逃亡者を遮ろうと ― 2013-09-11
≪"Почему отворено, теперь не лето!" подумал Григорий и вдруг, как раз в то самое мгновение прямо пред ним в саду замелькало что-то необычайное. Шагах в сорока пред нии как бы пробегал в темноте человек, очень быстро двигалась какая-то тень. "Господи!", проговорил Григорий и, не помня себя, забыв про свою боль в пояснице, пустился на перерез бегущему.≫
＜試訳＞ “ 何だって開いているんだ、もう夏でもないのに！ ” とグリゴーリィは思った。ちょうどその瞬間、突然彼の真正面の庭の中に何か異様なものが見え隠れし出した。彼の前方４０歩ばかりの暗闇を人が駆け抜けているようで、影らしきものがすごい勢いで動いていた。“ 何て事だ！” グリゴーリィはそう言って、腰の痛みの事も忘れ、夢中で逃亡者を遮ぎろうと駆け出した。
＜試訳＞ 闇を走る人影こそドミートリィに違いありません。窓明かりを背にした長い影が彼の動きを拡大して素早く飛び回る。何というリアルな描写でしょう。
＜試訳＞ “ 何だって開いているんだ、もう夏でもないのに！ ” とグリゴーリィは思った。ちょうどその瞬間、突然彼の真正面の庭の中に何か異様なものが見え隠れし出した。彼の前方４０歩ばかりの暗闇を人が駆け抜けているようで、影らしきものがすごい勢いで動いていた。“ 何て事だ！” グリゴーリィはそう言って、腰の痛みの事も忘れ、夢中で逃亡者を遮ぎろうと駆け出した。
＜試訳＞ 闇を走る人影こそドミートリィに違いありません。窓明かりを背にした長い影が彼の動きを拡大して素早く飛び回る。何というリアルな描写でしょう。
乗り越えようとしたその時に ― 2013-09-12
≪Он взял короче, сад был ему видимо знакомее, чем бегущему; тот же направлялся к бане, пробежал за баню, бросился к стене... Григорий следил его, не теряя из виду, и бежал не помня себя. Он добежал до забора как раз в ту минуту, когда беглец уже перезал забор. Вне себя заволил Григорий, кинулся и вцепился обеими руками в его ногу.≫
＜試訳＞ グリゴーリィは近道をとった。逃亡者よりも彼の方が庭に詳しいのは明らかだった。その男は浴場小屋の方に向かい、その裏を走り抜けて塀に飛びついた･･･。グリゴーリィは見失わずに後を追い、我を忘れて走った。塀まで走り着いたのは、逃亡者がもう塀を乗り越えようとしていたまさにその時だった。グリゴーリィは夢中で大声をあげ、飛びかかって両手でその男の足にしがみついた。
・ グリゴーリィが不審者を追って走ります。老体とは言え、日々の労働で鍛えた底力を感じます。これまでの静寂と、それを破る音、速い動きの対比が鮮やかです。
＜試訳＞ グリゴーリィは近道をとった。逃亡者よりも彼の方が庭に詳しいのは明らかだった。その男は浴場小屋の方に向かい、その裏を走り抜けて塀に飛びついた･･･。グリゴーリィは見失わずに後を追い、我を忘れて走った。塀まで走り着いたのは、逃亡者がもう塀を乗り越えようとしていたまさにその時だった。グリゴーリィは夢中で大声をあげ、飛びかかって両手でその男の足にしがみついた。
・ グリゴーリィが不審者を追って走ります。老体とは言え、日々の労働で鍛えた底力を感じます。これまでの静寂と、それを破る音、速い動きの対比が鮮やかです。
ならず者の父親殺し ― 2013-09-13
≪Так и есть, предчувствие не обмануло его; он узнал его, это был он "изверг-отцеу бивец"!
- Отцеубивец! - прокричал старик на всю окрестность, но только это и успел прокричать; он вдруг упал как поражённый громом. ≫
＜試訳＞ 案の定、予感はグリゴーリィを裏切らなかった。その男の見分けがつき、それはあの “ ならず者の父親殺し ” だった！
「父親殺しだ！」 辺りじゅうに向けて老人が大声でわめきたてた。だが叫べたのはそれがやっとだった。彼は突然雷に打たれた様に転落したのだ。
- Отцеубивец! - прокричал старик на всю окрестность, но только это и успел прокричать; он вдруг упал как поражённый громом. ≫
＜試訳＞ 案の定、予感はグリゴーリィを裏切らなかった。その男の見分けがつき、それはあの “ ならず者の父親殺し ” だった！
「父親殺しだ！」 辺りじゅうに向けて老人が大声でわめきたてた。だが叫べたのはそれがやっとだった。彼は突然雷に打たれた様に転落したのだ。
再び庭に飛び降り ― 2013-09-14
≪Митя соскочил опять в сад и нагнулся над поверженным. В руках Мити был медный пестик, и он машинально отбросил его в траву. Пестик упал в двух шагах от Григория, но не в траву, а на тропинку, на самое видное место. Несколько секунд рассматривал он лежавщего пред ним.≫
＜試訳＞ ミーチャは再び庭に飛び降り、打ち倒された老僕の上に身をかがめた。ミーチャの手には銅の杵が握られていて、彼は無意識にそれを芝生に投げ捨てた。杵はグリゴーリィから２歩ほどのところに落ちたが、それは芝の中ではなく小道の上の最もよく見える所だった。数秒の間、彼は目の前の横たわっている老僕をじっと眺めた。
・ その描写はないのですが、塀の上でドミートリィが杵を振り下ろした事が分ります。そのまま逃げ去らずにグリゴーリィの様子を確かめに庭に戻ったところにドミートリィの心境が表れていると思います。
＜試訳＞ ミーチャは再び庭に飛び降り、打ち倒された老僕の上に身をかがめた。ミーチャの手には銅の杵が握られていて、彼は無意識にそれを芝生に投げ捨てた。杵はグリゴーリィから２歩ほどのところに落ちたが、それは芝の中ではなく小道の上の最もよく見える所だった。数秒の間、彼は目の前の横たわっている老僕をじっと眺めた。
・ その描写はないのですが、塀の上でドミートリィが杵を振り下ろした事が分ります。そのまま逃げ去らずにグリゴーリィの様子を確かめに庭に戻ったところにドミートリィの心境が表れていると思います。
震える指を濡らした ― 2013-09-15
≪Голова старика была вся в крови; Митя протянул руки стал её ощупытвать. Он припомнил птом ясно, что ему ужасно захотелось в ту минуту "вполне убедиться", проломил он череп старику или только "огорошил" его пестиком по темени? Но кровь лилась, лилась ужасно и мигом облила горячею струей дрожащие пальцы Мити.≫
＜試訳＞ 老僕の頭は血まみれだった。ミーチャは手を伸ばして触れてみた。その時、老人の頭蓋を割ってしまったのか、それとも頭頂部を杵で殴ってただ “ 卒倒させた ” だけなのかを “ 十分に確かめ ” たかったのだ。その事を彼は後日はっきりと思い起こした。けれども血は恐ろしくどくどく湧き出て、見る間に熱い流れとなってミーチャの震える指を濡らした。
＜試訳＞ グリゴーリィの頭をひどく出血させた事を知りドミートリィは震えます。この件については彼はまさしく手を血に染めたのです。
＜試訳＞ 老僕の頭は血まみれだった。ミーチャは手を伸ばして触れてみた。その時、老人の頭蓋を割ってしまったのか、それとも頭頂部を杵で殴ってただ “ 卒倒させた ” だけなのかを “ 十分に確かめ ” たかったのだ。その事を彼は後日はっきりと思い起こした。けれども血は恐ろしくどくどく湧き出て、見る間に熱い流れとなってミーチャの震える指を濡らした。
＜試訳＞ グリゴーリィの頭をひどく出血させた事を知りドミートリィは震えます。この件については彼はまさしく手を血に染めたのです。
寝てるがいいさ！ ― 2013-09-16
≪Он помнил, что выхватил из кармана свой белый новый платок, которым запасся, идя к Хохлаковой, и приложил к голове старика, бессмысленно стараясь оттереть кровь со лба и с лица. Но и платок мигом весь намок кросью. "Господи, да для чего это я?" очнулся вдруг Митя, "коли уж проломил, то как теперь узнать... Да и не всё ли теперь равно!" прибавил он вдруг безнадёжно, - "убпл, так убил... Попался старик и лежи!" громко проговорил он, и вдруг кинулся на забор, перепрыгнул в переулок и пустился бежать.≫
＜試訳＞ 彼は、ホフラコワ夫人の家を訪れる際に用意した新しい白いハンカチをポケットから取り出して、額と顔の血を拭おうと意味のない努力をしながら老僕の頭に当てたのを思い出したものだ。けれども、ハンカチも瞬く間に血でびしょ濡れになった。
“ 参ったな、いったい何のためにこんな事をしてるんだ？” ふとミーチャは我に返った。
“ もう頭を割ってしまったんなら、今更確かめてどうなる･･･ そうだ今となってはどっちにしても同じじゃないか！” 突然絶望的な気持で彼は付け足した。― “ 殺したのは殺したんだ･･･。とんだところに出くわしたな爺さん、寝てるがいいさ！” 彼は大声をかけ、突然塀に飛びつき路地に飛びおりるとまっしぐらに駆け出した。
・ 血染めのハンカチがドミートリィの行為の重大さを印象づけます。“ 罪と罰 ” で、金貸し老婆に続き、思いがけず現れた異母姉妹のリザベータを不本意にも殺害してしまったラスコーリニコフの心境に似ていると思います。
＜試訳＞ 彼は、ホフラコワ夫人の家を訪れる際に用意した新しい白いハンカチをポケットから取り出して、額と顔の血を拭おうと意味のない努力をしながら老僕の頭に当てたのを思い出したものだ。けれども、ハンカチも瞬く間に血でびしょ濡れになった。
“ 参ったな、いったい何のためにこんな事をしてるんだ？” ふとミーチャは我に返った。
“ もう頭を割ってしまったんなら、今更確かめてどうなる･･･ そうだ今となってはどっちにしても同じじゃないか！” 突然絶望的な気持で彼は付け足した。― “ 殺したのは殺したんだ･･･。とんだところに出くわしたな爺さん、寝てるがいいさ！” 彼は大声をかけ、突然塀に飛びつき路地に飛びおりるとまっしぐらに駆け出した。
・ 血染めのハンカチがドミートリィの行為の重大さを印象づけます。“ 罪と罰 ” で、金貸し老婆に続き、思いがけず現れた異母姉妹のリザベータを不本意にも殺害してしまったラスコーリニコフの心境に似ていると思います。
凄まじい勢いで疾走する男 ― 2013-09-17
≪Намокший кровью платок был скомкан у него в правом кулаке, и он на бегу сунул его в задний карман сюртука. Он бежал сломя голову, и несколько редких прохожих, повстречавшихся ему в темноте, на улицах города, запомнили потом, как встретили они в ту ночь неистово бегущего человека.≫
＜試訳＞ 血に濡れたハンカチが右の拳の中にもみくちゃになっていたが、ミーチャは走りながらそれをフロックの後ポケットに押し込んだ。彼は一目散に走り、真っ暗な往来で彼と行き交った何人かの僅かな通行人が、後になって、あの夜、凄まじい勢いで疾走する男に遭遇したのを記憶に留めていた。
＜試訳＞ 血に濡れたハンカチが右の拳の中にもみくちゃになっていたが、ミーチャは走りながらそれをフロックの後ポケットに押し込んだ。彼は一目散に走り、真っ暗な往来で彼と行き交った何人かの僅かな通行人が、後になって、あの夜、凄まじい勢いで疾走する男に遭遇したのを記憶に留めていた。
指示するのを忘れた ― 2013-09-18
≪Летел он опять в дом Морозовой. Давеча Феня, тотчас по уходе его, бросилась к старшему дворнику Назару Ивановичу и "Христом-богом" начала молить его, чтоб он "не впускал уж больше капитана ни сегодня, ни завтра". Назар Иванович, выслушав, согласился, но на грех отлучился на верх к барыне, куда его внезапно позвали и на ходу, встретив своего племянника, парня лет двадцати, недавно только прибывшего из деревни, приказал ему побыть на дворе, но забыл приказать о капинане.≫
＜試訳＞ ミーチャは再びモロゾワの屋敷へと飛んで行った。つい先ほどフェーニャは彼が出て行くとすぐに老門番頭のナザール・イワノビッチの所へ駆けつけて、“ 後生だから ” と彼に哀願し始めた。“ 大尉さんを今日も明日も、もうこれから先は通さないでちょうだい ”。ナザール・イワノビッチはそれを聞いて承知したのだが、あいにくな事に、急に呼ばれて二階の奥様のところに出かけてしまった。その途中で、つい最近田舎からやって来たばかりの甥の２０歳ばかりの若者に会い、門の番をするように言いつけたが大尉の事を指示するのを忘れたのだった。
・ 小間使いのフェーニャはグルーシェンカの行先を問い詰められるのを怖れて、ドミートリィを屋敷に入れないように頼むのです。ところが交替した門番にはそれが伝わっていません。行き違いがまたしても不安を感じさせます。
＜試訳＞ ミーチャは再びモロゾワの屋敷へと飛んで行った。つい先ほどフェーニャは彼が出て行くとすぐに老門番頭のナザール・イワノビッチの所へ駆けつけて、“ 後生だから ” と彼に哀願し始めた。“ 大尉さんを今日も明日も、もうこれから先は通さないでちょうだい ”。ナザール・イワノビッチはそれを聞いて承知したのだが、あいにくな事に、急に呼ばれて二階の奥様のところに出かけてしまった。その途中で、つい最近田舎からやって来たばかりの甥の２０歳ばかりの若者に会い、門の番をするように言いつけたが大尉の事を指示するのを忘れたのだった。
・ 小間使いのフェーニャはグルーシェンカの行先を問い詰められるのを怖れて、ドミートリィを屋敷に入れないように頼むのです。ところが交替した門番にはそれが伝わっていません。行き違いがまたしても不安を感じさせます。
ただいま家を留守に ― 2013-09-19
≪Добежав до ворот, Митя постучался. Парень мигом узнал его: Митя не раз уже давал ему на чай. Тотчас же отворил ему калитку, впуситил и, весело улыбаясь, предупредительно поспешил уведомить, что "ведь Аграфены Александровны теперь дома-то и нет-с".≫
＜試訳＞ 門まで走り着くとミーチャは戸を叩いた。若者はすぐに彼だと分った。ミーチャが一度ならずこの男に酒代を与えていたからだ。すかさず木戸を開け中に通すと、陽気に笑いながら “ それが、アグラフェーナ様はだだいま家を留守にしておられまして ” と、気持を察して急ぎ告げたのだった。
・ グルーシェンカとの新生活のためにと、散々な苦労を重ねたドミートリィに知らされる事実です。
＜試訳＞ 門まで走り着くとミーチャは戸を叩いた。若者はすぐに彼だと分った。ミーチャが一度ならずこの男に酒代を与えていたからだ。すかさず木戸を開け中に通すと、陽気に笑いながら “ それが、アグラフェーナ様はだだいま家を留守にしておられまして ” と、気持を察して急ぎ告げたのだった。
・ グルーシェンカとの新生活のためにと、散々な苦労を重ねたドミートリィに知らされる事実です。
将校とやらのところへ ― 2013-09-20
≪- Где же она, Прохор? - вдруг остановился Митя.
- Давеча уехала, часа с два тому, с Тимофеем, в Мокрое.
- Зачем? - крикнул Митя.
- Этого знать не могу-с, к офицеру какому-то, кто-то их позвал оттудова и лошадей прислали...
Митя бросил его и как полоумный вбежал к Фене.≫
＜試訳＞ 「じゃあ、どこにいるんだ、プローハル？」 ミーチャは急に立ち止まった。
「先ほどお発ちでして、２時間ほど前に御者のチモフェイと、モークロエにですが」
「何のためにだ？」 ミーチャが叫んだ。
「そりゃ分かりかねますが、将校とやらのところへでして、どなたかあちらの方からお呼びがあって、迎えの馬車を回してよこしましたんで･･･」
ミーチャは若者を放り出してフェーニャのところへ錯乱したように駆け込んだ。
・ 将校についてドミートリィはグルーシェンカから聞いた事があるのですが、気に留めないまますっかり忘れています。波瀾に満ちた夜が続きます。
- Давеча уехала, часа с два тому, с Тимофеем, в Мокрое.
- Зачем? - крикнул Митя.
- Этого знать не могу-с, к офицеру какому-то, кто-то их позвал оттудова и лошадей прислали...
Митя бросил его и как полоумный вбежал к Фене.≫
＜試訳＞ 「じゃあ、どこにいるんだ、プローハル？」 ミーチャは急に立ち止まった。
「先ほどお発ちでして、２時間ほど前に御者のチモフェイと、モークロエにですが」
「何のためにだ？」 ミーチャが叫んだ。
「そりゃ分かりかねますが、将校とやらのところへでして、どなたかあちらの方からお呼びがあって、迎えの馬車を回してよこしましたんで･･･」
ミーチャは若者を放り出してフェーニャのところへ錯乱したように駆け込んだ。
・ 将校についてドミートリィはグルーシェンカから聞いた事があるのですが、気に留めないまますっかり忘れています。波瀾に満ちた夜が続きます。
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