力のかぎり彼女を抱きしめた ― 2026-04-26
≪- Ка-а-к! - вскрикнула вдруг, опомнившись, Катерина Ивановна и - точно сорвалась - бросилась к Лужину, - как! Вы её в покраже обвиняете? Это Соню-то? Ах, подлецы подлецы! - И бросившись к Соне, она, как в тисках, обняла её иссохшими руками.
- Соня! Как ты смела брать от него десять рублей! О, глупая! Подай сюда! Подай сейчас эти десять рублей - вот!≫
<試訳> 「なんーでーすとー」 不意に我に返ったカテリーナが叫び声を上げ、まるではじかれたようにルージンに飛びかかった。「なんて事を! この娘に盗みの疑いをかけるなんて? このソーニャに? ああ、ひどい、ひどい人達!」 そう言って、ソーニャに駆け寄ると、カテリーナはやせ細った両手で力のかぎり彼女を抱きしめた。
「ソーニャ!どうしてこんな男から十ルーブリなんか貰ってきたんだい! ああ、ばかだねえ! ここに頂戴! さあその十ルーブリを、よこして、ほら!」
・ 興奮状態で我を忘れていたカテリーナは、それまで事情を呑み込めずに傍観していたのですが、不意に正気に戻ります。ソーニャをしっかり抱きしめる姿は、雛をかばう親鳥の様です。カテリーナはつい先ほどまで、ルージンが年金の件で奔走してくれると思いこんで、“ 尊敬すべき、立派な方 ” と言っていましたが、彼がソーニャを盗みの疑いで追及しているのを見て、無条件にソーニャを守ります。
- Соня! Как ты смела брать от него десять рублей! О, глупая! Подай сюда! Подай сейчас эти десять рублей - вот!≫
<試訳> 「なんーでーすとー」 不意に我に返ったカテリーナが叫び声を上げ、まるではじかれたようにルージンに飛びかかった。「なんて事を! この娘に盗みの疑いをかけるなんて? このソーニャに? ああ、ひどい、ひどい人達!」 そう言って、ソーニャに駆け寄ると、カテリーナはやせ細った両手で力のかぎり彼女を抱きしめた。
「ソーニャ!どうしてこんな男から十ルーブリなんか貰ってきたんだい! ああ、ばかだねえ! ここに頂戴! さあその十ルーブリを、よこして、ほら!」
・ 興奮状態で我を忘れていたカテリーナは、それまで事情を呑み込めずに傍観していたのですが、不意に正気に戻ります。ソーニャをしっかり抱きしめる姿は、雛をかばう親鳥の様です。カテリーナはつい先ほどまで、ルージンが年金の件で奔走してくれると思いこんで、“ 尊敬すべき、立派な方 ” と言っていましたが、彼がソーニャを盗みの疑いで追及しているのを見て、無条件にソーニャを守ります。
諭すゾシマ長老(2) ― 2009-12-31
罪を悔いる農婦に長老は救いの言葉を投げかける。
≪Ничего не бойся, и никогда не бойся, и не тоскуй. Только бы покояние не оскудевало в тебе – и всё бог простит. Да и греха такого нет и не может быть на всей земле, какого бы не простил господь воистину кающемся. Да и совершить не может, совсем, такого греха великого человек, который бы истощил бесконечную божью любовь. ≫
<試訳> なんにも怖がることはない、いつだって怖がることも滅入ることもないんだよ。ただお前さんが悔悟の気持ちが弱まらぬようにさえしておれば、神様はすべてを赦してくれる。全くこの世に心底後悔している者を神様が赦さないようなそんな罪などあるはずがないのさ。限りない神の愛を使い尽くしてしまうほどの大罪など人間が犯せるはずがないのだよ。
虐げられ貧しさゆえの罪を悔いる農婦に、優しい言葉でその重い苦しみを解きます。神様の赦しとありますが、信仰を別にしても、過ち多き者にとって何と慈愛に満ちた慰めの言葉でしょう。
≪Ничего не бойся, и никогда не бойся, и не тоскуй. Только бы покояние не оскудевало в тебе – и всё бог простит. Да и греха такого нет и не может быть на всей земле, какого бы не простил господь воистину кающемся. Да и совершить не может, совсем, такого греха великого человек, который бы истощил бесконечную божью любовь. ≫
<試訳> なんにも怖がることはない、いつだって怖がることも滅入ることもないんだよ。ただお前さんが悔悟の気持ちが弱まらぬようにさえしておれば、神様はすべてを赦してくれる。全くこの世に心底後悔している者を神様が赦さないようなそんな罪などあるはずがないのさ。限りない神の愛を使い尽くしてしまうほどの大罪など人間が犯せるはずがないのだよ。
虐げられ貧しさゆえの罪を悔いる農婦に、優しい言葉でその重い苦しみを解きます。神様の赦しとありますが、信仰を別にしても、過ち多き者にとって何と慈愛に満ちた慰めの言葉でしょう。
諭すゾシマ長老(1) ― 2009-12-30
救いを求めてゾシマ長老のもとに問題を抱えてたくさんの信者が押し寄せる。彼は亡くした息子を想い悲嘆にくれる母親に諭す。
≪И таковой вам матерям предел на земле положен. И не утешайся...и пдачь, только кажды раз, когда платешь, вспоминай неуклонно, что сыночек твой – есть единый от ангулов божих, оттуда на тебя смотрит и видит тебя и на тои слезы радуется и на них господу богу указывает. И надолго ещё тебе сего великого материнского плача будет, но обратится он под конец тебе в тихую радость, и будет горькие слезы твои лишь слезами тихого умиления и сердечного очщения, от грехов спосающего. ≫
<試訳> あんたがた母親には、この世に限界がもうけられているんだよ。慰めを求めなさんな…そして泣くことだ。ただ泣くときにはその度にいつも思い出すんだよ、あんたの息子が天使の一人で、そこからあんたを見つめていて、あんたの涙を見て喜んでいて神様にそれを教えていることを。そしてあんたにとって母親の深い嘆きは永いこと続くだろうが、だがなそれはついにはあんたにとって静かな喜びに変るんだよ、そして、あんたの苦い涙は、罪を清めてくれる静かな感動と心の浄化の涙になるんだよ。
-母親には、この世に限界が・・・-適切に訳せないのですが、母親が死んだ息子に一目会いたいと切望するのに応じています。「慰めを求めなさんな」と言いながら、それに続く彼の言葉はなんという慰めになっていることでしょう。
≪И таковой вам матерям предел на земле положен. И не утешайся...и пдачь, только кажды раз, когда платешь, вспоминай неуклонно, что сыночек твой – есть единый от ангулов божих, оттуда на тебя смотрит и видит тебя и на тои слезы радуется и на них господу богу указывает. И надолго ещё тебе сего великого материнского плача будет, но обратится он под конец тебе в тихую радость, и будет горькие слезы твои лишь слезами тихого умиления и сердечного очщения, от грехов спосающего. ≫
<試訳> あんたがた母親には、この世に限界がもうけられているんだよ。慰めを求めなさんな…そして泣くことだ。ただ泣くときにはその度にいつも思い出すんだよ、あんたの息子が天使の一人で、そこからあんたを見つめていて、あんたの涙を見て喜んでいて神様にそれを教えていることを。そしてあんたにとって母親の深い嘆きは永いこと続くだろうが、だがなそれはついにはあんたにとって静かな喜びに変るんだよ、そして、あんたの苦い涙は、罪を清めてくれる静かな感動と心の浄化の涙になるんだよ。
-母親には、この世に限界が・・・-適切に訳せないのですが、母親が死んだ息子に一目会いたいと切望するのに応じています。「慰めを求めなさんな」と言いながら、それに続く彼の言葉はなんという慰めになっていることでしょう。
現実主義者の信仰と奇跡 ― 2009-12-26
信仰に対する作者の考え方が述べられる。
≪В реалисте вера не от чуда рождаеться, а чуда от веры. ≫
<試訳> 現実主義者の場合、奇跡から信仰が生じるのではなく、信仰から奇跡が生まれるのだ。
一般論として述べていますが、少し前で作者が「アリョーシャは誰にも増して現実主義者だったような気がする」と書いていますから、これを受けてアリョーシャのことをいっているのでしょう。
信仰の問題、とりわけ神の存在についてはフョードルをはじめカラマーゾフ家の人々が真剣に悩むテーマですが、歴史的、文化的な背景の違いを感じます。
≪В реалисте вера не от чуда рождаеться, а чуда от веры. ≫
<試訳> 現実主義者の場合、奇跡から信仰が生じるのではなく、信仰から奇跡が生まれるのだ。
一般論として述べていますが、少し前で作者が「アリョーシャは誰にも増して現実主義者だったような気がする」と書いていますから、これを受けてアリョーシャのことをいっているのでしょう。
信仰の問題、とりわけ神の存在についてはフョードルをはじめカラマーゾフ家の人々が真剣に悩むテーマですが、歴史的、文化的な背景の違いを感じます。
買わざるを得ない本 ― 2009-12-25
父親フョードルの情 ― 2009-12-24
フョードルは長広舌のあとアリョーシャの修道院入りを認める。
≪хоть до тебя как до ангела ничего не косаетья.... Ну авось и там до тебя ничего не косаетья, вот ведь я почему и дозволяю тебе, что на последнее надеюсь. Ум-то у тебя не чорт сьел. Погоришь и погаснешь, вылечишься и назад придёшь. А я тебя буду ждать: ведь я чувствую же, что ты единственный челобек на земле, который меня не осудил・・・.≫
<試訳> もっとも、天使に触れないように、おまえには何物も触れないからなあ・・・。そうだとも、きっとあそこでだって、おまえに誰一人触れはせん、そのことを当てにするからこそ認めるというわけだ。おまえの分別は悪魔に食われとらん。燃え盛って燃え尽きて迷いが覚めたら戻って来い。わしはおまえを待っとるよ。おまえはわしを責めなかった地上でたった一人の人間だと感じてるんだ・・・。
許可を求める息子アリョーシャを前に、父はあれやこれやと自説を開陳し続けます。この間、息子は一言も口を挟まないで聞いています。大審問官の場面をちょっと想起します。とうとう父は最後にすすり泣きさえします。この場面は、
≪Он был сентиментален. Он был зол и сентиментален.≫
<彼は、涙もろい男だった。彼は悪漢であったが、涙もろい男だった>で結ばれています。無垢なるもの、息子との別れに際してフョードルが見せる真情ではないでしょうか。
≪хоть до тебя как до ангела ничего не косаетья.... Ну авось и там до тебя ничего не косаетья, вот ведь я почему и дозволяю тебе, что на последнее надеюсь. Ум-то у тебя не чорт сьел. Погоришь и погаснешь, вылечишься и назад придёшь. А я тебя буду ждать: ведь я чувствую же, что ты единственный челобек на земле, который меня не осудил・・・.≫
<試訳> もっとも、天使に触れないように、おまえには何物も触れないからなあ・・・。そうだとも、きっとあそこでだって、おまえに誰一人触れはせん、そのことを当てにするからこそ認めるというわけだ。おまえの分別は悪魔に食われとらん。燃え盛って燃え尽きて迷いが覚めたら戻って来い。わしはおまえを待っとるよ。おまえはわしを責めなかった地上でたった一人の人間だと感じてるんだ・・・。
許可を求める息子アリョーシャを前に、父はあれやこれやと自説を開陳し続けます。この間、息子は一言も口を挟まないで聞いています。大審問官の場面をちょっと想起します。とうとう父は最後にすすり泣きさえします。この場面は、
≪Он был сентиментален. Он был зол и сентиментален.≫
<彼は、涙もろい男だった。彼は悪漢であったが、涙もろい男だった>で結ばれています。無垢なるもの、息子との別れに際してフョードルが見せる真情ではないでしょうか。
フョードルの煩悶(3) ― 2009-12-23
アリョーシャを前に、フョードルは悪魔の鉤について持論を展開する。
≪А коли нет крючьев, стало быть и всё по боку, значит опять невероятно: кто же меня тогда крючьями-то потащит, потому что если уж меня не потащит то что ж тогда будет, где же правда на свете? Il faudrait les inventer, эти крючья, для меня нарочно, для меня одного, потому что если бы ты знал, Алёша, какой я срамник!≫
<試訳> もし鉤がないとなると、全部パァってことになる。ということは、またうそのような話で、それじゃあ、誰もわしを鉤で引きずらんてことになる。
わしを引きずらねぇなんてことがあったら、いったいこの世のどこに真実があるってんだ。何としても鉤をこさえなきゃならんのだよ、わしのために、わしだけのためにな。なぜかって、アリョーシャ、おまえがわしがどんな恥知らずな人間かわかってくれたらなぁ。
フョードルは自堕落で酒好きで破廉恥ですが、論旨は一貫していると思います。興奮してまくしたてる場面でも、内容には彼の独自の哲学があり、明晰さを感じさえします。ここでは、悪魔の鉤を主題にしてはいますが、実はその裏返しとしての神の存在についての自問自答なのではないでしょうか。
≪А коли нет крючьев, стало быть и всё по боку, значит опять невероятно: кто же меня тогда крючьями-то потащит, потому что если уж меня не потащит то что ж тогда будет, где же правда на свете? Il faudrait les inventer, эти крючья, для меня нарочно, для меня одного, потому что если бы ты знал, Алёша, какой я срамник!≫
<試訳> もし鉤がないとなると、全部パァってことになる。ということは、またうそのような話で、それじゃあ、誰もわしを鉤で引きずらんてことになる。
わしを引きずらねぇなんてことがあったら、いったいこの世のどこに真実があるってんだ。何としても鉤をこさえなきゃならんのだよ、わしのために、わしだけのためにな。なぜかって、アリョーシャ、おまえがわしがどんな恥知らずな人間かわかってくれたらなぁ。
フョードルは自堕落で酒好きで破廉恥ですが、論旨は一貫していると思います。興奮してまくしたてる場面でも、内容には彼の独自の哲学があり、明晰さを感じさえします。ここでは、悪魔の鉤を主題にしてはいますが、実はその裏返しとしての神の存在についての自問自答なのではないでしょうか。
フョードルの煩悶(2) ― 2009-12-22
アリョーシャの修道院入りの願いに、混乱しながらフョードルが自分自身の不安を語る。
≪Ведь невозможно же, думаю, чтобы черти меня крючьями позабыли стащить к себе, когда я помру. ≫
<試訳> わしが死ぬ時に、悪魔たちがわしを鉤で引きずりだすのを忘れるなんてことは、ありえんもんかと考えるんだが。
修道院に対する不信を言いながら、ここにいるよりはいいと息子の願いに応えようとする父親の葛藤が饒舌に語られます。堕落した自身の死後について自問自答の形で息子に聞かせる姿に寂しさがあります。
≪Ведь невозможно же, думаю, чтобы черти меня крючьями позабыли стащить к себе, когда я помру. ≫
<試訳> わしが死ぬ時に、悪魔たちがわしを鉤で引きずりだすのを忘れるなんてことは、ありえんもんかと考えるんだが。
修道院に対する不信を言いながら、ここにいるよりはいいと息子の願いに応えようとする父親の葛藤が饒舌に語られます。堕落した自身の死後について自問自答の形で息子に聞かせる姿に寂しさがあります。
アリョーシャの追憶(2) ― 2009-12-17
聖像の前で母に抱かれた幼子、アリョーシャの生涯忘れえぬ情景。
≪Он запомнил один вечер, летний, тихий, отворенное окно, косые лучи заходящего солнча (косые-то лучи и запомнились всего более), в комнате в углу образ пред ним заженную лампочдку, ≫
<試訳> 彼は覚えている、ある夏の日の静かな夕方、開いた窓、斜めに差した落日の光を(斜めに差した光をなぜかよく覚えている)、部屋の一隅の聖像、その前に灯っていた燈明を、
作者の作品には自然そのものの描写はあまり多くない。清濁を合わせた人間そのものへの愛おしさを根底にした心理描写や独白が多いと思う。
この情景描写もアリョーシャの追想という形で、誰しも思い当たるようなセピア色の原風景として描かれ、短い表現ながら心に滲みる。
≪Он запомнил один вечер, летний, тихий, отворенное окно, косые лучи заходящего солнча (косые-то лучи и запомнились всего более), в комнате в углу образ пред ним заженную лампочдку, ≫
<試訳> 彼は覚えている、ある夏の日の静かな夕方、開いた窓、斜めに差した落日の光を(斜めに差した光をなぜかよく覚えている)、部屋の一隅の聖像、その前に灯っていた燈明を、
作者の作品には自然そのものの描写はあまり多くない。清濁を合わせた人間そのものへの愛おしさを根底にした心理描写や独白が多いと思う。
この情景描写もアリョーシャの追想という形で、誰しも思い当たるようなセピア色の原風景として描かれ、短い表現ながら心に滲みる。
深い森に入って ― 2009-12-15
カラマーゾフの兄弟
「ある家族の歴史」から第一編は始まりますが、カラマーゾフ家の人々について語られます。父フョードルの二度目の妻ソフィヤについて、
« Меня эти невинные глазки как бритвой тогда по душе полоснули »
<試訳> あの無垢な眼差しが、あん時、わしの魂を剃刀のようにスパッとやったわけだ。
背徳的なフョードルが無垢なるものに魅かれたことを告白する。それを語る彼の中に、汚辱の自覚のなかで純なものを求める人間の本性を知り救いを感じる。それは後に、アリョーシャへの彼の心情としても表現される。
「ある家族の歴史」から第一編は始まりますが、カラマーゾフ家の人々について語られます。父フョードルの二度目の妻ソフィヤについて、
« Меня эти невинные глазки как бритвой тогда по душе полоснули »
<試訳> あの無垢な眼差しが、あん時、わしの魂を剃刀のようにスパッとやったわけだ。
背徳的なフョードルが無垢なるものに魅かれたことを告白する。それを語る彼の中に、汚辱の自覚のなかで純なものを求める人間の本性を知り救いを感じる。それは後に、アリョーシャへの彼の心情としても表現される。


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