事実上大佐の娘 ― 2026-03-19
≪Похвальный лист тотчас же пошёл по рукам пьяных гостей, чему Катерина Ивановна не препятвовала, потому что в нём действительно было обозначено, en toutes lettres, [чёрным по белому -фр.] что она дочь надворного советника и кавалера, а следовательно, и в самом деле почти полковничья дочь.≫
<試訳> 賞状はすぐに酔った客の手から手へとわたり始めた。それをカテリーナが妨げなかったのは、その賞状に、彼女が七等官帯勲者の娘である事が、はっきりと記されていたからだった。したがって、事実上大佐の娘と言ってもおかしくなかったのだ。
・ これこそカテリーナがこの追善供養に皆を招いた大きな目的でした。つまり、日頃は困窮しているけれど、もともと自分は由緒ある家の出だという事を、この機会に皆に認めてもらいたい一心です。
<試訳> 賞状はすぐに酔った客の手から手へとわたり始めた。それをカテリーナが妨げなかったのは、その賞状に、彼女が七等官帯勲者の娘である事が、はっきりと記されていたからだった。したがって、事実上大佐の娘と言ってもおかしくなかったのだ。
・ これこそカテリーナがこの追善供養に皆を招いた大きな目的でした。つまり、日頃は困窮しているけれど、もともと自分は由緒ある家の出だという事を、この機会に皆に認めてもらいたい一心です。
非常に家柄のいい出 ― 2026-03-18
≪Похвальный лист этот, очевидно, должен был теперь послужить свидетельством о праве Катерины Ивановны самой завести пансион; но гллавное, был припасён с тою целью, чтоб окончательно срезать "обеих расфуфыренных шелепохвостниц", на случай если б они пришли на поминки, и ясно доказать им, что Катерина Ивановна из самого благородного, "можно даже сказать, аристократического дома, полковничья дочь и уж наверно получше иных искательниц приключений, которых так много расплодилось в последнее время".≫
<試訳> この賞状は、どうやらカテリーナが例の寄宿学校を設立する資格がある証明に役立つらしかった。だが何よりも、“ 派手に着飾った高慢な親子 ” を完全に打ちのめしたいという目算が隠されていた。 もし二人が供養に出席したなら、その機会に、自分が非常に家柄のいい出で “ 名門貴族と言っていいほどの大佐の娘で、最近やたらと増えてきた女山師よりよほど立派なのだ ” とはっきり証明してやるためだった。
・ 出自に拘って密かに自分で優越を感じているだけならまだしも、他を貶めて打ちのめそうと考えているカテリーナが哀れに感じます。
<試訳> この賞状は、どうやらカテリーナが例の寄宿学校を設立する資格がある証明に役立つらしかった。だが何よりも、“ 派手に着飾った高慢な親子 ” を完全に打ちのめしたいという目算が隠されていた。 もし二人が供養に出席したなら、その機会に、自分が非常に家柄のいい出で “ 名門貴族と言っていいほどの大佐の娘で、最近やたらと増えてきた女山師よりよほど立派なのだ ” とはっきり証明してやるためだった。
・ 出自に拘って密かに自分で優越を感じているだけならまだしも、他を貶めて打ちのめそうと考えているカテリーナが哀れに感じます。
ショールの踊りを舞った ― 2026-03-17
≪Об этом ещё не было сообщено Раскольникову самою Катериной Ивановной, и она тотчас же увлеклась в самые соблазнительные подробности. Неизвестно каким образом вдруг очутился в её руках тот самый "похвальный лист", о котором уведомлял Раскольникова ещё покйник Мармеладов, объясняя ему в распивочной, что Катерина Ивановна, супруга его при выпуске из института, танцевала с шалью "при губернаторе и при прочих лицах".≫
<試訳> この事については、まだカテリーナ自身からラスコーリニコフに知らされていなかった。それで、たちまちカテリーナは最も魅惑的なこの計画の細部に熱中してしまった。何故か分からないが、その時ふいに彼女は例の “賞状 ” を手にしていた。それは、亡きマルメラードフが居酒屋でラスコーリニコフに、妻のカテリーナが女学校の卒業する時、 “ 臨席する知事閣下やお偉方面々の前で ” ショールの踊りを舞ったと話した際に、彼に自慢していたものだった。
・ カテリーナはこの供養の場の趣旨を忘れて、自分の夢の計画や過去の自慢話をし始めます。参会者にとって興味があるとは思えません。
<試訳> この事については、まだカテリーナ自身からラスコーリニコフに知らされていなかった。それで、たちまちカテリーナは最も魅惑的なこの計画の細部に熱中してしまった。何故か分からないが、その時ふいに彼女は例の “賞状 ” を手にしていた。それは、亡きマルメラードフが居酒屋でラスコーリニコフに、妻のカテリーナが女学校の卒業する時、 “ 臨席する知事閣下やお偉方面々の前で ” ショールの踊りを舞ったと話した際に、彼に自慢していたものだった。
・ カテリーナはこの供養の場の趣旨を忘れて、自分の夢の計画や過去の自慢話をし始めます。参会者にとって興味があるとは思えません。
年金を貰えたら ― 2026-03-16
≪по крайней мере уж видно, что забулдыга, последний ум пропил, а ведь эти все такие чинные, серьёзные... Ишь сидит, глаза вылупила. Сердится! Сердится! Ха-ха-ха! Кхи-кхи-кхи!
Развеселившись, Катерина Ивановна тотчас же увлеклась в разные подробности и вдруг заговорила о том, как при помощи выхлопотанной пенсии она непременно заведёт в своём родном городе Т... пансион для благородных девиц.≫
<試訳> 「少なくとも、この飲んだくれは、最後の分別を酒で飲み尽くした事が明らかですからね。ところがこの人達はきちんとして真面目そのもの…。ほら、目を丸くして座っているわ。怒ってるわよ! 怒ってる! はっはっは! ごほん、ごほん、ごほん!」
カテリーナはすっかり浮かれてすぐに、細かい事をいろいろ話すのに夢中になった。そして、彼女は不意に、奔走してもらっている年金を貰えたら、自分の生まれ故郷のT町に、良家の子女達のための寄宿学校を必ず設立するつもりだ、と話し出した。
・ カテリーナの気分が高揚して饒舌になっています。年金の件はルージンが一般論として少し触れた程度なのですが、彼女は勝手に彼の尽力で貰えるものと思い込んでいます。生活が覚束ない現実から離れて、誇大な夢を語りたくなるのでしょう。
<試訳> 「少なくとも、この飲んだくれは、最後の分別を酒で飲み尽くした事が明らかですからね。ところがこの人達はきちんとして真面目そのもの…。ほら、目を丸くして座っているわ。怒ってるわよ! 怒ってる! はっはっは! ごほん、ごほん、ごほん!」
カテリーナはすっかり浮かれてすぐに、細かい事をいろいろ話すのに夢中になった。そして、彼女は不意に、奔走してもらっている年金を貰えたら、自分の生まれ故郷のT町に、良家の子女達のための寄宿学校を必ず設立するつもりだ、と話し出した。
・ カテリーナの気分が高揚して饒舌になっています。年金の件はルージンが一般論として少し触れた程度なのですが、彼女は勝手に彼の尽力で貰えるものと思い込んでいます。生活が覚束ない現実から離れて、誇大な夢を語りたくなるのでしょう。
感動的な話だと思っていて ― 2026-03-15
≪Ну согласитесь, ну можно ли рассказывать о том, что "Карль из аптеки страхом сердце пронзиль" и что он (сопляк!), вместо того чтобы связать извозчикка, "руки сложиль, и плакаль, и ошень просиль". Ах, дурында! И ведь думает, что это очень трогательно, и не подозревает, как она глупа! По-моему, этот пьяный провиантский гороздо её умнее;≫
<試訳> 「ねえ、そうじゃありませんか、“ 薬局のカルリは恐ろしさで、心臓を突き刺される思いだった ” とか、彼が ( まるで子供ですよ!)、御者を縛り上げるどころか、“ 手を合わせて、泣いて頼んだ ” などと語るなんて。ああ、何て馬鹿な女! これが感動的な話だと思っていて、自分がどんなに馬鹿か思いもしないのよ! 私に言わせれば、あの酔っ払った糧秣官の方がよほど賢いわよ」
・ 夫人の話をカテリーナが口汚くこきおろします。それは自分を貶めることにもなるのですが、昂った感情を抑える事ができません。追善供養なのに故人を偲ぶどころではなくなっています。
<試訳> 「ねえ、そうじゃありませんか、“ 薬局のカルリは恐ろしさで、心臓を突き刺される思いだった ” とか、彼が ( まるで子供ですよ!)、御者を縛り上げるどころか、“ 手を合わせて、泣いて頼んだ ” などと語るなんて。ああ、何て馬鹿な女! これが感動的な話だと思っていて、自分がどんなに馬鹿か思いもしないのよ! 私に言わせれば、あの酔っ払った糧秣官の方がよほど賢いわよ」
・ 夫人の話をカテリーナが口汚くこきおろします。それは自分を貶めることにもなるのですが、昂った感情を抑える事ができません。追善供養なのに故人を偲ぶどころではなくなっています。
どこからか流れてきたドイツ人は ― 2026-03-14
≪- Вот сычиха-то! - зашептала тотчас же опять Катерина Ивановна Раскольникову, почти развесёлившись, - хотела сказать: носил руки в карманах, а вышло, что он по карманам лезил, кхи-кхи! И заметили ль вы, Родион Романович, раз навсегда, что все эти петербургские иностранцы, то есть, главное, немцы, которые к нам откудова-то приезжают, все глупее нас!≫
<試訳> 「ほら、フクロウそのものですよ!」 すぐにまたカテリーナはいかにも愉快そうにラスコーリニコフに囁いた。「 “ ポケットに手を入れて歩いた ”、とあの女は言いたかったのに、人のポケットに手を突っ込んで回ったって事になったんです、ゴホン、ゴホン! それに、お気づきでしょうか、ラスコーリニコフさん、ペテルブルクにいる外国人はみな、と言っても主にどこからか流れてきたドイツ人は、誰もが私達よりも愚かなのは、はっきりしてますわね!」
・ カテリーナはリッペベフゼリ夫人のロシア語の間違いを、ことさら取り上げて小馬鹿にします。ペテルブルクはフィンランドに接し、「西欧への窓」 と言われています。ヨーロッパ諸国から人や物や文化が真っ先に入って来ていました。“… ブルク ” の地名はドイツ語の影響です。
<試訳> 「ほら、フクロウそのものですよ!」 すぐにまたカテリーナはいかにも愉快そうにラスコーリニコフに囁いた。「 “ ポケットに手を入れて歩いた ”、とあの女は言いたかったのに、人のポケットに手を突っ込んで回ったって事になったんです、ゴホン、ゴホン! それに、お気づきでしょうか、ラスコーリニコフさん、ペテルブルクにいる外国人はみな、と言っても主にどこからか流れてきたドイツ人は、誰もが私達よりも愚かなのは、はっきりしてますわね!」
・ カテリーナはリッペベフゼリ夫人のロシア語の間違いを、ことさら取り上げて小馬鹿にします。ペテルブルクはフィンランドに接し、「西欧への窓」 と言われています。ヨーロッパ諸国から人や物や文化が真っ先に入って来ていました。“… ブルク ” の地名はドイツ語の影響です。
あやうく堪忍袋の緒を切りそうだった ― 2026-03-13
≪Катерина Ивановна хоть и улыбнулась, но тотчас же заметила, что Амалии Ивановне не следует по-русски анекдоты рассказывать. Та ещё больше обиделась и возразила, что её "фатер аус Берлин буль ошень, ошень важны шеловек и всё руки по корман ходиль". Смешливая Катерина Ивановна не вытерпела и ужасно расхохоталась, так что Амалия Ивановна стала уже терять последнее терпение и едва крепилась≫
<試訳> カテリーナはにやりとしたけれども、すぐさま、夫人にはロシア語で小話をするのは無理だと注意した。相手はいっそう腹を立てて、“ ベルリン出身のお父様は、たいへん、たいへん偉い人、いつも両手をポケットに入れて歩いてたよ ” と反論した。笑い上戸のカテリーナは我慢しきれずに、からからと大笑いし出したので、夫人はあやうく堪忍袋の緒を切りそうだったが、やっとの事で自制した。
・ 夫人の反論はドイツ語混じりのロシア語で、滑稽に感じたカテリーナが笑います。言葉の違いの不自由さは、現代の移民の人達にとっても大きな問題に違いありません。 19世紀初め、ペテルブルクへのドイツからの移民が増加しています。ドイツの政治や経済状況によるものです。
<試訳> カテリーナはにやりとしたけれども、すぐさま、夫人にはロシア語で小話をするのは無理だと注意した。相手はいっそう腹を立てて、“ ベルリン出身のお父様は、たいへん、たいへん偉い人、いつも両手をポケットに入れて歩いてたよ ” と反論した。笑い上戸のカテリーナは我慢しきれずに、からからと大笑いし出したので、夫人はあやうく堪忍袋の緒を切りそうだったが、やっとの事で自制した。
・ 夫人の反論はドイツ語混じりのロシア語で、滑稽に感じたカテリーナが笑います。言葉の違いの不自由さは、現代の移民の人達にとっても大きな問題に違いありません。 19世紀初め、ペテルブルクへのドイツからの移民が増加しています。ドイツの政治や経済状況によるものです。
泣いて手を合わせた ― 2026-03-12
≪ начал вдруг, ни с того ни с сего, рассказывать, что какой-то знакомый её, "Карль из аптеки", ездил ночью на извозчике и что "извозчик хотель его убиваль и что Карль его ошень, ошень просиль чтоб он его не убиваль, и плакаль, и руки сложиль, и испугаль, и от страх ему сердуце пронизиль".≫
<試訳> 突然、前置きもなく、リッペベフゼリ夫人が語りだした。知り合いの、“ 薬局のカルリ ”という男が夜、辻馬車に乗っていたところ、“ 御者がその男を殺そうとした。それでカルリは、殺さないでくれと、たいへん、たいへん、頼んだ。泣いて手を合わせた。驚き、恐ろしさで心臓、突き刺されたようだった ”
・ 夫人は全く関係のない話題で皆の興味をひいて、場の雰囲気を変えようとしています。彼女はドイツ人で、ロシア語が不得手でドイツ訛りがあるのですが、訳ではうまく表現できません。
<試訳> 突然、前置きもなく、リッペベフゼリ夫人が語りだした。知り合いの、“ 薬局のカルリ ”という男が夜、辻馬車に乗っていたところ、“ 御者がその男を殺そうとした。それでカルリは、殺さないでくれと、たいへん、たいへん、頼んだ。泣いて手を合わせた。驚き、恐ろしさで心臓、突き刺されたようだった ”
・ 夫人は全く関係のない話題で皆の興味をひいて、場の雰囲気を変えようとしています。彼女はドイツ人で、ロシア語が不得手でドイツ訛りがあるのですが、訳ではうまく表現できません。
自分の評価を高めようとして ― 2026-03-11
≪Амалия Ивановна, тоже предчувствовавшая что-то недоброе, а вместе с тем оскорбленная до глубины души высокомерием Катерины Ивановны, чтобы отвлечь неприятное настроение общества в другую сторону и, кстати, уж чтоб поднять себя в общем мнении,≫
<試訳> 同じようにリッペベフゼリ夫人は、やはり何か良くない事を予感していたし、それと同時に高慢なカテリーナにすっかり業を煮やしていたので、座の雰囲気を他の方へ逸らし、ついでに、自分の評価を高めようとして、
・ 善意でこの席を準備した夫人にしてみれば、独り舞台のようなカテリーナの振る舞いは苦々しいのです。部屋貸しをしている主人として、ここで場を取り仕切って、皆に一目置かせようとしています。長い文の途中で、次に続きます。
<試訳> 同じようにリッペベフゼリ夫人は、やはり何か良くない事を予感していたし、それと同時に高慢なカテリーナにすっかり業を煮やしていたので、座の雰囲気を他の方へ逸らし、ついでに、自分の評価を高めようとして、
・ 善意でこの席を準備した夫人にしてみれば、独り舞台のようなカテリーナの振る舞いは苦々しいのです。部屋貸しをしている主人として、ここで場を取り仕切って、皆に一目置かせようとしています。長い文の途中で、次に続きます。
矢で射抜いた二つの心臓 ― 2026-03-10
≪и Соня знала, что уж Катерина Ивановна теперь не успокоится, "пока не докажет этим шлепохвосткам, что они обе", и т. д., и. т. д. Как нарочно, кто-то переслал с другого конца стола Соне тарелку, с вылепленными на неё, из чёрного хлеба, двумя сердцами, пронзенными стрелой. Катерина Ивановна вспыхнула и тотчас же громко заметила, через стол, что переславший, конечно, "пьяный осёл".≫
<試訳> それでソーニャは、カテリーナが今となっては、“ あの着飾った高慢な親子に身の程を思い知せないうちは ” 気が収まりそうにないのを知っていた。その機会をわざと狙ったかのように、誰かがテーブルの向こうの端からソーニャに、黒パンで型どった、矢で射抜いた二つの心臓が載った皿を送ってよこした。カテリーナは怒りを燃やすと同時に、テーブル越しに大声で、送ってよこした者は、“ 飲んだくれの阿呆者 ” に決まってると決めつけた。
・ ソーニャへの嫌がらせに、すぐにカテリーナが声を荒げます。ふだんはソーニャは人目を避けるようにしているのですが、今日は父の葬儀ですから顔を出さずにはいられません。彼女を見下し蔑んでいる人達の中で、彼女は針の筵に座っているような気持かも知れません。
<試訳> それでソーニャは、カテリーナが今となっては、“ あの着飾った高慢な親子に身の程を思い知せないうちは ” 気が収まりそうにないのを知っていた。その機会をわざと狙ったかのように、誰かがテーブルの向こうの端からソーニャに、黒パンで型どった、矢で射抜いた二つの心臓が載った皿を送ってよこした。カテリーナは怒りを燃やすと同時に、テーブル越しに大声で、送ってよこした者は、“ 飲んだくれの阿呆者 ” に決まってると決めつけた。
・ ソーニャへの嫌がらせに、すぐにカテリーナが声を荒げます。ふだんはソーニャは人目を避けるようにしているのですが、今日は父の葬儀ですから顔を出さずにはいられません。彼女を見下し蔑んでいる人達の中で、彼女は針の筵に座っているような気持かも知れません。










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