猜疑心がたちまち途方もない大きさに ― 2025-04-26
≪- Ну зачем я так беспокоюсь о том, что вставил это кажется?" - мелькнула в нём тотчас же другая мысль, как молния.
И он вдруг ощутил, что мнительность его, от одного соприкосновения с Порфирием, от двух только слов, от двух только взгляда, уже разрослась в одно мгновение в чудовищные размеры... и что это страшно опасно: нервы раздражаютсся, волнение увеличивается.≫
<試訳> “ えいっ、いったいなんだって、確か、と言い足したのを、こう気にするんだ?” ― すぐに別の考えが、また稲妻のように頭をかすめるのだった。
そして突然ラスコーリニコフは、ポリフィーリィとちょっと接して二言三言交わしただけで、そしてほんの2、3度視線を合わせただけで、自分の猜疑心がたちまち途方もない大きさに膨れ上がるの覚えた… それは恐ろしいほど危険なのだ。神経が昂って興奮が激しくなっていく。
・ ポルフィーリィ判事と会った途端に、ラスコーリニコフは自分が殺人犯であることを押し隠して対峙しなければならない緊張感に襲われます。愛想良く接する相手の手強さは、前回のやりとりで思い知らされています。その緊張が感情を昂らせて自制できなくなる可能性があります。
И он вдруг ощутил, что мнительность его, от одного соприкосновения с Порфирием, от двух только слов, от двух только взгляда, уже разрослась в одно мгновение в чудовищные размеры... и что это страшно опасно: нервы раздражаютсся, волнение увеличивается.≫
<試訳> “ えいっ、いったいなんだって、確か、と言い足したのを、こう気にするんだ?” ― すぐに別の考えが、また稲妻のように頭をかすめるのだった。
そして突然ラスコーリニコフは、ポリフィーリィとちょっと接して二言三言交わしただけで、そしてほんの2、3度視線を合わせただけで、自分の猜疑心がたちまち途方もない大きさに膨れ上がるの覚えた… それは恐ろしいほど危険なのだ。神経が昂って興奮が激しくなっていく。
・ ポルフィーリィ判事と会った途端に、ラスコーリニコフは自分が殺人犯であることを押し隠して対峙しなければならない緊張感に襲われます。愛想良く接する相手の手強さは、前回のやりとりで思い知らされています。その緊張が感情を昂らせて自制できなくなる可能性があります。
稲妻のように頭をかすめた ― 2025-04-25
≪Потом, через минуту, уже гороря о другом, взял её опять со стола и пепреложил к себе на бюро.
- Вы, кажется, говорили вчера, что желали бы спросить меня... форменно... о моём знакомстве с этой... убитой? - начал было опять Раскольников, - "ну зачем я вставил кажется? - промелькнуло в нём как молня.≫
<試訳> それから1分ほどして、判事はもう他の話をしながら、再び机から届出文書を取り上げて事務机の手もとへ置き直した。
「あなたは、確か、僕と例の… 殺された老婆との関係を… 正式に… 尋ねたいと話されましたね?」 ラスコーリニコフはまた言いかけて、― “ どうして、確か、なんて入れたんだ?” ― という思いが稲妻のように頭をかすめた。
・ 緊張しているラスコーリニコフが神経を尖らせながら、ぎごちなく言葉を発しています。余裕のある判事を相手に、口数を少なくして冷静に対処しようとの決心を、どこまで保てるのか心もとない感じです。
- Вы, кажется, говорили вчера, что желали бы спросить меня... форменно... о моём знакомстве с этой... убитой? - начал было опять Раскольников, - "ну зачем я вставил кажется? - промелькнуло в нём как молня.≫
<試訳> それから1分ほどして、判事はもう他の話をしながら、再び机から届出文書を取り上げて事務机の手もとへ置き直した。
「あなたは、確か、僕と例の… 殺された老婆との関係を… 正式に… 尋ねたいと話されましたね?」 ラスコーリニコフはまた言いかけて、― “ どうして、確か、なんて入れたんだ?” ― という思いが稲妻のように頭をかすめた。
・ 緊張しているラスコーリニコフが神経を尖らせながら、ぎごちなく言葉を発しています。余裕のある判事を相手に、口数を少なくして冷静に対処しようとの決心を、どこまで保てるのか心もとない感じです。
届けを持ってきました ― 2025-04-24
≪- Я вам принёс эту бумажку... об часах-то... вот-с. Так ли написано или опять переписывать?
- Что? Бумажка? Так, так... не беспокойтесь, так точно-с, - проговорил, как бы спеша куда-то, Порфиний Петрович и, уже проговорив это, взял бумагу и просмотрел её. - Да, точно так-с. Больше ничего и не надо, - подтверидил он тою же скороговоркой и положил бумагу на стол. ≫
<試訳> 「この届けを持ってきました… 時計についての… この通り。これでいいでしょうか、それとも書き直しましょうか?」
「何です? 届けですか? いいです、いいです… ご心配なく、これでいいんです」 ポルフィーリィはまるでどこかへ急いでいるかのように、そう言ってからその届けを手に取り目を通した。「この通りで結構。これ以上何も必要ありませんよ」 彼は同じような早口で繰り返して、届けを机の上に置いた。
・ 老婆に質入れした品について一筆書くようにと、前回判事に言われたので持ってきたのです。それがラスコーリニコフの出頭の目的でした。おそらく判事にとっては、その届けの書類は問題ではなく、彼を出向かせる口実だったのでしょう。ラスコーリニコフは、気づかないうちに、すでに網にかかったようです。
<試訳> 「この届けを持ってきました… 時計についての… この通り。これでいいでしょうか、それとも書き直しましょうか?」
「何です? 届けですか? いいです、いいです… ご心配なく、これでいいんです」 ポルフィーリィはまるでどこかへ急いでいるかのように、そう言ってからその届けを手に取り目を通した。「この通りで結構。これ以上何も必要ありませんよ」 彼は同じような早口で繰り返して、届けを机の上に置いた。
・ 老婆に質入れした品について一筆書くようにと、前回判事に言われたので持ってきたのです。それがラスコーリニコフの出頭の目的でした。おそらく判事にとっては、その届けの書類は問題ではなく、彼を出向かせる口実だったのでしょう。ラスコーリニコフは、気づかないうちに、すでに網にかかったようです。
互いに相手の様子を探り合いながら ― 2025-04-23
≪Раскольников сел, не сводя с него глаз.
"В наших краях", извинения в фамильярности, французское словцо "tout court" и проч., и проч., - всё это были признаки характерные. "Он, однако ж, мне обе руки-то протянул, а ни одной ведь не дал, отнял вовремя", - мелькнуло в нём подозрительно. Оба следили друг за другом, но только что взгляды их встречались, оба, с быстротою молнии, отводили их один от другого.≫
<試訳> ラスコーリニコフはポルフィーリィから目を放さずに座った。 “ わざわざこちらへ ” とか、なれなれしさを謝るとか、フランス語で “ tout court ” と言う、などなど、― これはみな独特な徴候だった。“ だがこいつは、僕に両手を差し伸べていながら、片手も握らせずにうまいこと引っ込めやがったな ”、こんな疑念が頭をかすめた。二人は互いに相手の様子を探り合いながら、それでいて視線が合うとすぐさま、稲妻のように素早くお互いから目をそらした。
・ 早くも心理戦が始まっています。ポルフィーリィは判事として正式な形で、すぐ尋問や事情聴取の準備をしてもいいはずですが、そうするつもりは全くない様で、妙に愛想よく饒舌です。
<試訳> ラスコーリニコフはポルフィーリィから目を放さずに座った。 “ わざわざこちらへ ” とか、なれなれしさを謝るとか、フランス語で “ tout court ” と言う、などなど、― これはみな独特な徴候だった。“ だがこいつは、僕に両手を差し伸べていながら、片手も握らせずにうまいこと引っ込めやがったな ”、こんな疑念が頭をかすめた。二人は互いに相手の様子を探り合いながら、それでいて視線が合うとすぐさま、稲妻のように素早くお互いから目をそらした。
・ 早くも心理戦が始まっています。ポルフィーリィは判事として正式な形で、すぐ尋問や事情聴取の準備をしてもいいはずですが、そうするつもりは全くない様で、妙に愛想よく饒舌です。
あなたが来られるとは ― 2025-04-22
≪- А, почтеннейший! Вот и вы... в наших краях.. - начал Порфирий, протянув ему обе руки. - Ну, садитесь-ка, батюшка! Али вы, может, не любите, чтобы вас называли почтеннейшим и... батюшкой, - этак tout court? За фамильярность, пожалуйста, не сочтите... Вот сюда-с, на диванчик.≫
<試訳> 「ああ、大先生! あなたが来られるとは… わざわざこちらへ…」 ポルフィーリィがラスコーリニコフに両手を差し出しながら話し始めた。「さあ、お掛けになって下さい、先生! それともあなたは、大先生とか… 先生と呼ばれるのを好まないかも知れませんな、― つまり、なれなれしいと? どうか、なれなれしいなどとお考えにならんで下さい…。さあ、こちらのソファーへどうぞ」
・ ポリフィーリィがラスコーリニコフを親しげに誘導します。相変わらずへり下った物腰です。それでいて相手に有無を言わせず、自分のペースに乗せてしまうのです。
<試訳> 「ああ、大先生! あなたが来られるとは… わざわざこちらへ…」 ポルフィーリィがラスコーリニコフに両手を差し出しながら話し始めた。「さあ、お掛けになって下さい、先生! それともあなたは、大先生とか… 先生と呼ばれるのを好まないかも知れませんな、― つまり、なれなれしいと? どうか、なれなれしいなどとお考えにならんで下さい…。さあ、こちらのソファーへどうぞ」
・ ポリフィーリィがラスコーリニコフを親しげに誘導します。相変わらずへり下った物腰です。それでいて相手に有無を言わせず、自分のペースに乗せてしまうのです。
何やら狼狽したようだと気づいた ― 2025-04-21
≪Он встретил своего гостя, по-видимому, с самым весёлым и приветливым видом, и только уже несколько минут спустя Раскольников, по некоторым признакам, заметил в нём как бы замешательство, - точно его вдруг сбили с толку или застали на чем-нибудь очень уединённом и скрытном.≫
<試訳> ポルフィーリィ判事は客人を、いかにもとても嬉しそうに愛想よく出迎えた。ほんの数分間してラスコーリニコフは、いくつかの徴候から相手が何やら狼狽したようだと気づいた。まるで不意を打たれて当惑したか、あるいは一人でこっそり何かしていた現場を見つかったような様子だった。
・ ポルフィーリィが、 “ こっそり何かしていた現場を見つかったような様子 ” という描写が、ラスコーリニコフの立場との対比で滑稽な感じです。彼のこのような様子が、緊張して入室したラスコーリニコフを拍子抜けさせます。
<試訳> ポルフィーリィ判事は客人を、いかにもとても嬉しそうに愛想よく出迎えた。ほんの数分間してラスコーリニコフは、いくつかの徴候から相手が何やら狼狽したようだと気づいた。まるで不意を打たれて当惑したか、あるいは一人でこっそり何かしていた現場を見つかったような様子だった。
・ ポルフィーリィが、 “ こっそり何かしていた現場を見つかったような様子 ” という描写が、ラスコーリニコフの立場との対比で滑稽な感じです。彼のこのような様子が、緊張して入室したラスコーリニコフを拍子抜けさせます。
二人きりで差し向かいになった ― 2025-04-20
≪В углу, в задней стене или, лучше сказать, в перегородке была запертая дверь: там далее, за перегородкой, должны были, стало быть, находиться ещё какие-то комнаты. При входе Раскольникова Порфирий Петрович тотчас же притворил дверь, в которую тот вошёл, и они остались наедине.≫
<試訳> 後方の壁、と言うより、仕切りの隅に閉じた戸があった。とすると、その向こうには、さらに何かの部屋が続いている違いなかった。ラスコーリニコフが入室すると、ポルフィーリィ判事はすぐに入った戸を閉めたので、彼等は二人きりで差し向かいになった。
・ 判事が戸口まで来てラスコーリニコフを招き入れて自分で戸を閉めたのは、親しみを表す彼らしいところです。そしたまた、この時点でもう主導権を握った感じもします。
<試訳> 後方の壁、と言うより、仕切りの隅に閉じた戸があった。とすると、その向こうには、さらに何かの部屋が続いている違いなかった。ラスコーリニコフが入室すると、ポルフィーリィ判事はすぐに入った戸を閉めたので、彼等は二人きりで差し向かいになった。
・ 判事が戸口まで来てラスコーリニコフを招き入れて自分で戸を閉めたのは、親しみを表す彼らしいところです。そしたまた、この時点でもう主導権を握った感じもします。
磨きぬかれた堅木材の官給品 ― 2025-04-19
≪Оказалось, что в эту минуту Порфирий Петович был у себя в кабинете один. Кабинет его была комната ни большая, ни маленькая; стояли в ней: большой письменный стол перед диваном, обитым клеенкой, бюро, шкаф в углу и несколько стульев - всё казённой мебели, из жёлтого отполированного дерева.≫
<試訳> ラスコーリニコフが入った時、執務室にはポルフィーリィ判事が一人きりだった。彼の部屋は大きくも小さくもなかった。油布張りのソファーの前に大きな事務机が置かれていて、隅には書記机と書棚、そして数脚の椅子があった。それらは全て磨きぬかれた堅木材の官給品だった。
・ 判事の部屋の様子が描写されます。取り立てて変わったところはなく、ソファーがあるところからすると、厳しく尋問するような場所ではないようです。
<試訳> ラスコーリニコフが入った時、執務室にはポルフィーリィ判事が一人きりだった。彼の部屋は大きくも小さくもなかった。油布張りのソファーの前に大きな事務机が置かれていて、隅には書記机と書棚、そして数脚の椅子があった。それらは全て磨きぬかれた堅木材の官給品だった。
・ 判事の部屋の様子が描写されます。取り立てて変わったところはなく、ソファーがあるところからすると、厳しく尋問するような場所ではないようです。
自分の性格を抑えようと決意した ― 2025-04-18
≪он приготовился войти с холодным и дерзким видом и дал себе слово как можно больше молчать, вглядываться и вслушиваться и, хоть на этот раз по крайней мере, во что бы то ни стало, победить болезненно раздраженную натуру свою. В это самое время его позвали к Порфмирию Петровичу.≫
<試訳> 彼は冷静で大胆な顔つきで入室しようと心構え、できるだけ黙ってよく見つめて耳を澄まし、せめて今回だけは何があろうと病的に苛立ちやすい自分の性格を抑えようと決意した。ポルフィーリィ判事のj部屋に呼ばれたのは、ちょうどその時だった。
・ やっと判事との面会です。召喚されたわけではなく自発的な訪問なのですが、負い目のある彼にとっては敵地に乗り込む気持でしょう。挑発に乗らずに落着いて対処しようという彼の決意が守られるのか、興味深い対面です。
<試訳> 彼は冷静で大胆な顔つきで入室しようと心構え、できるだけ黙ってよく見つめて耳を澄まし、せめて今回だけは何があろうと病的に苛立ちやすい自分の性格を抑えようと決意した。ポルフィーリィ判事のj部屋に呼ばれたのは、ちょうどその時だった。
・ やっと判事との面会です。召喚されたわけではなく自発的な訪問なのですが、負い目のある彼にとっては敵地に乗り込む気持でしょう。挑発に乗らずに落着いて対処しようという彼の決意が守られるのか、興味深い対面です。
本心をさらけ出してしまうのではないか ― 2025-04-17
≪Всего ужаснее было для него встретиться с этим человеком опять: он ненавидел его без меры, бесконечно, и даже боялся своею ненавистью как-нибудь обнаружить себя. И так сильно было его негодование, что тотчас же прекратило дрожь;≫
<試訳> ラスコーリニコフにとって何よりも恐ろしいのは再びこの男に会う事だった。彼はポリフィーリィを限りなく、極めて憎悪していた。そして、その憎しみのために、どうかすると自分の本心をさらけ出してしまうのではないかと恐れた。あまりの憎悪の激しさに、咄嗟に震えが止まったほどだった。
・ ラスコーリニコフは前回、判事の巧妙な尋問の手口を経験し、口惜しい思いをしています。それが憎しみの感情にもなったのでしょう。こうして待たせるのも、彼を苛立たせて平常心を失わせるための判事の策なのかも知れないと勘ぐってしまいます。
<試訳> ラスコーリニコフにとって何よりも恐ろしいのは再びこの男に会う事だった。彼はポリフィーリィを限りなく、極めて憎悪していた。そして、その憎しみのために、どうかすると自分の本心をさらけ出してしまうのではないかと恐れた。あまりの憎悪の激しさに、咄嗟に震えが止まったほどだった。
・ ラスコーリニコフは前回、判事の巧妙な尋問の手口を経験し、口惜しい思いをしています。それが憎しみの感情にもなったのでしょう。こうして待たせるのも、彼を苛立たせて平常心を失わせるための判事の策なのかも知れないと勘ぐってしまいます。
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