コマクサ ― 2012-07-11
Бог взял семена из миров иных и посеял на сей земле и взрастил сад свой, и взошло всё, что могло взойти...
神は他の世界から種子を採ってこの地上に蒔き、ご自分の園を造られ、そして生じるべきものが全て生じたのです･･･ （ゾシマ長老）
神は他の世界から種子を採ってこの地上に蒔き、ご自分の園を造られ、そして生じるべきものが全て生じたのです･･･ （ゾシマ長老）
飛ぶように伝わり ― 2012-07-12
≪И вот, в скорости после полудня началось нечто, сначала принимаемое входившими и выходившими лишь молча и про себя, и даже с видимою боязнью каждого сообщить кому-либо начинающуюся мысль свою, но к трём часам пополудня обнаружившееся уже столь ясно и неопровержимо, что известие о сём мигом облетело весь скит и всех богомольчев-посетителей скита, тотчас же проникло и в монастырь и повергло в удивление всех монастырских, и наконец чрез самый молый срок, достигло и города и взворновало в нём всех, и верующих и не верующих.≫
＜試訳＞ ところが昼を過ぎてすぐにある事態が始まった。部屋に入ったり出たりする人達は、湧き出した疑念を始めのうち黙って胸の内に納めているだけで、誰にもせよ他の人に伝えるのを明らかに恐れていた。しかし、午後三時近くになると、もはや否定できないほど明らかに公然となり、その知らせは瞬く間に僧庵全体と参拝の信者たち全員に飛ぶように伝わり、ほとんど同時に修道院の中へと広がってその皆を驚愕させた。さらに,、ほんの僅か後にはついに町にまで達して、信者不信心者の別なくあらゆる人を興奮させたのだった。
・ 腐臭の発生という事が僧院内だけではなく町中を揺るがすまでに波紋を広げる事態になります。なぜ前例のないこのような騒ぎになったかについては、僧院内部にあった長老制度への批判や敬愛されるゾシマ長老への羨望など、多くの要因が重なり合ったと語り手はこの後で分析しています。長老自身が語っていたように “ 人間は廉潔な人の堕落と汚辱を好むもの ” という言葉に思い当たります。
＜試訳＞ ところが昼を過ぎてすぐにある事態が始まった。部屋に入ったり出たりする人達は、湧き出した疑念を始めのうち黙って胸の内に納めているだけで、誰にもせよ他の人に伝えるのを明らかに恐れていた。しかし、午後三時近くになると、もはや否定できないほど明らかに公然となり、その知らせは瞬く間に僧庵全体と参拝の信者たち全員に飛ぶように伝わり、ほとんど同時に修道院の中へと広がってその皆を驚愕させた。さらに,、ほんの僅か後にはついに町にまで達して、信者不信心者の別なくあらゆる人を興奮させたのだった。
・ 腐臭の発生という事が僧院内だけではなく町中を揺るがすまでに波紋を広げる事態になります。なぜ前例のないこのような騒ぎになったかについては、僧院内部にあった長老制度への批判や敬愛されるゾシマ長老への羨望など、多くの要因が重なり合ったと語り手はこの後で分析しています。長老自身が語っていたように “ 人間は廉潔な人の堕落と汚辱を好むもの ” という言葉に思い当たります。
鋭い眼差しで見守っていた ― 2012-07-13
≪Упомянул я тоже, что отец Паисий, твёрдно и незыблемо стоявший и чтавший над гробом, хотя и не мог слышать и видеть, что происходило вне кельи, но в сердце свём всё главное бузошибочно предугадал, ибо знал среду свою насквозь. Смущён же не был, а ожидал всего, что ещё могло произойти, без страха, пронзающим взглядом следя за будущим исходом воления, уже представлявшимся умственному взору его.≫
＜試訳＞ これも述べておいた事だが、毅然として揺るぎなく墓の傍に立って朗誦していたパイーシィ神父は、庵室の外で起こっている事を見聞きできなかったけれども、心の内では大切な事は全て誤りなく推察していた。なぜなら、自身を取り巻く状況を見抜いていたからだ。彼は動揺もせずにこれから起こり得る事を怖れずに待ち受けていた。すでに彼の心の眼に映されている騒ぎの行く末を鋭い眼差しで見守っていたのだ。
・ ゾシマ長老の死をきっかけに、これまで潜んでいたものが吹き出して勢いを増します。修道院の内部にも俗界と同じような人間関係の難しさがあることを示しています。長老の存在が大きかった事が分かります。パイーシィ神父が長老の遺志を守ろうとします。
＜試訳＞ これも述べておいた事だが、毅然として揺るぎなく墓の傍に立って朗誦していたパイーシィ神父は、庵室の外で起こっている事を見聞きできなかったけれども、心の内では大切な事は全て誤りなく推察していた。なぜなら、自身を取り巻く状況を見抜いていたからだ。彼は動揺もせずにこれから起こり得る事を怖れずに待ち受けていた。すでに彼の心の眼に映されている騒ぎの行く末を鋭い眼差しで見守っていたのだ。
・ ゾシマ長老の死をきっかけに、これまで潜んでいたものが吹き出して勢いを増します。修道院の内部にも俗界と同じような人間関係の難しさがあることを示しています。長老の存在が大きかった事が分かります。パイーシィ神父が長老の遺志を守ろうとします。
野の花 ― 2012-07-14
- не человеки судят, а бог.
裁くのは人間ではなく、神なのだ。 （パイーシィ神父）
裁くのは人間ではなく、神なのだ。 （パイーシィ神父）
憂鬱な気分はなぜなのだろう ― 2012-07-15
≪Он остановился и вдруг впросил себя: "Отчего сия грусть моя даже до упадка духа?" и с удивлением постиг тотчас же, что сия внезапная грусть его происходит повидимому от самой малой и особливой причины: дело в том, что в толпе теснившейся сейчас у входа в келью, заприметил он между прочим волнующимся и Алёшу, и вспомнил он, что, увидав его, тотчас же почувствовал тогда в сердце своём как бы некую боль. "Да неужто же сей младый столь много значит ныне в сердце моём?" вдруг с удивлением вопросил он себя.≫
＜試訳＞ パイーシィ神父は立ち止まって、ふと自問した。“ この滅入るような憂鬱な気分はなぜなのだろう ” そしてすぐさま、この突然の憂いが、どうやらほんのささいな特別な理由から生じているのだと驚きの思いで理解した。実は神父は、先程庵室の入口にひしめいていた群衆の中に動揺する人々と共にアリョーシャを何気なく見かけ、彼を見たその時に胸が痛むように感じたのを思い出したのだった。“ はたしてこの若者が、今の私の心にこれほど大きな意味を持っているのだろうか ” と、ふと神父は驚く思いで自分の心に尋ねた。
・ 群衆の中にアリョーシャの姿を認めた事が神父にとって気掛かりだったのです。腐臭騒ぎに巻き込まれたこの若者の動揺を感じたのでしょう。ゾシマ長老亡きあとの後見でもある神父がアリョーシャを思いやる気持ちが伝わってきます。
＜試訳＞ パイーシィ神父は立ち止まって、ふと自問した。“ この滅入るような憂鬱な気分はなぜなのだろう ” そしてすぐさま、この突然の憂いが、どうやらほんのささいな特別な理由から生じているのだと驚きの思いで理解した。実は神父は、先程庵室の入口にひしめいていた群衆の中に動揺する人々と共にアリョーシャを何気なく見かけ、彼を見たその時に胸が痛むように感じたのを思い出したのだった。“ はたしてこの若者が、今の私の心にこれほど大きな意味を持っているのだろうか ” と、ふと神父は驚く思いで自分の心に尋ねた。
・ 群衆の中にアリョーシャの姿を認めた事が神父にとって気掛かりだったのです。腐臭騒ぎに巻き込まれたこの若者の動揺を感じたのでしょう。ゾシマ長老亡きあとの後見でもある神父がアリョーシャを思いやる気持ちが伝わってきます。
心の中に激しい変化が ― 2012-07-16
≪В эту минуту Алёша как раз проходил мимо него, как бы поспешая куда-то, но не в сторону храм. Взоры их встретились. Алёша быстро отвел свои глаза и опустил их в землю, и уже по одному виду юноши отец Паисий догадался, какая в минуту сию происходит в нём сильная перемена. - Или и ты соблазнился? - воскликнул вдруг отец Паисий, - да неужто же и ты с маловерными! - прибавил он горестно.≫
＜試訳＞ ちょうどその時アリョーシャがどこかへ急ぐように神父のそばを通りかかったが、聖堂の方へではなかった。二人の視線が合った。アリョーシャはすぐに眼をそらして地に落とした。パイーシィ神父は若者の様子を一目見て、この瞬間に、彼の心の中にどれほど激しい変化が生じているかを察した。
「お前もまた、惑わされたのかな」だしぬけにパイーシィ神父は叫んだ。「信仰浅き者達とお前が一緒だなどとは！」悲しげに神父は言い添えた。
・アリョーシャの惑いを神父が察します。アリョーシャのその時の気持がどうだったのか興味深いところです。
＜試訳＞ ちょうどその時アリョーシャがどこかへ急ぐように神父のそばを通りかかったが、聖堂の方へではなかった。二人の視線が合った。アリョーシャはすぐに眼をそらして地に落とした。パイーシィ神父は若者の様子を一目見て、この瞬間に、彼の心の中にどれほど激しい変化が生じているかを察した。
「お前もまた、惑わされたのかな」だしぬけにパイーシィ神父は叫んだ。「信仰浅き者達とお前が一緒だなどとは！」悲しげに神父は言い添えた。
・アリョーシャの惑いを神父が察します。アリョーシャのその時の気持がどうだったのか興味深いところです。
どこへ行こうとしているのだ ― 2012-07-17
≪Алёша остановился и как-то неопределённо взглянул на отца Паисия, но снова быстро отвел глаза и снова опустил их к земле. Стоял же боком и не повернулся лицом к вопрошавшему. Отец Паисий наблюдал внимательно.
- Куда же поспешаешь? К службе благовестят, - вопросил он вновь, но Алёша опять ответа не дал.
- Али из скита уходишь? Как же не впросясь-то, не благословясь?≫
＜試訳＞ アリョーシャは立ち止まり、何かしらとりとめのない様子でパイーシィ神父を見上げたが、また急いで目をそらし地に向けた。横向きに立ったまま質問者に顔を向けなかった。パイーシィ神父は注意深く観察した。
「どこへ行こうとしているのだ、勤行を知らせる鐘が鳴っているぞ」神父は再び問うたが、アリョーシャはこれにも答えなかった。
「それとも僧院から出て行こうとしているのかな。許しも乞わず祝福も受けずに」
・ 尊敬する師に対して、これまでのアリョーシャとは思えない態度を示します。問いにも答えず目を伏せる様子に、彼の内心の動揺の激しさがうかがわれます。
- Куда же поспешаешь? К службе благовестят, - вопросил он вновь, но Алёша опять ответа не дал.
- Али из скита уходишь? Как же не впросясь-то, не благословясь?≫
＜試訳＞ アリョーシャは立ち止まり、何かしらとりとめのない様子でパイーシィ神父を見上げたが、また急いで目をそらし地に向けた。横向きに立ったまま質問者に顔を向けなかった。パイーシィ神父は注意深く観察した。
「どこへ行こうとしているのだ、勤行を知らせる鐘が鳴っているぞ」神父は再び問うたが、アリョーシャはこれにも答えなかった。
「それとも僧院から出て行こうとしているのかな。許しも乞わず祝福も受けずに」
・ 尊敬する師に対して、これまでのアリョーシャとは思えない態度を示します。問いにも答えず目を伏せる様子に、彼の内心の動揺の激しさがうかがわれます。
苦々しそうな薄笑いを浮かべ ― 2012-07-18
≪Алёша вдруг криво усмехнулся, странно, очень странно вскинул на вопрошавшего отца свои очи, на того, кому вверил его умирая бывший руководитель его, бывший владыка сердыка сердца и ума его, возлюбленный старец его, и вдруг всё попрежнему без ответа, махнул рукой, как бы не заботясь даже и о почтительности, и быстрыми шагами пошёл к выходным вратам вон из скита.
- Возвратишься ещё! - прошептал отец Паисий, смотря во след ему с горестным удиллением.≫
＜試訳＞ アリョーシャは突然苦々しそうに薄笑いを浮かべ、尋ねた神父を奇妙な、実に奇妙な目つきで見上げた ‐ それは、これまで彼の指導者、心と知性の大主教であった最愛の長老が死に臨んで彼の指導を委ねた神父に対してなのだ。そして急に、依然として答えもせず、敬意を払おうという気遣いさえないかのように手を一振りして僧庵の出口の門へと急ぎ足で歩み去った。
「また帰って来ることだろう！」 彼の後姿を悲しみを含んだ驚きで見送りながら、パイーシィ神父はそう呟くのだった。
・ 神父に対するアリョーシャの行動が、“ 慎み深い ” という先入観を覆します。でも、人は状況によって変わり得るのですから、他者が作り上げる固定的なイメージこそ不確かなものなのでしょう。アリョーシャの内なる変容を感じる印象的な場面です。
- Возвратишься ещё! - прошептал отец Паисий, смотря во след ему с горестным удиллением.≫
＜試訳＞ アリョーシャは突然苦々しそうに薄笑いを浮かべ、尋ねた神父を奇妙な、実に奇妙な目つきで見上げた ‐ それは、これまで彼の指導者、心と知性の大主教であった最愛の長老が死に臨んで彼の指導を委ねた神父に対してなのだ。そして急に、依然として答えもせず、敬意を払おうという気遣いさえないかのように手を一振りして僧庵の出口の門へと急ぎ足で歩み去った。
「また帰って来ることだろう！」 彼の後姿を悲しみを含んだ驚きで見送りながら、パイーシィ神父はそう呟くのだった。
・ 神父に対するアリョーシャの行動が、“ 慎み深い ” という先入観を覆します。でも、人は状況によって変わり得るのですから、他者が作り上げる固定的なイメージこそ不確かなものなのでしょう。アリョーシャの内なる変容を感じる印象的な場面です。
この不可解で曖昧な瞬間 ― 2012-07-19
≪Отец Паисиё, конешно, не ошибся, решив, что его "милый мальчик" сного воротится, и даже может быть (хотя и не вполне, но всё же прозорливо), проник в иситнный смысл душевного настроения Алёши. Тем не менее признаюсь откровенно, что самому мне очень бы трудно теперь передать ясно точный смысл этой странной и неопределённой минуты в жизни столь излюбленного мною и столь ещё юного героя моего рассказа.≫
＜試訳＞ パイーシィ神父が、彼の “ かわいい少年 ” が再び戻って来ると結論したのは、もちろん誤っていなかったし、アリョーシャの心理状態の真の意味を（例え完全にではないにしても、しかし鋭い洞察で）見抜いてさえいたかも知れない。そうではあるが、率直に白状すると、この物語の私の大いに愛する、まだ年若い主人公の人生におけるこの不可解で曖昧な瞬間の正確な意味をはっきり伝えようとしても、今のところは、私自身にとって極めて難しいだろう。
・ 作者は釈明を挿入してアリョーシャの説明し難い心理を強調します。しかも小説の中で自分の主人公を愛していると語るのも珍しいと思います。アリョーシャが真の主人公として登場する構想だった続編を読めないのが残念です。
＜試訳＞ パイーシィ神父が、彼の “ かわいい少年 ” が再び戻って来ると結論したのは、もちろん誤っていなかったし、アリョーシャの心理状態の真の意味を（例え完全にではないにしても、しかし鋭い洞察で）見抜いてさえいたかも知れない。そうではあるが、率直に白状すると、この物語の私の大いに愛する、まだ年若い主人公の人生におけるこの不可解で曖昧な瞬間の正確な意味をはっきり伝えようとしても、今のところは、私自身にとって極めて難しいだろう。
・ 作者は釈明を挿入してアリョーシャの説明し難い心理を強調します。しかも小説の中で自分の主人公を愛していると語るのも珍しいと思います。アリョーシャが真の主人公として登場する構想だった続編を読めないのが残念です。
信仰が篤かったからこそ生じた ― 2012-07-20
≪На горестный вопрос отца Паисия, устремлённый к Алёше: "или и ты с моловерными?" - я, конечно, мог бы с твёрдостью ответить за Алёшу: "Нет, он не с маловерными". Мало того, тут было даже совсем противоположное: всё смущение его произошло именно он того, что он много веровал. Но смущение всё же было, всё же произошло и было столь мучительно, что даже и потом, уже долго спустя, Алёша считал этот горестный день одним из самых тягостных и роковых дней своей жизни.≫
＜試訳＞ パイーシィ神父がアリョーシャに向けた “ それとも、お前もまた信仰薄き者たちと一緒なのか ” という悲しみに満ちた問いに、私ならもちろんアリョーシャのために確信を持って “ いや、彼は信仰薄き者と一緒ではない ” と答えるだろう。 それどころか、それは正反対でさえあった。彼の動揺の全てはまさしく彼の信仰が篤かったからこそ生じたのだ。だが、とにかく動揺はあったのだし、その動揺が生じていかに苦しかったかは、永い時を経た後でさえ、人生の中でこの悲しい一日が最も辛い運命的な日の一つだった、とアリョーシャが見なした程だった。
・ アリョーシャが信仰を失ったのではないと作者は強調します。彼を動揺させたこの出来事は彼の信仰が試される大きな転機となったのは確かです。
＜試訳＞ パイーシィ神父がアリョーシャに向けた “ それとも、お前もまた信仰薄き者たちと一緒なのか ” という悲しみに満ちた問いに、私ならもちろんアリョーシャのために確信を持って “ いや、彼は信仰薄き者と一緒ではない ” と答えるだろう。 それどころか、それは正反対でさえあった。彼の動揺の全てはまさしく彼の信仰が篤かったからこそ生じたのだ。だが、とにかく動揺はあったのだし、その動揺が生じていかに苦しかったかは、永い時を経た後でさえ、人生の中でこの悲しい一日が最も辛い運命的な日の一つだった、とアリョーシャが見なした程だった。
・ アリョーシャが信仰を失ったのではないと作者は強調します。彼を動揺させたこの出来事は彼の信仰が試される大きな転機となったのは確かです。
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