天国には行きたくないぞ2010-08-14

死後について自分の考えを披歴するフョードル

≪- А в рай твой, Алексей Фёдрович, я не хочу, это было бы тебе известно, да порядочному человеку оно даже в рай-то твой и неприлично, если даже там и есть он. По-моему, заснул и не проснулся, и нет ничего, поминаете меня, коли хотите, а не хотите, так и чорт вас дери. Вот моя философия. ≫

<試訳>「お前の天国には行きたくないぞ、これは覚えといて欲しいんだがな、まったく、まともな人間ならお前の天国なんぞへ行くのは、そりゃあ失礼ってもんだ、もし天国とやらがあるとしてもだがな。わしが思うには、眠り込んだら目覚めん、それだけのことなのさ、わしを弔いたかったらそうすりゃあいいし、そうでなけりゃ勝手にどうとでもすりゃあいい。これがわしの哲学さ」

死は「眠り込んだら目覚めない、それだけのこと」と、彼はここで天国の存在に否定的な哲学を語ります。以前イワンとアリョーシャを前に「神はあるか」と議論していた場面もありますが、父と子でこのような議論が成り立つことに考えさせられます。それにしても、このように割り切った考え方は、当時の宗教的風土の中では強烈な印象を持たれたのではないでしょうか。