殻の中に籠ってしまう ― 2025-06-01
≪На прямое и бесспорное даказательство походило бы! А ведь засади его не вовремя, - хотя бы я был и уверен, что это он, - так ведь я, пожалуй, сам у себя средства отниму к дальнейшему его обличению, а почему? А потому что я ему, так сказать, определённое положение дам, так сказать, психологически его определю и успокою, вот он и уидёт от меня в свою скорлупу:≫
<試訳> 「明白な争う余地のない物的証拠が欲しいんです! ところが、時機を待たずに容疑者を投獄してごらんなさい、― 彼が犯人だと、私が確信していたとしてもですよ ― それで、彼を追及する手段を自分で自分から奪い去る事になるでしょう。なぜか? なぜなら、私は彼に、何と言うか、確定した状況を与えたわけで、つまり、心理的に彼を安定させ落着かせてしまうのですよ、そこで相手は私から去って殻の中に籠ってしまうわけです」
・ 多くの犯罪者を相手にした判事の経験を感じさせます。急いで逮捕する事で、追及を難しくしてしまう場合があると言うのです。現在でも、容疑者の行動を長い間追い続けて、好機を捕らえて逮捕に至るケースがあります。判事が語る捜査の手の内を、スコーリニコフは絶えず我が身の事として聞いているのでしょう。
<試訳> 「明白な争う余地のない物的証拠が欲しいんです! ところが、時機を待たずに容疑者を投獄してごらんなさい、― 彼が犯人だと、私が確信していたとしてもですよ ― それで、彼を追及する手段を自分で自分から奪い去る事になるでしょう。なぜか? なぜなら、私は彼に、何と言うか、確定した状況を与えたわけで、つまり、心理的に彼を安定させ落着かせてしまうのですよ、そこで相手は私から去って殻の中に籠ってしまうわけです」
・ 多くの犯罪者を相手にした判事の経験を感じさせます。急いで逮捕する事で、追及を難しくしてしまう場合があると言うのです。現在でも、容疑者の行動を長い間追い続けて、好機を捕らえて逮捕に至るケースがあります。判事が語る捜査の手の内を、スコーリニコフは絶えず我が身の事として聞いているのでしょう。
今にも敵が総攻撃で ― 2025-06-02
≪поймёт наконец, что он арестант. Говорят вон, в Севастополе, сейчас после Альмы, умные-то люди ух как боялись, что вот-вот атакует неприятель открытою силой и сразу возьмёт Севастополь; а как увидели, что неприятель правильную осаду предпочёл и первую параллель открывает, так куды, говорят, обрадовались и успокоились умные-то люди-с:≫
<試訳> 「いよいよ自分は囚人だ、と悟るわけです。なんでも噂では、セバストーボリでは、アリマの敗走後、識者達は今にも敵が総攻撃でセバストーポリ要塞を陥落させるのではないかと恐れ慄いていたそうですよ。ところが、敵が正攻法の包囲戦を選んで、最初の平行濠を掘り始めるのを見ると、今度はその識者達は大いに喜んで、ほっとしたという話です」
・ 判事は犯罪者の心理を説明するために、わざわざこのような例を持ち出しています。セバストーポリはクリミア戦争の最後の激戦地です。1853年、ロシアは南下政策でオスマン帝国に宣戦し、1856年オスマン・英・仏・サルディーニャの連合軍に破れました。黒海沿岸の覇権を巡ってヨーロッパ全土を巻き込んだ戦乱となり、その後の各国の政情に大きな影響を与えています。この作品が書かれたのが1866年ですから、作者にとっては10年ほど前の事で記憶に新しかったでしょう。
<試訳> 「いよいよ自分は囚人だ、と悟るわけです。なんでも噂では、セバストーボリでは、アリマの敗走後、識者達は今にも敵が総攻撃でセバストーポリ要塞を陥落させるのではないかと恐れ慄いていたそうですよ。ところが、敵が正攻法の包囲戦を選んで、最初の平行濠を掘り始めるのを見ると、今度はその識者達は大いに喜んで、ほっとしたという話です」
・ 判事は犯罪者の心理を説明するために、わざわざこのような例を持ち出しています。セバストーポリはクリミア戦争の最後の激戦地です。1853年、ロシアは南下政策でオスマン帝国に宣戦し、1856年オスマン・英・仏・サルディーニャの連合軍に破れました。黒海沿岸の覇権を巡ってヨーロッパ全土を巻き込んだ戦乱となり、その後の各国の政情に大きな影響を与えています。この作品が書かれたのが1866年ですから、作者にとっては10年ほど前の事で記憶に新しかったでしょう。
これはみな特殊な場合です ― 2025-06-03
≪по крайности на два месяца, значит, дело затянулось, потому когда-то правильной-то осадой возьмут! Опять смеётесь, опять не верите? Оно, конечно, правы и вы. Правы-с, правы-с! Это всё частные случаи, согласен с вами; представленный случай, действительно, частный-с! Но ведь вот что при этом, добрейший Родион Романович, наблюдать следует:≫
<試訳> 「正攻法の包囲戦となると、少なくとも2ヶ月は攻略が先に延びるというわけですよ! また笑っておられますな、また本当になさらんのですかな? もちろんあなたは正しいです。正しいですよ、正しいですとも! これはみな特殊な場合です、おっしゃる通りです。お話したのは確かに特殊な場合です! しかしですね、ロジオン・ロマーノビッチ、この際、次の事実に注目しなければなりません」
・ 判事が突然持ち出したクリミア戦争の話は暗喩です。それに対してラスコーリニコフは、特殊な場合に過ぎないという表情をしたのでしょう。彼としては油断なく判事の意図を汲み取らなければりません。
<試訳> 「正攻法の包囲戦となると、少なくとも2ヶ月は攻略が先に延びるというわけですよ! また笑っておられますな、また本当になさらんのですかな? もちろんあなたは正しいです。正しいですよ、正しいですとも! これはみな特殊な場合です、おっしゃる通りです。お話したのは確かに特殊な場合です! しかしですね、ロジオン・ロマーノビッチ、この際、次の事実に注目しなければなりません」
・ 判事が突然持ち出したクリミア戦争の話は暗喩です。それに対してラスコーリニコフは、特殊な場合に過ぎないという表情をしたのでしょう。彼としては油断なく判事の意図を汲み取らなければりません。
特殊なケースに転化する ― 2025-06-04
≪ведь общего-то случая-с, того самого, на который все юридические формы и правила примерены и с которого они рассчитаны и в книжки записаны, вовсе не существует-с по тому самому, что всякое дело, всякое, хоть, например, преступление, как только оно случится в действительности, тотчас же и обращается в совершенно частный случай-с; да иногда ведь в какой: так-таки ни на что прежнее не похожий-с.≫
<試訳> 「そもそも一般的なケースなどというもの、つまり全ての司法上の形式や法律が適用され、それから判断されて書物に書き込まれるような一般的なケースというものは、もともと存在しないのですよ。あらゆる事柄、たとえば犯罪事件にしても全て、現実に起こってしまえばその途端に特殊なケースに転化するのです。そう、時には特殊も特殊、全く前例のないものにです」
・ あらゆる犯罪事件は一つ一つが違っていて前例として参考にできない、と判事は強調します。多くの事例を扱った経験から得たものです。ラスコーリニコフに、“ 特別な事件として扱うぞ ” と言っているようです。
<試訳> 「そもそも一般的なケースなどというもの、つまり全ての司法上の形式や法律が適用され、それから判断されて書物に書き込まれるような一般的なケースというものは、もともと存在しないのですよ。あらゆる事柄、たとえば犯罪事件にしても全て、現実に起こってしまえばその途端に特殊なケースに転化するのです。そう、時には特殊も特殊、全く前例のないものにです」
・ あらゆる犯罪事件は一つ一つが違っていて前例として参考にできない、と判事は強調します。多くの事例を扱った経験から得たものです。ラスコーリニコフに、“ 特別な事件として扱うぞ ” と言っているようです。
へとへとに疲れ果てますよ ― 2025-06-05
≪Прекомические иногда случай случаются в этом роде-с. Да оставь я иного-то гоподина совсем одного: не бери я его и не беспокой, но чтоб знал он каждый час и каждую минуту, или по крайней мере подозревал, что я всё знаю, всю подноготную, и денно и нощино слежу за ним, неусыпно его сторожу, и будь он у меня сознательно под вечным подозрением и страхом, так ведь, ей-богу, закружится,≫
<試訳> 「およそ滑稽な場合が時には起こるんです。私がある男を全く一人にして泳がせておいたとしましょう。逮捕もしないし邪魔もしない。ただ、私が何もかも裏の裏まで知っていて、昼夜を分かたず絶えず彼を見張って用心深く彼を監視していると、彼に四六時中感じさせるか、少なくとも、疑惑を持たれているのだ、と仕向けるわけです。このように、意識的に、絶えず私に狙われているという疑惑と恐怖のもとに置きますとね、間違いなく彼はへとへとに疲れ果てますよ」
・ 判事は容疑者に対する捜査の詳細に明かします。まさに今ラスコーリニコフが置かれている状況にほかなりません。彼はもはや判事に主導権を握られて、見えない網に捕らえられているようです。
<試訳> 「およそ滑稽な場合が時には起こるんです。私がある男を全く一人にして泳がせておいたとしましょう。逮捕もしないし邪魔もしない。ただ、私が何もかも裏の裏まで知っていて、昼夜を分かたず絶えず彼を見張って用心深く彼を監視していると、彼に四六時中感じさせるか、少なくとも、疑惑を持たれているのだ、と仕向けるわけです。このように、意識的に、絶えず私に狙われているという疑惑と恐怖のもとに置きますとね、間違いなく彼はへとへとに疲れ果てますよ」
・ 判事は容疑者に対する捜査の詳細に明かします。まさに今ラスコーリニコフが置かれている状況にほかなりません。彼はもはや判事に主導権を握られて、見えない網に捕らえられているようです。
恐らく自首して来ますよ ― 2025-06-06
≪право-с, сам придёт да, пожалуй, ещё и наделает чего-нибудь, что уже на дважды два походить будет, так сказать, математический вид будет иметь, - оно и приятно-с. Это и с мужиком сиволапым может произойти, а уж нашим батом, современно умным человеком, да ещё в известную сторону развитым, и подавно! Потому, голубчик, что весьма важная штука понять, в которую сторону развит человек.≫
<試訳> 「本当ですよ、彼は恐らく自首して来ますよ。それどころか、二二が四と言うような、言わば、数学的に明白な証拠があるような何かをやらかしてしまうに決まっています。愉快ですよ。粗野な農民にもある事ですが、まして私達の仲間、当世の賢明な人間、さらに、ある方面に発達した人なら、なおさらそうです! ですから、その人物がどの方面に発達しているかを知るのが極めて大切な事だという訳です」
・ 知的な容疑者は泳がせておいても必ず自首してくると、判事は自信たっぷりです。ラスコーリニコフを暗示にかけるかのようです。実際、彼が出頭するのはこれで二度目ですが、今後、果たして判事の言う通りになるのでしょうか。
<試訳> 「本当ですよ、彼は恐らく自首して来ますよ。それどころか、二二が四と言うような、言わば、数学的に明白な証拠があるような何かをやらかしてしまうに決まっています。愉快ですよ。粗野な農民にもある事ですが、まして私達の仲間、当世の賢明な人間、さらに、ある方面に発達した人なら、なおさらそうです! ですから、その人物がどの方面に発達しているかを知るのが極めて大切な事だという訳です」
・ 知的な容疑者は泳がせておいても必ず自首してくると、判事は自信たっぷりです。ラスコーリニコフを暗示にかけるかのようです。実際、彼が出頭するのはこれで二度目ですが、今後、果たして判事の言う通りになるのでしょうか。
どこへも逃げて行かないのを知っていますから ― 2025-06-07
≪А нервы-то-с, нервы-то-с, вы их-то так и забыли-с! Ведь всё это ныне больное, да худое, да раздражённое!.. А жёлчи-то, жёлчи в них во всех сколько! Да ведь это, я вам скажу, при случае своего рода рудник-с! И какое мне в том беспокойство, что он несвязанный ходит по городу! Да пусть, пусть его погуляет пока, пусть; я ведь и без того знаю, что он моя жёртвочка и никуда не убежит от меня!≫
<試訳> 「神経ですよ、神経、あなたはそれをお忘れでしたな! 当節、この連中はみな病気で、全くひどく痩せて苛立ちやすい事と言ったら!… 胆汁のせいですな、連中には胆汁がどれほどある事か! これはまあ、言わば一種の鉱脈です! それで私は、その男が束縛されずに街をぶらぶらき回っても、何の心配もないわけです! まあ、当分は勝手にぶらつかせておけばいいんでしてね。どうせ、それでなくても、男が私の獲物で、私からどこへも逃げて行かないのを知っていますから」
・ 判事の話の中の “ 男 ” は、いかにもラスコーリニコフそのものです。これだけ挑発されても、ラスコーリニコフは今のところ黙って聞いています。苦々しい思いに違いありません。
<試訳> 「神経ですよ、神経、あなたはそれをお忘れでしたな! 当節、この連中はみな病気で、全くひどく痩せて苛立ちやすい事と言ったら!… 胆汁のせいですな、連中には胆汁がどれほどある事か! これはまあ、言わば一種の鉱脈です! それで私は、その男が束縛されずに街をぶらぶらき回っても、何の心配もないわけです! まあ、当分は勝手にぶらつかせておけばいいんでしてね。どうせ、それでなくても、男が私の獲物で、私からどこへも逃げて行かないのを知っていますから」
・ 判事の話の中の “ 男 ” は、いかにもラスコーリニコフそのものです。これだけ挑発されても、ラスコーリニコフは今のところ黙って聞いています。苦々しい思いに違いありません。
どこに逃げるというのです ― 2025-06-08
≪Да и куда ему убежать, хе-хе! За границу, что ли? За границу поляк убежит, а не он, тем паче, что я слежу, да и меры принял. В глубину отечества убежит, что ли? Да ведь там мужики живут, настоящие, посконные, русскме; этак ведь современно-то развитый человек скорее острог предпочтёт, чем с такими иностранцами как мужички наши, жить, хе-хе! Но это всё вздор и наружное.≫
<試訳> 「その男はいったいどこに逃げるというのです、へっへっ! 外国へですか?外国へ逃げるのはポーランド人のやる事で、その男じゃありませんし、まして私が監視していますからね、対策を講じていますよ。祖国の奥深くへでも逃げますか? ところがそこには農民達が住んでいますよ、正真正銘、昔ながらのロシア農民がね。となると、現代の教養ある人は、我が国の農民のような異人種と一緒に暮らすよりはむしろ牢獄を選ぶでしょうな、へっへっ! しかし、こんな事はみな馬鹿々々しい上辺だけの問題です」
・ 容疑者を直ぐ逮捕しないで自由にさせておいても、逃げ場がない理由を判事が説明します。多くの事例を扱った経験に基づいた自信でしょう。ただ、“ 容疑者を見極めた ” 上での事です。
<試訳> 「その男はいったいどこに逃げるというのです、へっへっ! 外国へですか?外国へ逃げるのはポーランド人のやる事で、その男じゃありませんし、まして私が監視していますからね、対策を講じていますよ。祖国の奥深くへでも逃げますか? ところがそこには農民達が住んでいますよ、正真正銘、昔ながらのロシア農民がね。となると、現代の教養ある人は、我が国の農民のような異人種と一緒に暮らすよりはむしろ牢獄を選ぶでしょうな、へっへっ! しかし、こんな事はみな馬鹿々々しい上辺だけの問題です」
・ 容疑者を直ぐ逮捕しないで自由にさせておいても、逃げ場がない理由を判事が説明します。多くの事例を扱った経験に基づいた自信でしょう。ただ、“ 容疑者を見極めた ” 上での事です。
心理的に私から逃げないのですよ ― 2025-06-09
≪Что такое убежит! Это форменное; а главное-то не то; не этому одному он не убежит от меня, что некуда убежать: он у мнея психологически не убежит, хе-хе! Каково выраженьице-то! Он по закону природы у меня не убежит, хотя бы даже и было куда убежать. Видали бабочку перед свечкой? Ну, так вот он всё будет, всё будет около меня, как около свечки, кружиться;≫
<試訳> 「逃げるとは、どういう事でしょう! それは形だけのものですよ。重要なのは、それじゃないんです。逃げ場がないという理由で私から逃げないのじゃありません。その男は心理的に私から逃げないのですよ、へっへっ!どうですこの表現は! たとえ逃げ場があったとしても、奴は自然の法によって、私の所から逃げ出そうとしない。蝋燭の灯に集まる蛾を見た事があるでしょう? それですよ、蛾が灯の近くをぐるぐる舞うように、奴は絶えず私の周りを舞うんですな」
・ 何という判事の自信でしょう。知能の高い犯罪者の心理を知り尽くしていればこそです。今まさに、ラスコーリニコフはこの蛾のように自ら判事に吸い寄せられています。
<試訳> 「逃げるとは、どういう事でしょう! それは形だけのものですよ。重要なのは、それじゃないんです。逃げ場がないという理由で私から逃げないのじゃありません。その男は心理的に私から逃げないのですよ、へっへっ!どうですこの表現は! たとえ逃げ場があったとしても、奴は自然の法によって、私の所から逃げ出そうとしない。蝋燭の灯に集まる蛾を見た事があるでしょう? それですよ、蛾が灯の近くをぐるぐる舞うように、奴は絶えず私の周りを舞うんですな」
・ 何という判事の自信でしょう。知能の高い犯罪者の心理を知り尽くしていればこそです。今まさに、ラスコーリニコフはこの蛾のように自ら判事に吸い寄せられています。
自由が喜びでなくなり ― 2025-06-10
≪свобода не мила станет, станет задумываться, запутываться, сам себя кругом запутает, как в сетях, затревожит себя насмерть!.. Мало того: сам мне какую-нибудь математическую штучку, вроде дважды двух, приготовит, - лишь дай я ему только антракт подлиннее... И всё будет, всё будет около меня же круги давать, всё суживая да суживая радиус, - и- хлоп!≫
<試訳> 「自由が喜びでなくなり、思い悩み始める、混乱してくる、蜘蛛の巣にひっかかったように自分で自分をがんじがらめにして、死ぬほどの不安に陥るんですな!… そればかりではありませんよ。自分から私に、二二が四のように数学的に明らかな物証を用意してくれるんです。私がただ幕間をちょっと長くしてやればいいだけで…。 そしていつも、絶えず私の周りに円を描いて、次第に輪を狭めて、そしてついに、すとん!」
・ 判事は、容疑者を黙って泳がせておいても、不安を募らせて結局、自縄自縛のような状態になって自首してくると言うのです。容疑者の心理を知り尽くしています。もっとも、容疑者がどの様な人間なのかを十分把握できている場合です。このように手の内を明かす判事は稀な存在でしょう。
<試訳> 「自由が喜びでなくなり、思い悩み始める、混乱してくる、蜘蛛の巣にひっかかったように自分で自分をがんじがらめにして、死ぬほどの不安に陥るんですな!… そればかりではありませんよ。自分から私に、二二が四のように数学的に明らかな物証を用意してくれるんです。私がただ幕間をちょっと長くしてやればいいだけで…。 そしていつも、絶えず私の周りに円を描いて、次第に輪を狭めて、そしてついに、すとん!」
・ 判事は、容疑者を黙って泳がせておいても、不安を募らせて結局、自縄自縛のような状態になって自首してくると言うのです。容疑者の心理を知り尽くしています。もっとも、容疑者がどの様な人間なのかを十分把握できている場合です。このように手の内を明かす判事は稀な存在でしょう。










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