十字架ってものがねえな2021-02-05

 ≪Миколка становится сбоку и начинает бить ломом зря по спине. Кляча протягивает морду, тяжело вздыхает и уирает.
- Доканал! - кричат в толпе.
- А зачем вскачь не шла!
- Моё добро! - кричит Миколка, с ломом в руках и с налитыми кровьвю глазами. Он стоит будто жалея, что уж некого больше бить.
- Ну и впрямь, знать, креста на тебе нет! кричат из толпы уже многие голоса.≫

<試訳> ミコールカは横に立って金梃子でむやみに打ち始めた。痩せ馬は鼻ずらを突き出して辛そうに大きく息をして、それから息を引き取った。
「息の根を止めたぜ!」 人混みの中に声が上がった。
「それにしても、何で走らせなかったのかね!」
「俺のものだい!」 叫んだミコールカは、手に金梃子を持ち、血走った眼をしていた。彼はまるでもうこれ以上打つ相手がいないのを残念がっているように立っていた。
「確かにお前にゃ十字架ってものがねえな!」 群衆の中から今度は多くの声が上がった。

・ 自分のした事の非情さ、残酷さに気づかずに立ちすくむミコールカの姿は醜悪です。さすがにやり過ぎを非難する声が人々から上がりますがもう遅すぎます。私達人間は何度このような過ちを繰り返してきたか、と胸を突かれます。歴史の暗喩にもとれる普遍性があると思います。
“ 十字架 ” はこの小説で決定的な場面に出てきますが、「白痴」の中で、殺意を秘めるラゴージンと主人公のムイシュキン侯爵が十字架を交換し合う緊張した場面が印象的です。信仰と良心の象徴のようです。

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