月以上に亘っているのですから時の経過の感覚が奇妙です。旅行していて感動の体験を数多くした時の1日が長く感じられるのに似ているのかも知れません。

だって僕もカラマーゾフなんです!2011-01-05

 ≪Во-первых, вы меня с детства знаете, а во- вторых, в вас очень много способноснтей, каких во мне совсем нет. У вас душа весёлее, чем у меня; вы, главное, невиннее меня, а уж я до многого, до многого прикоснулся... Ах, вы не знаете, ведь и я Карамазов!≫

<試訳> 「第一に、あなたは子供の頃から僕を知っていますし、第二に、あなたには僕に全く無いようなとても多くの才能をお持ちです。あなたは僕より気立てが陽気ですし、何よりもあなたは僕より純真です、僕などもう多くの事に、多くの事に触れてしまったんです・・・。ああ、あなたはご存じ無いでしょうが、だって僕もカラマーゾフなんです!」

・ “あなたに相応しくない”というリーズの言葉を強く否定して理由を挙げるアリョーシャです。“カラマーゾフ家の者だからもう純真ではない”という彼には、父や兄達を巡る衝撃的な場面に関わっている事や、自分もまたその血に連なっているという気持が強くあるのでしょう。

受難者の問いかけ2011-01-06

≪- Да, Lise, вот давеча ваш вопрос: нет ли в нас презрения к тому несчастному, что мы так душу его анатомируем, - это вопрос мученический... видите, я никак не умею это выразить, но у кого такие вопросы являются, тот сам способен страдать. Сидя в креслах, вы уж и теперь должны были много передумать...≫

<試訳> 「リーズ、あなたはさっき質問されましたね、私達があの人の心を分析することは、あの不運な方を見下しているのではないかと。これは受難者の問いかけなんです・・・ うまく言い表せませんが、そのような問いを発する人は自身も苦悩に耐える方です。肘掛椅子に座りながらあなたはもうすでに多くの事を考え抜かれたに違いありません」

・ アリョーシャがリーズの資質を讃えていますが、そこに彼の価値観が表れています。物語の最初の部分を読むと彼は同年代の仲間とはかなり違って、争いを好まず他を非難もせず裁きもしない少年でした。友人の間では純粋過ぎるが故に“変わっている”と見られる存在だったと思います。やがて聖職の道を志向したのも理解できますし、今もその気質が随所に表れています。修道院を去り世間で過ごす事になる彼にとって互いに敬愛し理解し合えるリーズは最も相応しいのでしょう。

何を着るのかしら2011-01-08

 ≪- Послущайте, Алёща, во что вы оденетесь, как выйдёте из монастыря, в какой костюм? Не смейтесь, не сердитесь, это очень, очень для меня важно.
- Про костюм, Lise, я ещё не думал, но в какой хотите, в такой и оденусь.
- Я хочу, чтоб у вас был тёмносиний бархатный пиджак, белый пикейный жилет и пуховая серая мягкая шляпа... ≫

<試訳> 「あのねアリョーシャ、修道院からお出になったら何を着るのかしら、どのような服ですの。笑ったり怒ったりなさらないでね、私にはとても、とても大切な事ですの」
「リーズ、服装はまだ考えていませんがあなたがお望みものを着ますよ」
「私が着て欲しいのは、濃紺のビロードのジャケットに白いピケのチョッキ、それにグレーの柔らかな毛の帽子なの」

・ リーズが急に話題を替えてアリョーシャの服装の事を持ち出します。彼は見習いですが僧衣を着ていますから還俗とともにそれを脱がなければなりません。母親のいない彼へのリーズの女性らしい気遣いにほっとします。

フォトサイト2011-01-09

ロシアの写真家の作品を鑑賞できるサイトです。以前、知り合いのロシア人が撮影した日本の風物を投稿していて紹介されました。膨大な写真があるので、風景のジャンルを選んでロシアの大地を楽しんだりしています。

特別な悲しみがあるんです2011-01-10

 ≪Слушайте, Алексей Фёдорович, почему вы такой грустный всё эти дни, и вчера и сегодня; я знаю, что у вас есть хлопоты, бедствия, но я вижу, кроме того, что у вас есть особенная какая-то грусть,- секретная может быть, а?
- Да, Lise, есть и секретная, - грустно произнёс Алёша. - Вижу, что меня любите, коли угадали это.≫

<試訳> 「ところでアレクセイさん、このところ昨日も今日もですが、どうしてそのように悲しげなんですの。心配事、難題がおありなのは知ってますわ、でもその他にもなにか特別な悲しみがおありの様に思えますの、きっと心に秘めたものですのね」
「そうなんです、リーズ、秘めた悲しみがあるんです」 沈み込んだ様にアリョーシャがいった。「そう気づいてくれたのは愛してくれているからですね」

・ 結婚した後の二人の信頼関係などを楽しげに話し合っていて、リーズが話題を変えたところです。彼は常に人々の悩みを聴き和解に努めて困難を背負っていますから明るい気持になれないのでしょうが、今はまた特別な悲しみを秘めています。それをリーズが悟り言い当てるのは、彼女が表面的には浮薄を装っていながら鋭い感性を持っている事を思わせ、アリョーシャが選んだ相手である事を納得します。

どんな悲しみなの2011-01-11

 ≪- Какая же грусть? О чём? Можно сказать? - с побкою мольбой произнесла Lise.
- Потом скажу, Lise... после... - смутился Алёша. - Теперь пожалуй и непонятно будет. Да я пожалуй и сам не сумею сказать.
- Я знаю, кроме того, что вас мучают ваши братья, отец?
- Да, и братья, - проговорил Алёша, как бы в раздумьи.≫

<試訳> 「どんな悲しみなの、何を憂えておられるの、お教え願えないかしら」 遠慮がちにリーズは哀願した。
「やがてお話しますよ、リーズ・・・ 後で・・・ アリョーシャはどぎまぎした。「今はきっとお分かりいただけないでしょうから。多分僕自身もうまくお話しできないと思います」
「その他にも、あなたがお兄様方とお父様の事で悩んでおられるのは知っていますわ」
「ええ、兄達のことも」 アリョーシャは思いに沈むようにつぶやいた。

・ アリョーシャの抱えている苦悩と悲しみは自分の事ではありません。人々の和解や幸福のために誠意を尽くす彼の荷の重さを感じます。リーズと心を通わせ共感し合えた事にほっとします。“お前は大きな悲しみを見るだろうが、その悲しみの中で幸せになれるだろう。悲しみのうちに幸せを求めよ・・・ 働きなさい、倦むことなく働くのだよ”と諭したゾシマ長老の言葉を思い出します。