罪と罰・試訳　一線を越えた人間の苦悩と愛が、時空を越えて今日もここに響く…

　≪- Нет, ничего. Я ему скажу всё... - пробормотал Алёша. - Он вас зовёт сегодня к себе, - вдруг брякнул он, твёрдо смотря ей в глаза. Она вся вздрогнула и чуть-чуть отшатнулась от него на диване.
- Меня... разве это возможно? - пролепетала она побледнев.
- Это возможно и должно! - настойчиво и весь оживившись, начал Алёша.≫

＜試訳＞　「いいえ、何でもありません。私が全部兄に話しましょう…」 アリョーシャがつぶやいた。「兄は今日あなたに来てほしいと言っているのです」 ふいに彼は彼女の目をしっかりと見つめて口にした。彼女は身震いして、ソファでほんの少し彼から身を引いた。　
「私を… そんな事できるかしら？」 蒼白になって、彼女は口ごもった。
「できますとも、是非そうなさるべきです！」 説き伏せるように、すっかり元気づいてアリョーシャが話し出した。

・　アリョーシャが脱走をどう考えているかは語られませんが、無実のドミートリィを苦役から救いたい気持ちは強いでしょう。説得を引き受けた上で、カテリーナに兄の言葉を伝え面会を求めます。けれども有罪に導いてしまった自責の念で、彼女はドミートリィに会わせる顔がないのです。それでもアリョーシャは、会うべきだとはっきり言います。相手に対して行動を迫るのはアリョーシャとしては珍しく、率直な言い方が心に響きます。