夢が続いているのだろうか ― 2024-07-01
≪”Сон это продолжается или нет", - думал он и чуть-чуть, неприметно опять приподнял ресницы поглядеть: незнакомый стоял на том же месте и продолжал в него вглядываться. Вдруг он переступил осторожно через порог, бережно притворил за собой дверь, подошёл к столу, подождал с минуту, - всё это время не спуская с него глаз, - и тихо, без шуму, сел на стул подле дивана; шляпу поставил сбоку, на полу, а обеими руками оперся на трость, опустив на руки подбородок.≫
<試訳> “ 夢が続いているのだろうか、違うのか ” ラスコーリニコフは考えた。そしてほんの少しずつ目立たぬように、また睫毛を持ち上げて様子を見た。見知らぬ人は同じ場所に立っていて、彼を見つめ続けていた。不意に注意深く玄関口を通って丁寧に自分の後ろの戸を閉めると、テーブルまでやって来て1分ほど待った ― この時、ずっと彼から目を離さなかった ― そして静かに、音もたてずにソファのすぐ傍の椅子に座った。帽子を脇の床の上に置き、両手をステッキに凭れかけ、その上に顎をのせた。
・ 先ほどの夢に現れた男とは明らかに違う、ステッキを持った紳士風の男の来訪です。ラスコーリニコフのソファのすぐ傍で目覚めを待っています。いつまでも眠ったふりをしているわけにはいかないでしょう。
<試訳> “ 夢が続いているのだろうか、違うのか ” ラスコーリニコフは考えた。そしてほんの少しずつ目立たぬように、また睫毛を持ち上げて様子を見た。見知らぬ人は同じ場所に立っていて、彼を見つめ続けていた。不意に注意深く玄関口を通って丁寧に自分の後ろの戸を閉めると、テーブルまでやって来て1分ほど待った ― この時、ずっと彼から目を離さなかった ― そして静かに、音もたてずにソファのすぐ傍の椅子に座った。帽子を脇の床の上に置き、両手をステッキに凭れかけ、その上に顎をのせた。
・ 先ほどの夢に現れた男とは明らかに違う、ステッキを持った紳士風の男の来訪です。ラスコーリニコフのソファのすぐ傍で目覚めを待っています。いつまでも眠ったふりをしているわけにはいかないでしょう。
いつまでも待つつもりらしかった ― 2024-07-02
≪Видно было, что он приготовился долго ждать.
Сколько можно было разглядеть сквозь мигавшие ресницы, человек этот был уже немолодой, плотный и с густою, светлою, почти белою бородой...
Прошло минут с десять. Было ещё светло, но уже вечерело. В комнате была совершенная тишина. Даже с лестницы не приносилось на одного звука.≫
<試訳> 彼はいつまでも待つつもりらしかった。
瞬きの合間に見て取った限りでは、この男はもうかなりの年齢で、がっしりした体格で、濃くて明るい真っ白い顎鬚をはやしていた…。
10分ほどが過ぎた。まだ明るかったが、もう日は暮れていた。部屋の中は静寂そのものだった。階段からさえ物音ひとつ聞こえてこなかった。
・ 見知らぬ来訪者を、寝入っているふりをしたラスコーリニコフが観察します。先ほどの町人でないことは確かです。薄目で観察している彼と、ステッキに顎を載せてじっと眺めて待っている紳士、その二人の構図に滑稽味を感じます。
Сколько можно было разглядеть сквозь мигавшие ресницы, человек этот был уже немолодой, плотный и с густою, светлою, почти белою бородой...
Прошло минут с десять. Было ещё светло, но уже вечерело. В комнате была совершенная тишина. Даже с лестницы не приносилось на одного звука.≫
<試訳> 彼はいつまでも待つつもりらしかった。
瞬きの合間に見て取った限りでは、この男はもうかなりの年齢で、がっしりした体格で、濃くて明るい真っ白い顎鬚をはやしていた…。
10分ほどが過ぎた。まだ明るかったが、もう日は暮れていた。部屋の中は静寂そのものだった。階段からさえ物音ひとつ聞こえてこなかった。
・ 見知らぬ来訪者を、寝入っているふりをしたラスコーリニコフが観察します。先ほどの町人でないことは確かです。薄目で観察している彼と、ステッキに顎を載せてじっと眺めて待っている紳士、その二人の構図に滑稽味を感じます。
寝たふりをしているだけ ― 2024-07-03
≪Только жужжала и билась какая-то большая муха, ударяясь с налета об стекло. Наконец это стало невыносимо: Раскольников вдруг приподнялся и сел на диване.
- Ну, говорите, чего вам надо?
- А ведь я так и знал, что вы не спите, а только вид показываете, - странно ответил незнакомый, спокойно рассмеявшись. - Аркадий Иванович Свидригайлов, позвольте отрекомендоваться...≫
<試訳> かなり大きな蠅が飛んできてガラスにぶつかり、ぶんぶん羽音を立ててもがいているだけだった。とうとう、こうしているのが我慢できなくなり、ラスコーリニコフはいきなり起き上がってソファーに座った。
「さあ、言って下さい、何のご用ですか?」
「あなたが眠っているのではなく、寝たふりをしているだけだと分かっていましたよ」 平然と微笑みながら、妙な調子で見知らぬ客は答えた。「アルカージィ・イワーノビッチ・スビドリガイロフです、どうぞお見知りおきを…」
・ 妹のドゥーニャが家庭教師をしていた家の主人です。彼はドゥーニャに言い寄った事がありました。事もあろうに、その彼がラスコーリニコフに会いに来たのです。二人がどのような会話を交わすのか興味津々です。
- Ну, говорите, чего вам надо?
- А ведь я так и знал, что вы не спите, а только вид показываете, - странно ответил незнакомый, спокойно рассмеявшись. - Аркадий Иванович Свидригайлов, позвольте отрекомендоваться...≫
<試訳> かなり大きな蠅が飛んできてガラスにぶつかり、ぶんぶん羽音を立ててもがいているだけだった。とうとう、こうしているのが我慢できなくなり、ラスコーリニコフはいきなり起き上がってソファーに座った。
「さあ、言って下さい、何のご用ですか?」
「あなたが眠っているのではなく、寝たふりをしているだけだと分かっていましたよ」 平然と微笑みながら、妙な調子で見知らぬ客は答えた。「アルカージィ・イワーノビッチ・スビドリガイロフです、どうぞお見知りおきを…」
・ 妹のドゥーニャが家庭教師をしていた家の主人です。彼はドゥーニャに言い寄った事がありました。事もあろうに、その彼がラスコーリニコフに会いに来たのです。二人がどのような会話を交わすのか興味津々です。
不意の来客に見入った ― 2024-07-04
Часть четвёртая
Ⅰ
"Неужели это продолжение сна?" - подумалось ещё раз Раскольникову.
Осторожно и недоверчиво всматривался он в неожиданного гостя.
- Свидригайлов? Какой вздор! Быть не может! - проговорил он наконец вслух, в недоумении.
Казалось, гость совсем не удивился этому восклицанию.
<試訳> 第4編
Ⅰ
“ これは夢の続きなんだろうか?” ラスコーリニコフはまた思った。
注意深く訝し気に、彼は不意の来客に見入った。
「スビドリガイロフ? 何て馬鹿々々しい! あり得ない!」 とうとう彼は当惑し、声を荒げて言った。
客人はそんな声の激しさにも、全く驚く様子がなかった。
・ この小説のほぼ半ばになります。事件からまだ数日しか経っていないのに、翻訳したのが4年以上になるのが驚きです。 スビドリガイロフに対して、ラスコーリニコフはもちろん良い感情を持っていません。というよりはむしろ、怒りを抑えられない はずです。妹のドゥーニャとの事を母の手紙で知っていたからです。その当人が目の前に現れたのは意外でしょう。
Ⅰ
"Неужели это продолжение сна?" - подумалось ещё раз Раскольникову.
Осторожно и недоверчиво всматривался он в неожиданного гостя.
- Свидригайлов? Какой вздор! Быть не может! - проговорил он наконец вслух, в недоумении.
Казалось, гость совсем не удивился этому восклицанию.
<試訳> 第4編
Ⅰ
“ これは夢の続きなんだろうか?” ラスコーリニコフはまた思った。
注意深く訝し気に、彼は不意の来客に見入った。
「スビドリガイロフ? 何て馬鹿々々しい! あり得ない!」 とうとう彼は当惑し、声を荒げて言った。
客人はそんな声の激しさにも、全く驚く様子がなかった。
・ この小説のほぼ半ばになります。事件からまだ数日しか経っていないのに、翻訳したのが4年以上になるのが驚きです。 スビドリガイロフに対して、ラスコーリニコフはもちろん良い感情を持っていません。というよりはむしろ、怒りを抑えられない はずです。妹のドゥーニャとの事を母の手紙で知っていたからです。その当人が目の前に現れたのは意外でしょう。
二つの理由 ― 2024-07-05
≪- Вследствие двух причин к вам зашёл: во-первых, лично познакомиться пожелал, так как давно уж наслышан с весьма любопытной и выгодной для вас точки; а во-вторых, мечтаю, что не уклонитесь, может быть, мне помочь в одном предприятии, прямо касающемся интереса сестрицы вашей, Авдотьи Романовны. Одного-то меня, без рекомендации, она, может, и на двор к себе теперь не пустит, вследствие предубеждения, ну, а с вашей помощью я, напротив, рассчитываю...≫
<試訳> 「お訪ねしたのは二つの理由からです。まずは、直接お近づきになりたかったからです。それは、もうだいぶ前から、あなたにとって結構な噂をさんざん伺っていたからです。もう一つは、あなたの妹さん、アブドーチャ・ロマーノブナの利害に直接関わる件についてですが、あなたにも進んでお力添えを願えるだろうと期待しての事です。手ずるもなしで、私一人だけですと、妹さんはある先入観から、庭先にも入れて下さらないでしょうから、そこで、あなたの助けを借りれば、話は別と判断したわけです…」
・ スビドリガイロフが来訪の目的を語ります。主な目的は二つ目でしょう。話は丁寧ですが、ラスコーリニコフはそう簡単には許せないはずです。母の手紙で、スビドリガイロフの振る舞いがもとで苦しんだドゥーニャと、母の気苦労を知って、ひどく憤慨しているからです。
<試訳> 「お訪ねしたのは二つの理由からです。まずは、直接お近づきになりたかったからです。それは、もうだいぶ前から、あなたにとって結構な噂をさんざん伺っていたからです。もう一つは、あなたの妹さん、アブドーチャ・ロマーノブナの利害に直接関わる件についてですが、あなたにも進んでお力添えを願えるだろうと期待しての事です。手ずるもなしで、私一人だけですと、妹さんはある先入観から、庭先にも入れて下さらないでしょうから、そこで、あなたの助けを借りれば、話は別と判断したわけです…」
・ スビドリガイロフが来訪の目的を語ります。主な目的は二つ目でしょう。話は丁寧ですが、ラスコーリニコフはそう簡単には許せないはずです。母の手紙で、スビドリガイロフの振る舞いがもとで苦しんだドゥーニャと、母の気苦労を知って、ひどく憤慨しているからです。
それほど格別罪があるでしょうか ― 2024-07-06
≪- Плохо рассчитываете, - перебил Раскольников.
- Они ведь только вчера прибыли, позвольте спросить?
Раскольников не ответил.
- Вчера, я знаю. Я ведь сам прибыл всего только третьего дня. Ну-с, вот что я скажу вам на этот счёт, Родион Романович; оправдывать себя считаю излишним, но позвольте же и мне заявить: что ж тут, во всем этом, в самом деле, такого особенно преступного с моей стороны, то есть без предрассудков-то, а здраво судя?≫
<試訳> 「まずい判断ですね」 ラスコーリニコフが話の腰を折った。
「お尋ねしますが、お二人は昨日着いたばかりですね?」
ラスコーリニコフは応えなかった。
「昨日だと存じておるんですよ。私もつい3日前に来たところでしてね。さて、ラスコーリニコフさん、私は例の件についてお話ししておきたいのです。弁解するのは余計な事と思いますが、私の言い分もどうかお聞き下さい。実際にあの問題の全てを通して、私の方にそれほど格別罪があるでしょうか、つまり、偏見を抜きにして、理性的に判断してですが」
・ 例の件とは、ドゥーニャに言い寄った場面を目にした妻が、ドゥーニャの方からの誘惑だと誤解し、街中に触れ回って醜聞となった事です。ドゥーニャは解雇され家に戻って非難に耐えました。やがて誤解が解けて、彼の妻がそれを正して回って彼女の汚名をそそいだ経緯がありました。
- Они ведь только вчера прибыли, позвольте спросить?
Раскольников не ответил.
- Вчера, я знаю. Я ведь сам прибыл всего только третьего дня. Ну-с, вот что я скажу вам на этот счёт, Родион Романович; оправдывать себя считаю излишним, но позвольте же и мне заявить: что ж тут, во всем этом, в самом деле, такого особенно преступного с моей стороны, то есть без предрассудков-то, а здраво судя?≫
<試訳> 「まずい判断ですね」 ラスコーリニコフが話の腰を折った。
「お尋ねしますが、お二人は昨日着いたばかりですね?」
ラスコーリニコフは応えなかった。
「昨日だと存じておるんですよ。私もつい3日前に来たところでしてね。さて、ラスコーリニコフさん、私は例の件についてお話ししておきたいのです。弁解するのは余計な事と思いますが、私の言い分もどうかお聞き下さい。実際にあの問題の全てを通して、私の方にそれほど格別罪があるでしょうか、つまり、偏見を抜きにして、理性的に判断してですが」
・ 例の件とは、ドゥーニャに言い寄った場面を目にした妻が、ドゥーニャの方からの誘惑だと誤解し、街中に触れ回って醜聞となった事です。ドゥーニャは解雇され家に戻って非難に耐えました。やがて誤解が解けて、彼の妻がそれを正して回って彼女の汚名をそそいだ経緯がありました。
心を奪われて愛する事も ― 2024-07-07
≪Раскольников продолжал молча его рассматривать.
- То, что в своём доме последовал беззащитную девицу и "оскорблял её своими гнусными предложениями", - так ли-с? (Сам вперёд забегаю!) Да ведь предположите только, что и я человек есмь, et nihil humnaum... одним словом, что и я способен прельститься и полюбить (что уж, конечно, не по нашему велению творится), тогда всё самым естественным обраом объясняется.≫
<試訳> ラスコーリニコフは黙ったまま、じっと相手を見続けた。
「自分の家庭で寄るべのない娘を追いかけ回して、“ 下劣な申し出で侮辱した ”、― というわけですかな? (どうも自分から先走りしてますな!) そう、ただ想像して下さい、私も人間ですし、『人間的な事は何に寄らず私に無縁ではない』 わけで… 要するに、私だって心を奪われて愛する事もできるんですよ (もちろん、こればかりは自分の意志ではどうにもならんものです)。そうなると、何もかも自然な形で説明がつくわけです」
・ スビドリガイロフがラスコーリニコフに、釈明し始めます。『人間的な事~』 はローマの詩人のテレンティウスの喜劇の中の台詞の引用で、この部分はラテン語で書かれています。ラスコーリニコフはスビドリガイロフの人物像を母の手紙で始めて知り、妻子ある身でドゥーニャに求愛した事実に憤慨しています。今は当人の弁解を苦々しく聞いているのでしょう。
- То, что в своём доме последовал беззащитную девицу и "оскорблял её своими гнусными предложениями", - так ли-с? (Сам вперёд забегаю!) Да ведь предположите только, что и я человек есмь, et nihil humnaum... одним словом, что и я способен прельститься и полюбить (что уж, конечно, не по нашему велению творится), тогда всё самым естественным обраом объясняется.≫
<試訳> ラスコーリニコフは黙ったまま、じっと相手を見続けた。
「自分の家庭で寄るべのない娘を追いかけ回して、“ 下劣な申し出で侮辱した ”、― というわけですかな? (どうも自分から先走りしてますな!) そう、ただ想像して下さい、私も人間ですし、『人間的な事は何に寄らず私に無縁ではない』 わけで… 要するに、私だって心を奪われて愛する事もできるんですよ (もちろん、こればかりは自分の意志ではどうにもならんものです)。そうなると、何もかも自然な形で説明がつくわけです」
・ スビドリガイロフがラスコーリニコフに、釈明し始めます。『人間的な事~』 はローマの詩人のテレンティウスの喜劇の中の台詞の引用で、この部分はラテン語で書かれています。ラスコーリニコフはスビドリガイロフの人物像を母の手紙で始めて知り、妻子ある身でドゥーニャに求愛した事実に憤慨しています。今は当人の弁解を苦々しく聞いているのでしょう。
理性ってのは激しい感情に従うもの ― 2024-07-08
≪Тут весь вопрос изверг ли я или сам жёртва? Ну а как жёртва? Ведь предлагая моему предмету бежать со мною в Америку или в Швейцарию, я может, самые почтительнейшие чувста при сем питал, да ещё думал обоюдное счастие устроить!.. Разум-то ведь страсти служит, я, пожалуй, себя ещё больше больше губил, помилуйте!..≫
<試訳> 「問題の全ては、私が悪漢か、それとも私自身が犠牲者なのかにあるのですよ。さて、犠牲者とはどういう意味か? だって私が一緒にアメリカかスイスに駆け落ちしようと提案した時、この上ない敬虔な感情だったかも知れませんし、それどころか、二人の幸福を築こうと考えていたかも知れないんですからね!…。理性ってのは激しい感情に従うものでしてね、おそらく私の方がはるかにひどく破滅したんですよ、冗談じゃない!…」
・ ドゥーニャはそんな駆け落ちを持ちかけられていたのです。やがて彼女が申し出を毅然と拒否した事が世間にも知られるところとなって、彼女の名誉は回復しましたが、彼は逆にすっかり評判を落とし、” 破滅した ” というわけです。自分の方が犠牲者だとは、スビドリガイロフの勝手な言い分です。
<試訳> 「問題の全ては、私が悪漢か、それとも私自身が犠牲者なのかにあるのですよ。さて、犠牲者とはどういう意味か? だって私が一緒にアメリカかスイスに駆け落ちしようと提案した時、この上ない敬虔な感情だったかも知れませんし、それどころか、二人の幸福を築こうと考えていたかも知れないんですからね!…。理性ってのは激しい感情に従うものでしてね、おそらく私の方がはるかにひどく破滅したんですよ、冗談じゃない!…」
・ ドゥーニャはそんな駆け落ちを持ちかけられていたのです。やがて彼女が申し出を毅然と拒否した事が世間にも知られるところとなって、彼女の名誉は回復しましたが、彼は逆にすっかり評判を落とし、” 破滅した ” というわけです。自分の方が犠牲者だとは、スビドリガイロフの勝手な言い分です。
お帰りになって下さい ― 2024-07-09
≪- Да совсем не в том дело, - с отвращением перебил Раскольников, - просто-запросто вы противны, правы ль вы или не правы, ну вот с вами и не хотят знаться, и гонят вас, и стуапайте!
Свидригайлов вдруг расхохотался.
- Однако ж вас не собьёшь! - проговорил он, смеясь откровеннейшим образом, - я было думал схитрить, да нет, вы как раз на самую настоящую точку стали!≫
<試訳> 「いや、問題は全くそんな事じゃないんだ」 嫌悪の念を抱いてラスコーリニコフが遮った。「あなたが正しいにせよ間違っているにせよ、ただただ、不快なんです。さあ、こうしてお付き合いするのも嫌で、追い立てているんですから、お帰りになって下さい!」
スビドリガイロフは突然高笑いをし始めた。
「それにしても、あなたはなかなかですな!」 打ち解けた様子で笑いながら彼は言った。「うまくごまかそうと思っただが、ところがどうして、あなたはしっかりと問題の本筋に立っておられる!」
・ ラスコーリニコフの怒りをスビドリガイロフは笑って受け止めます。ラスコ-リニコフが憤慨するのは予期していたはずで、それを承知でわざわざ会いに来た理由は何か、彼が語るでしょう。
Свидригайлов вдруг расхохотался.
- Однако ж вас не собьёшь! - проговорил он, смеясь откровеннейшим образом, - я было думал схитрить, да нет, вы как раз на самую настоящую точку стали!≫
<試訳> 「いや、問題は全くそんな事じゃないんだ」 嫌悪の念を抱いてラスコーリニコフが遮った。「あなたが正しいにせよ間違っているにせよ、ただただ、不快なんです。さあ、こうしてお付き合いするのも嫌で、追い立てているんですから、お帰りになって下さい!」
スビドリガイロフは突然高笑いをし始めた。
「それにしても、あなたはなかなかですな!」 打ち解けた様子で笑いながら彼は言った。「うまくごまかそうと思っただが、ところがどうして、あなたはしっかりと問題の本筋に立っておられる!」
・ ラスコーリニコフの怒りをスビドリガイロフは笑って受け止めます。ラスコ-リニコフが憤慨するのは予期していたはずで、それを承知でわざわざ会いに来た理由は何か、彼が語るでしょう。
まあ、いいじゃないですか ― 2024-07-10
≪- Да вы и эту минуту хитрить продолжаете
- Так что ж? Так что ж? - повторял Свидригайлов, смеясь нараспашку, - ведь это bonne guerre, что называется, и самая позволительная хитрость!.. Но всё-таки вы меня перебили; так или этак, подтверждаю опять: никаких неприятностей не было бы, если бы не случай в саду. Марфа Петровна...≫
<試訳> 「それですよ、そう言いながら、またごまかそうとしていますよ」
「まあ、いいじゃないですか?、いいじゃないですか?」 スビドリガイロフは派手に笑いながら繰り返した。「だってこれは『正々堂々たる戦い』と言われているもので、当然許されるべき計略ですよ!… それはそうと、あなたに話の腰をおられましたが、いずれにしても、再確認しますよ。もしも、庭での一件がなかったなら、何ら不愉快な事はなかったでしょう。マールファ・ペトロ―ブナが…」
・ スビドリガイロフは言葉巧みに、自分が犠牲者である姿を描き出そうとしています。ラスコーリニコフにとっては手ごわい相手で、なぜペテルブルグにやって来たのかも含め、謎の多い人物です。“ bonne guerre ” はフランス語で、フェアプレーを意味するそうで、ラスコーリニコフとの言葉のやり取りが “ 正々堂々たる戦い ” だと言うのです。先に、ラテン語を引用したりするところからすると、教養ある紳士のようです。
- Так что ж? Так что ж? - повторял Свидригайлов, смеясь нараспашку, - ведь это bonne guerre, что называется, и самая позволительная хитрость!.. Но всё-таки вы меня перебили; так или этак, подтверждаю опять: никаких неприятностей не было бы, если бы не случай в саду. Марфа Петровна...≫
<試訳> 「それですよ、そう言いながら、またごまかそうとしていますよ」
「まあ、いいじゃないですか?、いいじゃないですか?」 スビドリガイロフは派手に笑いながら繰り返した。「だってこれは『正々堂々たる戦い』と言われているもので、当然許されるべき計略ですよ!… それはそうと、あなたに話の腰をおられましたが、いずれにしても、再確認しますよ。もしも、庭での一件がなかったなら、何ら不愉快な事はなかったでしょう。マールファ・ペトロ―ブナが…」
・ スビドリガイロフは言葉巧みに、自分が犠牲者である姿を描き出そうとしています。ラスコーリニコフにとっては手ごわい相手で、なぜペテルブルグにやって来たのかも含め、謎の多い人物です。“ bonne guerre ” はフランス語で、フェアプレーを意味するそうで、ラスコーリニコフとの言葉のやり取りが “ 正々堂々たる戦い ” だと言うのです。先に、ラテン語を引用したりするところからすると、教養ある紳士のようです。
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