誰にもこの事は知られない2010-12-01

 ≪Никто-то об этом не узнает, никаких не справедливых сплетен не может произойти... вот эти двести рублей и, клянусь, - вы должны принять их, иначе... иначе стало быть все должны быть врагами друг дру на свете! Но ведь есть же и на свете братья... У вас благородная душа... вы должны это понять, должны!..≫

<試訳> 「誰にもこの事は知られませんし、いわれのない中傷など起こりようもありません・・・これがその2百ルーブリですが、誓って言います、あなたはこれを受け取らなければなりません。そうしないと・・・そうしないと世の中の皆が敵同士にならなければいけなくなってしまいます。でもこの世の中にだって兄弟はいるんです・・・気高い心をお持ちのあなたは・・・あなたは理解しなければなりません、理解しなければ!・・・」

・ 2百ルーブリを受け取るべきだという理由を熱心に説明していますが、これはアリョーシャ自身の受け止め方です。相手にはまた違う論理があるのですから通じるかどうかというところです。家庭の悲惨な状況を考えると、誇りが問題ならばそれを捨ててでも受け取ってほしいと願ってしまいます。

真新しい百ルーブリ紙幣2010-12-02

 ≪И Алёша протянул ему две новенькие радужные сторублевые кредитки. Оба они стояли тогда именно у большого камня, у завора, и никто кругом не было. Кредитки произвели, казалось, на штабс-капитана страшное впечатление: он вздрогнул, но сначала как бы от одного удивления: ничего подобного ему и не мерещилось, и такого исхода он не ожидал вовсе.≫

<試訳> そしてアリョーシャは彼に二枚の真新しい虹色の百ルーブリ札を差し出した。二人はその時、ちょうど垣根のそばの大きな石の傍らに立っていて、あたりには人影もなかった。紙幣は二等大尉に怖ろしい程の印象を引き起こしたようだった。彼は身震いしたが、最初は単なる驚きからであったろう。というのも、こんな事は夢にも思わなかったし、こんな結末は予想もしていなかったのだった。

・ 人気のない生垣の傍で僧衣のアリョーシャが退役軍人スネギリョフに虹色の紙幣を差し出す・・・映画のワンシーンにしたいところです。二人の詳しい語りから背景や心理は十分に伝わっています。読者としては待たされた上でいよいよ、とその成り行きに惹きつけられます。

チェブラーシカ(シール)2010-12-03

このところシールづいているのですが、めずらしいチェブラーシカのシールです。隅に小さくジブリの森美術館ライブラリー提供作品、 NOT FOR SALE、とありますからキャンペーン用なのでしょう。登場する仲間達がそろっていて楽しくなります。

夢見だにしなかった2010-12-04

≪Помощь от кого-нибудь, да ешё такая знатчительная, ему и не мечталась даже во сне. Он взял кредитки и с минуту почити и отвечать не мог, совсем что-то новое промелькнуло в лице его.≫

<試訳> 誰かから、ましてこのような多額の援助を受けるなどとは、彼は夢見だにしなかった。紙幣を受け取ると1分ほどもほとんど答えることさえできなかった。彼の顔に何かしら全く新たな表情がちらりと表れた。

・ 彼は予期しない援助に驚きどう対応してよいか言葉を失います。確かに大金を突然手渡されて戸惑う気持ちはよく分かります。虹色の紙幣が放つ様々な意味、人に及ぼす現金の魔力は今も変わりないようです。

本当なんですな2010-12-05

 ≪- Это мне-то, мне-с, это столько денег, двести рублей! Батюшки! Да я уж четыре года не видал таких ленег, - господи! И говорит, что сестра... и вправду это, впаравду?
- Клянусь вам, что всё, что я вам сказал, правда! - вскричал Алёша. Штабс-капитан покраснел.≫

<試訳> 「これを私などに、私にでありますか、これ程の大金を、二百ルーブリも!何ということで!まったく4年この方こんな大金にお目にかかっておりません、ありがたいことで! 妹からと仰られているんですな…本当なんですなそれは、本当なんですな」
「誓います、僕が話した事は全部本当なんです!」 アリョーシャは叫んだ。二等大尉は顔を赤らめた。

・思いがけず大金を手渡され、喜びが湧きあがってくる様子が、「本当か」と何度も確かめるところによく表れています。病気の家族を抱えて困窮する当時の最下層の生活者の心情を知る作者ならではと思います。

受け取ったら卑怯者になるのでは2010-12-06

 ≪- Послушайте-с, голубчик мой., послушайте-с, ведь если я и приму, то ведь не буду же я подлецом? В глазах-то ваших, Алексей Фёдорович, ведь не буду, не буду подлецом? Нет-с, Алексей Фёдорович, вы высдущайте, выслушайте-с, - торопился он поминутно, дотрогиваясь до Алёши обеими руками, - вы вот уговариваете меня принять тем, что "сестра" плсылает, а внутри-то, про себя-то, - не восчувствуете ко мне презрения, если я приму-с, а?≫

<試訳> 「お聞き下さい、まあお聞き下さい。もし私が受け取ったとしたら卑劣漢になりませんかね。アレクセイ殿、あなたからご覧になって、私は卑劣漢になりはしませんかね。いけませんですな、アリョーシャ殿、しまいまで、しまいまでお聞きください」彼はアリョーシャに両手で触れながら絶え間なくあせって喋った。「あなたは”妹”がよこしたものを受け取るようにと説き伏せなさるが、もし私が受け取りなどしたら、内心この私に軽蔑をお感じになられるのじゃありませんかな、どうです」

・ ここまで説得して手渡したというのに、まだ二等大尉は簡単には受け取らず、軽蔑されるのではと怖れるのです。善意を伝える事はこんな難しいものでしょうか。貧しくとも誇りの方を重んじる彼のこだわりは過度にも思えますが、お金のために策を弄したり、法を犯すなどのニュースが多い今日の風潮に比べて考えさせられます。

あなた様にはお分かりにならない2010-12-07

 ≪- Да нет же, нет! Спасением моим клянусь вам, что нет! И никто не узнает никогда, только мы: я, вы, да она, да ещё одна дама, её большой друг...
- Что дама! Слушайте, Алексей Фёдрович, выслушайте-с, ведь уж теперь минута такая пришла-с, что надо вывлушать, ибо вы даже и понять не можете, что могут значить для меня теперь эти двести рублей, - продолжал бедняк, приходя постепенно в какой-то беспорядочный, почти дикий восторг.≫

<試訳> 「そんなことはありません、違います!命かけてそうじゃないと誓います! それに誰も絶対知らないんです、僕達だけなんです。僕とあなた、もちろんあの方も、それにもう一人ある夫人が、あの方の親しい友人の・・・」
「夫人の事なぞ結構です!さあアリョーシャ殿、お聞き願います、すっかり聞いていただかなきゃならん時が参りましたんで、と言いますのも、この二百ルーブリが私にとりましていかに貴重なものであるか、あなた様にはお分かりにならんのでありますから」と、哀れな男はだんだん何か脈絡のない荒々しい程の興奮状態に陥りながら語り続けた。

・ この後、彼は家族の一人一人についての窮状と、この援助金を使う事でどれ程彼らを助ける事ができるか延々と語り続けるのです。世の不幸の多くがお金によって助けられるという現実です。逆が真とは言えませんが。

アリョーシャはすごく嬉しかった2010-12-08

 ≪- Алёша был ужасно рад, что доставил столько счастия и что бедняк слгласился быть осчастливленным.≫

<試訳> アリョーシャはこんなにも幸福を提供できたこと、そして哀れな男が、幸福になる事に同意したことがすごく嬉しかった。

・ 二等大尉が手渡された二百ルーブリの使途を思い描いて有頂天になって話し続けるのを聞き、アリョーシャは心から喜ぶのです。他の人の悲しみにも喜びにも強く共感する彼の純真な心情です。

達せられますとも!2010-12-09

≪- Достанет, достанет! - воскликнул Алёша, - Катерина Иваносна вам пришлёт ещё, сколько угодно, и знаете ли, у меня тоже есть деньги, возьмимите сколько вам надо, как от брата, как от друга, потом отдадите...≫

<試訳> 「達せられます、達せられますとも!」アリョーシャは叫んだ「カテリーナさんが入用なだけまた送って下さいますよ、それに、僕にもお金はありますから、弟から、友達からと思って必要な分お持ち下さい、後で返して下さるといいんです・・・」

・ 家族に必要な経費をあれこれ考え、他の土地へ引越す夢について「踏み倒された貸金が一口でも戻れば、夢が達せられるんだが」と嘆く二等大尉に応えるアリョーシャです。何としてもこの家族の窮状を救わなければと善意の溢れる説得が続きます。

これは夢じゃないんです!2010-12-10

 ≪И знаете, что никогда вы ничего лучше даже и придумать не в состоянии, как этот переезд в другую губернию! В этом ваше спасение, а главное для вашего мальчика, - и знаете, поскорее бы, до зимыбы, до холодов, и написали бы нам оттуда, и остались бы мы братьями... Нет, это не мечта!≫

<試訳> 「それに、他の県に引っ越すって事より良い考えなんて絶対に思いつきやしません!それであなたは救われるんです、何と言っても、あなたの息子さんにとっての救いなんです。それも急いだほうがいいですよ、冬が来て寒くなる前にね。そしてそこから僕達に手紙を下さい、そしたら僕たちは兄弟のままでいれるでしょう・・・。いえ、これは夢じゃないんです!」

・ アリョーシャが大尉とその息子の夢である引っ越しを熱心に勧めます。そこで新しい生活が始まりすべてがうまくいくように思い描いていますが、若さ故の願望と宗教的心情が混じっているようです。