ちょっとお待ちになって!2010-10-01

≪Увидав Алёшу, Катерина Ивановна быстро и с радрстью проговорила Ивану Фёдровичу, уже вставшему со своему места, чтоб уходить: - На минутку! Остантесь ещё на одну минуту. Я хочу услышать мнение вот этого человека, которому я всем существом моим доверяю. Катерина Осиповна, не уходите и вы, - прибабила она, обращаясь к г-же Хохлаковой. Она усадила Алёшу подле себя, а Хохлакова села напротив, рядом с Иваном Фёдровичем.≫

 <試訳> アリョーシャを見ると、嬉しそうにカテリーナは、立ち去ろうともう席から立ち上がっていたイワンに急いで言った。「ちょっとお待ちになって!もう少しだけいて下さい。心から信頼しているこの方のご意見を、私、お聞きしたいんです。ホフラコワさん、あなたもお行きにならないで」彼女はホフラコワ夫人に向かって言い添えた。彼女はアリョーシャを自分の傍に座らせ、ホフラコワ夫人は向かい側のイワンの隣に座った。

 いよいよ場面が客間に移ります。待ち望んでいたカテリーナがその場を早速仕切り始めます。イワンとの話は終わっていたのですが、アリョーシャの意見を聞こうと昂ぶっているようです。彼はまたしても袋小路のような葛藤に立会わされるのです。

ここにいるのは皆私の友です2010-10-02

≪- Здесь все друзья мои, все, кого я имею в мире, милые друзья мои, - горячо начала она голосом, в котором дрожали искрение страдальческие слёзы, и сердце Алёши опять разом повернулось к ней.≫

<試訳> 「ここにいらっしゃるのは皆私の友人ですわ、皆さん、この世で私が授かった親しい友人ですわ」 彼女が心底から苦悩に満ちた涙に震える声で熱心に話し始めたので、アリョーシャの心は一気にまた彼女に向かった。

 客間の椅子に4人が座り、カテリーナが感極まったように話し出します。激しやすい彼女の性格は既にいくつかの場面で描かれていて、演技なのではと思わされますが、それだけ苦悩が大きくまた孤独だと言えるのかも知れません。

主婦の憧れ2010-10-03

面白い商品名の広告が目にとまりました。「主婦の憧れ」というマヨネーズです。主婦が待ち望んでいた夢のような味というアピールでしょうか。「軽めのマヨネーズ」と下に添え書きされていますから薄味なのかも知れません。家電製品のようで食品らしくない命名ですが、味わってみたいと思わせます。

愛しているのか分からないの2010-10-04

 ≪Слушайте, Алексей Фёдорович, я даже не знаю , люблю ли я его теперь. Он мне стал жалок, это плохое свидетельство любви. Если б я любила его, продолжа любить, то я может быть не жалела бы его теперь, а напротив ненавиденла. Голос её задрожал, и слезинки блеснули на её ресницах. Алёша вздрогнул внутри себя: эта девушка правдива и искренна. - подумал он, - и... и она более не любит Дмитрия!≫

<試訳> 「実はね、アレクセイさん、あの人を今愛しているのか私は分からない程です。私、あの人が気の毒になったんです、これは愛情にとって不利な証拠ですわね。もしあの人を愛しているなら、まだ愛し続けているとしたら、私はきっと憐れんだりせずに逆に憎むでしょうから・・・」
彼女の声は震え出しまつ毛には涙が光っていた。アリョーシャは内心はっとして思った『この女性は正直で誠実な方だ、そして・・・そしてこの人はもうドミートリィを愛していないんだ!』

 カテリーナの苦悩が伝わってきます。優雅ではあるけれど高慢な性格に思われた彼女ですが、ここではドミートリィに対する気持をアリョーシャに偽りなく述べて真実と向き合うのです。彼もこれまで抱いていた彼女に対する惧れを和らげます。でもこの後また彼女のプライドが素直な本心を曇らすことになるのですが・・・。

ええ、僕は賛成ですよ2010-10-05

 ≪Мой милый, мой добрый, мой всегдашний советник и глубокий сердцеведец, и единственный друг мой, какого я только имею в мире, Иван Фёдрович, одобряет меня во всем и хвалит моё решение... Он его знает.
- Да, я одобряю его, - тихим, но твёрдым голосом произнёс Иван Фёдоросич.≫

<試訳> 「優しく親切でいつも助言して下さる、寛大な理解者で、この世で私が授かった唯一人の私の友人、イワンさんがすっかり賛成されて、私の決意を讃えて下さったんですわ・・・。イワンさんは決意をご存じですもの」
「ええ、僕は賛成です」 静かだがきっぱりした声でイワンが言った。

 カテリーナのイワンに対する形容は大げさな程です。当人を目の前にして褒めあげるこのような言い方は、私達は使うことがありませんが、ロシアでは違和感はないのかも知れません。それにしても彼女に必要なのは冷静に自分を見つめる事ではないでしょうか。

私、予感していますの2010-10-06

 ≪У меня инстинктивное предчувствие, что вы, Алёша, брат мой милый(потому что вы брат мой милый), - восторженно проговорила она опять, схватив его холодную руку своею горячею рукой, - я предчувствую, что ваше решение, ваше одобрение, несмотря на всё муки мои, подаст мне спокойствие, потому что после ваших слов я затихну и примирюсь, - я это предчувствую!≫

<試訳> 「私には直感的に予感がありますのよ、あなたが、心優しい弟のアリョーシャさんが、(だってあなたはわたしの心優しい弟なんですもの)」彼女の熱い手で彼の冷たい手を握って、また昂ぶって言った。「どんなに苦しみがあるとしても、あなたの決定が、あなたのご同意が私に安らぎを与えて下さると予感していますの、なぜって、あたのお言葉を聞けば私は楽になり、耐え忍ぶことができるのですもの、私、そう前から感じていますの!]

 イワンの同意に続いて、アリョーシャの同意を期待するカテリーナの激しい感情です。自分の判断を正当化したいという気持ちからでしょう。裏返せば、それだけ自分自身の本当の気持ちを語っていないということにもなります。作家が与えた性格なのですが、実にリアルです。

何をお尋ねか分かりません2010-10-07

≪- Я не знаю, о чём вы спросите меня, - выговорил с зардевшимся лицом Алёша, - я только знаю, что я вас люблю и желаю вам в эту минуту счастья больше, чем себе самому!... Но ведь я ничего не знаю в этих делах... - вдруг зачем-то поспешил он прибавить.≫

<試訳> 「僕に何をお尋ねなのか分からないのですが」アリョーシャは顔を紅潮させて言った。「ただこれだけは分かります。僕はあなたが好きで、この瞬間も、僕自身の幸せよりもあなたの幸せを願っているんです!・・・でも本当にこのような事柄は僕は何も分からないのです・・・」と、何故かふいに彼は急いで言い添えた。

 カテリーナの問にアリョーシャが戸惑って答えます。確かに彼女は自分に同情してもらいたい様子で、具体的には何をどう答えていいのか彼ならずとも困るでしょう。正直な答えだと思います。既に彼女は決心を固めてもいます。結局は絶えず孤独に選択し決断していく過程が生きるということなのではないでしょうか。

決してあの人を見捨てません2010-10-08

 ≪Есль даже он и женится на той... тварь (начала она торжественно), который я никогда, никогда простить не могу, то я всё-таки не оставлю его! От этих пор я уже никогда, никогда оставлю его! - произнесла она с каким-то надрывом какого-то бледного вымученного восторга.≫

<試訳> 「たとえあの方が(彼女は厳然とし出した)、私が決して許す事の出来ないあの・・・商売女と結婚したとしても、私はそれでもなおあの人を見捨てはしません!もう今から私は決して決してあの方を見捨てはしませんわ!」 何か幾分青ざめた無理に感極まったような感情を爆発させて彼女は宣言した。

 ドミートリィに対するカテリーナの激しい感情です。前述の「愛していない」に反するのですが彼女らしい理屈を語り続けます。同席している3人の困惑が察せられます。

あの方を見守ります2010-10-09

 ≪ То-есть не то, чтоб я таскалась за ним, попадалась ему поминутно на глаза, мучила его - о нет, я уеду в другой город, куда хотите, но я всю жизнь, всю жизнь мою буду следить за ним не уставая. Когда же он станет с тою несчастен, а это непременно и сейчас же будет, то пусть придёт ко мне и он встретит друга, сестру... ≫

<試訳> 「だからと言って、あの方を追い回し、絶えず目に触れて、悩まそうと言うんじゃありませんのよ―ああ、とんでもありません、私、他の町に去りますわ、どこなりとお望みの、でも、生涯、全生涯かけて倦むことなくあの方を見守るつもりです。あの女と一緒になってあの方が不幸になる時こそ、いえ今すぐにも必ずそうなるに決まってますが、そうしたら私のところへ来られるといいのです。その時こそ親友に、妹に巡り会うでしょう・・・」

 カテリーナがドミートリィの背信に対して自分の身の処し方を熱っぽく語ります。傷ついてもなお彼を見守り続け戻って来る時を、妹の気持ちで待つというのですが、決然としているだけに本当の愛情のあり方だろうかと疑問です。声高になるほど本心を偽って演じているように聞こえてきます。彼女をそこに追いやったドミートリィの仕打ちこそ責められるべきですが。

彼女の顔は急に暗くなった2010-10-10

 ≪Она может быть гораздо достойнее, искуснее и натуральнее хотела бы выразить свою мысль, но вышло слишком поспешно и слишкоим обнаженно. Много было молодой невыдержки, многое отзывалось лишь вчерашним паздражением, потребностью погордиться, это она почувствовала сама. Лицо её как-то вдруг омрачилось, выражение глаз стало нехорошо. Алёша тотчас же заметил всё это и в сердце его шевельнулось сострадание.≫

<試訳> 彼女は自分の考えを、もっとずっと相応しく上手に自然に言い表したかったのかも知れないが、あまりにあせり過ぎ、あまりにさらけ出し過ぎになっていた。未熟な自制のなさが多かったし、多くは昨日の苛立ちと、誇りを保とうとする欲求に影響されていて、このことを彼女自身も感じたのだ。彼女の顔が何か急に暗くなり、目の様子は不快そうになった。アリョーシャはすぐにすべてを察知し、彼の心の内に憐れみが湧いた。

・ 彼女が必死に説明すればするほど、自分のプライドを保とうとしていることが露わになるのです。自らもその事に気づいて落ち込む様子が巧みに表現されますが、心理がよく分かり哀れです。彼女には素直に心を割って話し合える相手が必要です。弱さを見せずに優位を保とうとする限り不幸なのではないでしょうか。