正当な疑念を抱かざるを得なかった ― 2026-04-19
≪Согласитесь сами, что припоминая ваше смущение, торопливость уйти и то, что вы держали руки, некоторое время, на столе; взяв, наконец, в соображение общественное положение ваше и сопряжённые с ним привычки, я, так сказать, с ужасом, и даже против воли моей, принуждён был остановиться на подозрении, - конечно, жестоком, но - справедливом-с!≫
<試訳> 「ご自身もお認めになると思いますが、あなたがそわそわして帰りを急がれていた事や、ある時間、テーブルの上に両手を置かれていたのを思い出し、結局のところ、あなたの社会的境遇、それに関連した習慣などを勘案しますと、私としてはそら怖ろしい気持で、全く不本意ながら一つの懸念 ― もちろん、残酷なものではありますが ― 正当な疑念を抱かざるを得なかったのであります!」
・ まるで裁判の論告のようにルージンは勢いづいて話続けます。ソーニャへの嫌疑がいかに根拠があるかを、面と向かって彼女に伝え、同時に参会者全員にも知ってもらおうとしています。自身に満ちた弁舌には、反論を許さない響きがあります。
<試訳> 「ご自身もお認めになると思いますが、あなたがそわそわして帰りを急がれていた事や、ある時間、テーブルの上に両手を置かれていたのを思い出し、結局のところ、あなたの社会的境遇、それに関連した習慣などを勘案しますと、私としてはそら怖ろしい気持で、全く不本意ながら一つの懸念 ― もちろん、残酷なものではありますが ― 正当な疑念を抱かざるを得なかったのであります!」
・ まるで裁判の論告のようにルージンは勢いづいて話続けます。ソーニャへの嫌疑がいかに根拠があるかを、面と向かって彼女に伝え、同時に参会者全員にも知ってもらおうとしています。自身に満ちた弁舌には、反論を許さない響きがあります。
百ルーブリ札が一枚なくなっていた ― 2026-04-18
≪К удилвению моему, одного сторублевого билета, в числе прочих, не оказалось. Извольте же рассудить: заподозрить Андрея Семёновича я уж никак не могу-с; даже предположения стыжусь. Ошибиться в счёте я тоже не мог, потому что, за минуту перед вашим приходом, окончив все счёты, я нашёл итог верным.≫
<試訳> 「驚いたことに、その金の中の百ルーブリ札が一枚なくなっていたのです。考えてみて下さい、レベジャートニコフ君を疑う事など私にはとてもできません。考えるだけでも恥ずかしい事です。私が数え間違ったという事もあり得ません。なぜなら、あなたがおいでになった1分前に全部数え終わっていて、私は総額が間違いないのを確かめたのですからね」
・ ルージンンの説明の組み立て方は、さすが弁護士だと思わせます。順を追って可能性を排除しながら、ソーニャに対する疑いへと絞り込んでいきます。
<試訳> 「驚いたことに、その金の中の百ルーブリ札が一枚なくなっていたのです。考えてみて下さい、レベジャートニコフ君を疑う事など私にはとてもできません。考えるだけでも恥ずかしい事です。私が数え間違ったという事もあり得ません。なぜなら、あなたがおいでになった1分前に全部数え終わっていて、私は総額が間違いないのを確かめたのですからね」
・ ルージンンの説明の組み立て方は、さすが弁護士だと思わせます。順を追って可能性を排除しながら、ソーニャに対する疑いへと絞り込んでいきます。
やはりあなたはそわそわしていました ― 2026-04-17
≪Всё это вилел Андрей Семёнович. Затем я вас проводил до дверей, - всё в том же, с вашей стороны, смущении, - после чего, оставшись наедине с Андреем Семёновичем и переговорив с ним минут около десяти, Андрей Семёнович вышел, я же снова обратился к столу, с лежавшими на нём деньгами, с целью, сосчитав их, отложить, как и предолагал я прежде, особо.≫
<試訳> 「この事は、全てレベジャートニコフ君が見ていました。それから私はあなたを戸口までお送りしました、― その時も、やはりあなたはそわそわしていました ― その後は、レベジャートニコフ君と二人きりで残り、10分ほど話し合って、彼が出て行ったので私はまたテーブルに戻りました。金を数えて、前から考えていたように、それを別にしてしまっておくつもりだったのです」
・ ルージンは、ソーニャが終始そわそわしていた事を強調します。彼女としては、呼び出された目的が分からず、初めて会ったルージンの言葉一つ一つを緊張して聞き取り、また、思いがけない提案もあって、その度に心が揺れて落ち着かない状態だったのでしょう。
<試訳> 「この事は、全てレベジャートニコフ君が見ていました。それから私はあなたを戸口までお送りしました、― その時も、やはりあなたはそわそわしていました ― その後は、レベジャートニコフ君と二人きりで残り、10分ほど話し合って、彼が出て行ったので私はまたテーブルに戻りました。金を数えて、前から考えていたように、それを別にしてしまっておくつもりだったのです」
・ ルージンは、ソーニャが終始そわそわしていた事を強調します。彼女としては、呼び出された目的が分からず、初めて会ったルージンの言葉一つ一つを緊張して聞き取り、また、思いがけない提案もあって、その度に心が揺れて落ち着かない状態だったのでしょう。
感謝して涙ぐまれたほど ― 2026-04-16
≪Вы меня благодарили и даже прослезились (я рассказываю всё так, как было, чтобы, по-первых, напомнить вам, а во-вторых, показать вам, что из памяти моей не изгладилась ни малейшая черта). Затем я взял со стола десятирублевый кредитный билет и подал вам, от своего имени, для интересов вашей родственницы и в видах первого вспоможения.≫
<試訳> 「あなたは感謝して涙ぐまれたほどでした。( 私が全てをありのままお話しするのは、第一に、あなたに思い起こしてもらうためで、第二に、私の記憶からどんな些細な事実も消えていない事をお示しするためです )。それから私は、テーブルの上から10ルーブり紙幣を取ってあなたに差し上げましたな、それは私からあなたのお義母様への、さしあたっての援助のつもりでした」
・ ルージンは記憶を辿りながら、ソーニャにと言うよりも、成り行きを見守っている会場の皆に聞かせるように経緯を語ります。事実に違いないのでソーニャは黙って聞いている他なく、すっかりルージンのペースです。
<試訳> 「あなたは感謝して涙ぐまれたほどでした。( 私が全てをありのままお話しするのは、第一に、あなたに思い起こしてもらうためで、第二に、私の記憶からどんな些細な事実も消えていない事をお示しするためです )。それから私は、テーブルの上から10ルーブり紙幣を取ってあなたに差し上げましたな、それは私からあなたのお義母様への、さしあたっての援助のつもりでした」
・ ルージンは記憶を辿りながら、ソーニャにと言うよりも、成り行きを見守っている会場の皆に聞かせるように経緯を語ります。事実に違いないのでソーニャは黙って聞いている他なく、すっかりルージンのペースです。
否定されないでしょうね ― 2026-04-15
≪Вероятно, вы сами, мадемуазель, не откажетесь подтвердить и заявить, что призывал я вас, через Андрея Семёновича, единственно для того только, чтобы переговорить с вами о сиротском и беспомощном положении вашей родственницы, Катерины Ивановны (к которой я не мог прийти на поминки), и о том, как бы полезно было устроить в её пользу что-нибудь вроде подписки, лотереи или подобного.≫
<試訳> 「お嬢さん、私があなたのお義母様のカテリーナさんの身寄りもなく頼る人もない状況についてご相談し、あの方のために募金や富くじなど、何かやっては、とお話しするだけのために ( 私は追善供養に出席できませんでしたので )、レベジャートニコフ君を通じてあなたをお呼びした事を、恐らく、否定されないでしょうね」
・ その時は、ルージンの思いがけない助力の申し出に、緊張していたソーニャもほっとしました。でも、今は厳しく詰問されて、蒼白になって震える彼女を想像します。
<試訳> 「お嬢さん、私があなたのお義母様のカテリーナさんの身寄りもなく頼る人もない状況についてご相談し、あの方のために募金や富くじなど、何かやっては、とお話しするだけのために ( 私は追善供養に出席できませんでしたので )、レベジャートニコフ君を通じてあなたをお呼びした事を、恐らく、否定されないでしょうね」
・ その時は、ルージンの思いがけない助力の申し出に、緊張していたソーニャもほっとしました。でも、今は厳しく詰問されて、蒼白になって震える彼女を想像します。
非常にどぎまぎしていて ― 2026-04-14
≪На столе оставалось около пятисот рублей, кредитными билетами, и между ними три билета, во сто рублей каждый. В эту минуту прибыли вы (по моему зову) - и всё время у меня пребывали потом в чрезвычайном смущении, так что даже три раза, среди разговора, вставали и спешили почему-то уйти, хотя разговор наш ещё не был окончен. Андрей Семёнович может всё это свидетельствовать.≫
<試訳> 「テーブルの上には紙幣でおよそ5百ルーブリが残っていて、その中に百ルーブリ幣が3枚入っていたのです。ちょうどその時あなたが来られた(私がお呼びしたので )。そして、あなたは私のところにおられる間じゅう、ずっと非常にどぎまぎしていて、3回も会話の途中で立ち上がって何故か急いで出て行こうとなさった、私達の会話がまだ終わっていないのにです。レベジャートニコフ君がこの全てを証言できます」
・ 確かに先ほどの状況は彼の言う通りでした。ソーニャは見知らぬ紳士然としたルージンと対面しているだけで、終始緊張しして落ち着かない様子でした。呼ばれた目的もはっきりしない不安もあったでしょう。彼の用件が一つ済む毎に、すぐ帰ろうとしました。
<試訳> 「テーブルの上には紙幣でおよそ5百ルーブリが残っていて、その中に百ルーブリ幣が3枚入っていたのです。ちょうどその時あなたが来られた(私がお呼びしたので )。そして、あなたは私のところにおられる間じゅう、ずっと非常にどぎまぎしていて、3回も会話の途中で立ち上がって何故か急いで出て行こうとなさった、私達の会話がまだ終わっていないのにです。レベジャートニコフ君がこの全てを証言できます」
・ 確かに先ほどの状況は彼の言う通りでした。ソーニャは見知らぬ紳士然としたルージンと対面しているだけで、終始緊張しして落ち着かない様子でした。呼ばれた目的もはっきりしない不安もあったでしょう。彼の用件が一つ済む毎に、すぐ帰ろうとしました。
金を勘定し始めて ― 2026-04-13
≪Я это знаю-с. Утром сегодня я разменял, для своих надобностей, несколько пятипрочентных билетов на сумму, номинально, в три тчсячи рублей. Расчёт у меня записан с бумажнике. Придя домой, я - свидетель тому Андрей Семёнович - стал считать деньги и, сосчитав две тысячи триста рублей, спрятал их в бумажник в боковой карман сюртука.≫
<試訳> 「私はそれを承知しています。今朝、私は必要になったため5分利付債券を数枚、額面で3千ルーブリ換金しました。計算書は札入れにしまってあります。帰宅して ― これはレベジャートニコフ君が証人ですが ― 金を勘定し始めて2千3百ルーブリとなったところで、札入れにしまって、フロックコートの脇ポケットに入れたのです」
・ ルージンが手持ちの金額について、朝からの経緯を話し始めます。自分がその都度、総額を把握していた事を強調しています。
<試訳> 「私はそれを承知しています。今朝、私は必要になったため5分利付債券を数枚、額面で3千ルーブリ換金しました。計算書は札入れにしまってあります。帰宅して ― これはレベジャートニコフ君が証人ですが ― 金を勘定し始めて2千3百ルーブリとなったところで、札入れにしまって、フロックコートの脇ポケットに入れたのです」
・ ルージンが手持ちの金額について、朝からの経緯を話し始めます。自分がその都度、総額を把握していた事を強調しています。
知らないですと ― 2026-04-12
≪- Нет? Не знаете? - переспросил Лужин и ещё несколько секунд помолчал. - Подумайте, мадемуазель, - начал он строго, но всё ещё как будто увещевая, - обсудите, я согласен вам дать ещё время на размышление. Извольте видеть-с: елси б я не был так уверен, то уж, разумеется, при моей опытности, не рискнул бы так прямо вас обвинить; ибо за подобное, прямое и гласное, но ложное или даже только ошибочное обвинение я, в некотором смысле, сам отвечаю.≫
<試訳> 「知らない? 知らないですと?」 ルージンが問い返して、さらに何秒か黙った。「よくお考えになって、お嬢さん」 彼は厳しく、しかし依然として諭すような口調で言い始めた。「思い返してごらんなさい、お考えになる時間を差し上げてもよろしいです。いいですか、分りますか。わたしも経験のある人間ですから、かなりの確信がなければ、このようにあなたにはっきりと罪を着せるような危険は犯しませんよ。なぜなら、このように真正面から公然とあなたに無実の罪を着せるならば、たとえそれがほんの少しの間違いであっても、ある意味において、私は自ら責任を追わなければならんのですからね」
・ ルージンは有無を言わせない確信に満ちた口調でソーニャに迫ります。彼の本業は弁護士で雄弁ですから、皆の前で意見を主張するのは得意です。ソーニャがたとえ反駁しようとしても相手にならないでしょう。
<試訳> 「知らない? 知らないですと?」 ルージンが問い返して、さらに何秒か黙った。「よくお考えになって、お嬢さん」 彼は厳しく、しかし依然として諭すような口調で言い始めた。「思い返してごらんなさい、お考えになる時間を差し上げてもよろしいです。いいですか、分りますか。わたしも経験のある人間ですから、かなりの確信がなければ、このようにあなたにはっきりと罪を着せるような危険は犯しませんよ。なぜなら、このように真正面から公然とあなたに無実の罪を着せるならば、たとえそれがほんの少しの間違いであっても、ある意味において、私は自ら責任を追わなければならんのですからね」
・ ルージンは有無を言わせない確信に満ちた口調でソーニャに迫ります。彼の本業は弁護士で雄弁ですから、皆の前で意見を主張するのは得意です。ソーニャがたとえ反駁しようとしても相手にならないでしょう。
私は何も知らないんです ― 2026-04-11
≪Совершенное молчание воцарилось в комнате. Даже плакавшие дети затихли. Соня стояла мёртво-бледная, смотрела на Лужина и ничего не могла отвечать. Она как будто ещё и не понимала. Прошло несколько секунд.
- Ну-с, так как же-с? - спросил Лужин, пристально смотря на неё.
- Я не знаю... Я ничего не знаю... слабым голосом проговорила наконец Соня≫
<試訳> 完全な沈黙が部屋をおおった。泣いていた子供達さえ静かになった。死人のように青白くなったソーニャは、ルージンを見つめて何も答える事ができなかった。彼女はまだ何も理解できないようだった。数秒間が過ぎた。
「さあ、いったいどうしましたか?」 彼女を見据えてルージンが尋ねた。
「知りません…。私は何も知らないんです… 消え入るような声でやっとソーニャが言った」
・ ルージンは厳しく問い質しますが、ソーニャは身に覚えがないのでしょう、知らないとしか答えようがありません。彼女がルージンやレベジャートニコフの見ている前でそれを机上から持ち去ったとは考え難いのですが、ルージンは真剣です。
以前書きましたが、当時の100ルーブルは10万円~27万円と諸説あります。いずれにしても庶民は目にする事もなかった相当の高額紙幣です。
- Ну-с, так как же-с? - спросил Лужин, пристально смотря на неё.
- Я не знаю... Я ничего не знаю... слабым голосом проговорила наконец Соня≫
<試訳> 完全な沈黙が部屋をおおった。泣いていた子供達さえ静かになった。死人のように青白くなったソーニャは、ルージンを見つめて何も答える事ができなかった。彼女はまだ何も理解できないようだった。数秒間が過ぎた。
「さあ、いったいどうしましたか?」 彼女を見据えてルージンが尋ねた。
「知りません…。私は何も知らないんです… 消え入るような声でやっとソーニャが言った」
・ ルージンは厳しく問い質しますが、ソーニャは身に覚えがないのでしょう、知らないとしか答えようがありません。彼女がルージンやレベジャートニコフの見ている前でそれを机上から持ち去ったとは考え難いのですが、ルージンは真剣です。
以前書きましたが、当時の100ルーブルは10万円~27万円と諸説あります。いずれにしても庶民は目にする事もなかった相当の高額紙幣です。
極めて厳しい手段に訴えなければなりません ― 2026-04-10
≪Если каким бы то ни было образом вы знаете и укажете нам, где он теперь находится, то, уверяю вас честным словом, и беру всех в свидетели, что дело тем только и кончиться. В противном же случае принуждён буду обратиться к мерам весьма серьёзным, тогда... пеняйте уже на себя-с!≫
<試訳> 「もし何らかの形であなたがご存じで、その紙幣が今どこにあるのかを教えて下さるなら、誓ってあなたにお約束し、ここにおられる皆さんを証人として申しますが、事はそれをもって終わりとします。ただしそうでない場合は、極めて厳しい手段に訴えなければなりませんが、そうなったなら… 自業自得ですよ!」
・ ルージンは先ほどソーニャが退室した直後に机上の百ルーブル札が消えた、と彼女に嫌疑をかけます。彼と対面していた時に、確かにそれは彼女の眼前に置いてありました。ルージンの詰め寄り方は厳しく、かなり確信がありそうです。
<試訳> 「もし何らかの形であなたがご存じで、その紙幣が今どこにあるのかを教えて下さるなら、誓ってあなたにお約束し、ここにおられる皆さんを証人として申しますが、事はそれをもって終わりとします。ただしそうでない場合は、極めて厳しい手段に訴えなければなりませんが、そうなったなら… 自業自得ですよ!」
・ ルージンは先ほどソーニャが退室した直後に机上の百ルーブル札が消えた、と彼女に嫌疑をかけます。彼と対面していた時に、確かにそれは彼女の眼前に置いてありました。ルージンの詰め寄り方は厳しく、かなり確信がありそうです。










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