およそ何事にも興味がない人間 ― 2024-07-21
≪- Оттого что грубостию ваших вопросов не обижался? Так, что ли? Да... чего ж обижаться? Как спрашивали, так и отвечал, - прибавил он с удивительным выражением простодушия. - Ведь я особенно-то ничем почти не интересуюсь, ей-богу, - продолжал он как-то вдумчиво. - Особенно теперь, ничем-таки не занят... Впрочем, вам позволительно думать, что я из видов заискиваю, тем более что имею дело до вашей сестриыц, сам объявил.≫
<試訳> 「あなたのご質問の無礼さに腹を立てなかったからですかな? そうじゃありませんか?だが… いったい何を怒るんです? 尋ねられたから、答えたまでなのですから」 スビドリガイロフは驚くほど無邪気な表情で付け加えた。「なにしろ、私はこれといって。およそ何事にも興味がない人間でしてね、本当に」 何か思わし気に彼は続けた。「特にこのごろは、何も関心が持てない…。ですが、 あなたとしては、私がある魂胆から取り入ろうしているとお考えになるのも無理はありません。ましてや妹さんに関する用事があると、自分ではっきり言ったのですからね」
・ スビドリガイロフの話し方は自分を飾る事はなく率直です。何か諦めの雰囲気さえ感じます。ラスコーリニコフとの間に案外響きあうものがあるようでもあります。
<試訳> 「あなたのご質問の無礼さに腹を立てなかったからですかな? そうじゃありませんか?だが… いったい何を怒るんです? 尋ねられたから、答えたまでなのですから」 スビドリガイロフは驚くほど無邪気な表情で付け加えた。「なにしろ、私はこれといって。およそ何事にも興味がない人間でしてね、本当に」 何か思わし気に彼は続けた。「特にこのごろは、何も関心が持てない…。ですが、 あなたとしては、私がある魂胆から取り入ろうしているとお考えになるのも無理はありません。ましてや妹さんに関する用事があると、自分ではっきり言ったのですからね」
・ スビドリガイロフの話し方は自分を飾る事はなく率直です。何か諦めの雰囲気さえ感じます。ラスコーリニコフとの間に案外響きあうものがあるようでもあります。
あなたには何かがある。 ― 2024-07-22
≪Но я вам откровенно скажу: очень скучно! Особенно эти три дня, так что я вам даже обрадовался... Не рассердитесь, Родион Романович, но вы мне сами почему-то кажетесь ужасно как странным. Как хотите, а что-то в вас есть; и именно теперь, то есть не собственно вэту минуту, а вообще теперь... Ну, ну, не буду, не буду, не хмурьтесь! Я ведь не такой медведь, как вы думаете.≫
<試訳> 「しかし、あなたには隠さず言いましょう。とても気が塞ぎましてね! 特にこの3日ほどですが、それであなたにお会いできて嬉しかったくらいです…。怒らないでほしいのですが、ロジオン・ロマーノビッチ、あなたご自身だってなぜかひどく妙なご様子にお見うけしますな。どうおっしゃろうと、あなたには何かがある。とりわけ今ですよ、つまりこの瞬間というのではなく、一般的な意味で、この頃ですが… はてさて、やめましょう、やめましょう、顔をしかめないで下さい! 私はあなたが思っているような熊男などではありませんよ」
・ これまで自身の事を語っていたスビドリガイロフが、ラスコーリニコフの最も触れられたくないところに迫り,、あえてそれを聞こうとはしません。鋭い感覚をもっている人物です。
<試訳> 「しかし、あなたには隠さず言いましょう。とても気が塞ぎましてね! 特にこの3日ほどですが、それであなたにお会いできて嬉しかったくらいです…。怒らないでほしいのですが、ロジオン・ロマーノビッチ、あなたご自身だってなぜかひどく妙なご様子にお見うけしますな。どうおっしゃろうと、あなたには何かがある。とりわけ今ですよ、つまりこの瞬間というのではなく、一般的な意味で、この頃ですが… はてさて、やめましょう、やめましょう、顔をしかめないで下さい! 私はあなたが思っているような熊男などではありませんよ」
・ これまで自身の事を語っていたスビドリガイロフが、ラスコーリニコフの最も触れられたくないところに迫り,、あえてそれを聞こうとはしません。鋭い感覚をもっている人物です。
立派な紳士にもなり得る方 ― 2024-07-23
≪Раскольников мрачно посмотрел на него.
- Вы даже, может быть, и совсем не медведь, - сказал он, - Мне даже кажется, что вы очень хорошего общества или, по крайней мере, умеете при случае быть и порядочным человеком.
- Да ведь я ничьим мнением особенно не интересуюсь, - сухо и как бы даже с оттенком высоковмерия ответил Свидригайлов,≫
<試訳> ラスコーリニコフは不機嫌にスビドリガイロフを見つめていた。
「それどころか、全然熊男などじゃないかも知れませんよ」 と彼は言った。「あなたは上流社会の出か、少なくとも、場合によっては立派な紳士にもなり得る方だと、僕には思われます」
「私は誰の意見にも格別興味を持っておりませんでしてね」 そっけなく、そして傲慢さを込めさえしてスビドロガイロフが答えた。
・ 反目するかと思っていた二人が、意外にも率直に意見を交わし合います。ラスコーリニコフが感情的にならずに、相手の品性を認めるような言い方さえしているのが意外です。互いに探り合いのやり取りが続きます。
- Вы даже, может быть, и совсем не медведь, - сказал он, - Мне даже кажется, что вы очень хорошего общества или, по крайней мере, умеете при случае быть и порядочным человеком.
- Да ведь я ничьим мнением особенно не интересуюсь, - сухо и как бы даже с оттенком высоковмерия ответил Свидригайлов,≫
<試訳> ラスコーリニコフは不機嫌にスビドリガイロフを見つめていた。
「それどころか、全然熊男などじゃないかも知れませんよ」 と彼は言った。「あなたは上流社会の出か、少なくとも、場合によっては立派な紳士にもなり得る方だと、僕には思われます」
「私は誰の意見にも格別興味を持っておりませんでしてね」 そっけなく、そして傲慢さを込めさえしてスビドロガイロフが答えた。
・ 反目するかと思っていた二人が、意外にも率直に意見を交わし合います。ラスコーリニコフが感情的にならずに、相手の品性を認めるような言い方さえしているのが意外です。互いに探り合いのやり取りが続きます。
知人は大勢おりますがね ― 2024-07-24
≪- а потому отчего же и не побывать пошляком, когда это платье в нашем климате так удобно носить и... и особенно если к тому и натуральную склонность имеешь, - прибавил он, опять засмеявшись.
- Я слышал однако, что у вас здесь много знакомых. Вы ведь то, что называется "не без связей". Зачем же вам я-то в таком случае, как не для целей?
- Это вы правду сказали, что у меня есть знакомые, - подхватил Свидригайлов, не отвечая на главный пункт, - я уж встречал; третий ведь день слоняюсь; и сам узнаю, и меня, кажется, узнают.≫
<試訳> 「ですから、俗物になっていけない事もないでしょう。それにこの俗っぽい服装もここの気候に大いに都合がいいわけで…それに根っから愛着があるとなるとですね」 スビドリガイロフは、また笑いながら付け加えた。
「この町に、あなたにはたくさん知人がいらっしゃるとお聞きしましたが。いわゆる、かなり “ 顔の広い ” ほうじゃありませんか。だったら、どうして目的もないのに僕なんかに関心があるんです?
「確かにおっしゃる通り、知人は大勢おりますがね」 スビドリガイロフが肝心な点には答えずに、相手の言葉を引き取った。「もう会いましたよ。3日の間あちこち歩き回りましてね。自分のほうが気がつく時もあれば、向こうが気がつく事もあるようで」
・ スビドリガイロフは田舎町から首都のここペテルブルクへやって来ました。顔が広いので久し振りに巡り歩いたようです。けれども、ラスコーリニコフに最初に話したように、おもな目的はドゥーニャに会う事で、彼に取次ぎを頼みたいのです。押しの強いスビドリガイロフも、さすがに先の一件の経緯があって、彼女に直接会うわけにはいかないのでしょう。
- Я слышал однако, что у вас здесь много знакомых. Вы ведь то, что называется "не без связей". Зачем же вам я-то в таком случае, как не для целей?
- Это вы правду сказали, что у меня есть знакомые, - подхватил Свидригайлов, не отвечая на главный пункт, - я уж встречал; третий ведь день слоняюсь; и сам узнаю, и меня, кажется, узнают.≫
<試訳> 「ですから、俗物になっていけない事もないでしょう。それにこの俗っぽい服装もここの気候に大いに都合がいいわけで…それに根っから愛着があるとなるとですね」 スビドリガイロフは、また笑いながら付け加えた。
「この町に、あなたにはたくさん知人がいらっしゃるとお聞きしましたが。いわゆる、かなり “ 顔の広い ” ほうじゃありませんか。だったら、どうして目的もないのに僕なんかに関心があるんです?
「確かにおっしゃる通り、知人は大勢おりますがね」 スビドリガイロフが肝心な点には答えずに、相手の言葉を引き取った。「もう会いましたよ。3日の間あちこち歩き回りましてね。自分のほうが気がつく時もあれば、向こうが気がつく事もあるようで」
・ スビドリガイロフは田舎町から首都のここペテルブルクへやって来ました。顔が広いので久し振りに巡り歩いたようです。けれども、ラスコーリニコフに最初に話したように、おもな目的はドゥーニャに会う事で、彼に取次ぎを頼みたいのです。押しの強いスビドリガイロフも、さすがに先の一件の経緯があって、彼女に直接会うわけにはいかないのでしょう。
農奴解放の影響もを受けずに済みましてね ― 2024-07-25
≪Оно конечно, одет прилично и числюсь человеком не бедным; нас ведь и крестьянская реформа обошла: леса да луга заливные, доход-то и не теряется; но... не пойду я туда; и прежде надоело: хожу третий день и не признаюсь никому... А тут ещё город! То есть как это он сочинился у нас, скажите пожалуйста! Город канцеляристов и всевозможных семинаристов! Право, я многого здесь прежде не примечал, лет восемь-то назад, когда тут валандался... На одну только анатомию теперь и надеюсь, ей-богу!≫
<試訳> 「そりゃもちろんでしょう、私は身なりもきちんとしてしているし、貧乏人でもありませんからな。農奴解放の影響もを受けずに済みましてね。森林と川沿いの牧草地が主なので、収入も減りませんでしたよ。けれど…、私はそんな連中の所へは行きません。以前からうんざりしているんでね。3日歩き回っても、誰にも声をかけないくらいで…。さらに、この町ときたら! なんでこのようなものが我がロシアに作り出されたのでしょうなあ? 役人達と、ありとあらゆる神学生の町! 実際、8年前にここでぶらぶらしていた頃は、ずいぶん多くの事を見おとしていたもんです…。今の私の望みは解剖学だけです、全くの話!」
・ 農奴解放令は1861年、作者が40歳の時です。ロシア社会が大きく変動し、混乱もありました。スビドリガイロフは地方の地主貴族ですが、農地を手放さずに済み、お金に不自由なく気ままに生きています。ちょうどこの農奴解放令の年に誕生したのがチェーホフで、(ドストエフスキーの約40歳年下)、彼が戯曲「桜の園」で、没落していく地主貴族の哀感を描いているのが対照的です。
<試訳> 「そりゃもちろんでしょう、私は身なりもきちんとしてしているし、貧乏人でもありませんからな。農奴解放の影響もを受けずに済みましてね。森林と川沿いの牧草地が主なので、収入も減りませんでしたよ。けれど…、私はそんな連中の所へは行きません。以前からうんざりしているんでね。3日歩き回っても、誰にも声をかけないくらいで…。さらに、この町ときたら! なんでこのようなものが我がロシアに作り出されたのでしょうなあ? 役人達と、ありとあらゆる神学生の町! 実際、8年前にここでぶらぶらしていた頃は、ずいぶん多くの事を見おとしていたもんです…。今の私の望みは解剖学だけです、全くの話!」
・ 農奴解放令は1861年、作者が40歳の時です。ロシア社会が大きく変動し、混乱もありました。スビドリガイロフは地方の地主貴族ですが、農地を手放さずに済み、お金に不自由なく気ままに生きています。ちょうどこの農奴解放令の年に誕生したのがチェーホフで、(ドストエフスキーの約40歳年下)、彼が戯曲「桜の園」で、没落していく地主貴族の哀感を描いているのが対照的です。
この上なく上品な仲間を作りましてね ― 2024-07-26
≪- На какую анатомию?
- А насчёт этих клубов, Дюссотов; пуантов этих ваших или, пожалуй, вот ещё прогрессу - ну, это пусть будет без нас, - продолжал он, не заметив опять вопроса. - Да и охота шулером-то быть?
- А вы были и шулером?
- Как же без этого? Целая компания нас была, наиприличнейшая, лет восеиь назхад; проводили время; и всё, знаете, люди с манерами, поэты были, капиталисты были.≫
<試訳> 「解剖学と言いますと?」
「これこれのクラブに関してだとかデュソーのレストランだとか、あなた方の好きなたまり場だとか、あるいはまあ、進歩というやつも含めていいでしょう、― まあ、こういうものは我々がいなくても勝手に続けりゃいいさ」 彼はまたも質問を無視して喋り続けた。「といって、いかさまカルタ師になるのもねえ?」
「いかさま師までやられた事があるんですか?」
「それをやらんでどうします? 8年ほど前ですが、我々はこの上なく上品な仲間を作りましてね、よく暇をつぶしたものです。行儀をわきまえた連中で、詩人もいれば、資本家もいましたな」
・ ラスコーリニコフは時間がないのに、スビドリガイロフの話にすっかり引き込まれた様子です。様々な経験、独特な生き方や考え方に興味を持たずにいられず、質問までします。
- А насчёт этих клубов, Дюссотов; пуантов этих ваших или, пожалуй, вот ещё прогрессу - ну, это пусть будет без нас, - продолжал он, не заметив опять вопроса. - Да и охота шулером-то быть?
- А вы были и шулером?
- Как же без этого? Целая компания нас была, наиприличнейшая, лет восеиь назхад; проводили время; и всё, знаете, люди с манерами, поэты были, капиталисты были.≫
<試訳> 「解剖学と言いますと?」
「これこれのクラブに関してだとかデュソーのレストランだとか、あなた方の好きなたまり場だとか、あるいはまあ、進歩というやつも含めていいでしょう、― まあ、こういうものは我々がいなくても勝手に続けりゃいいさ」 彼はまたも質問を無視して喋り続けた。「といって、いかさまカルタ師になるのもねえ?」
「いかさま師までやられた事があるんですか?」
「それをやらんでどうします? 8年ほど前ですが、我々はこの上なく上品な仲間を作りましてね、よく暇をつぶしたものです。行儀をわきまえた連中で、詩人もいれば、資本家もいましたな」
・ ラスコーリニコフは時間がないのに、スビドリガイロフの話にすっかり引き込まれた様子です。様々な経験、独特な生き方や考え方に興味を持たずにいられず、質問までします。
私を身請けしてくれたわけです ― 2024-07-27
≪Да и вообще у нас, в русском обществе, самые лучшие манеры у тех, которые биты бывали, - заметили вы это? Это ведь я в деревне теперь опустился. А всё-таки посадили было меня тогда в тюриму за долги, гречонка один нежинский. Тут и подвернулась Марфа Петровна, поторговалась и выкупила меня за тридцать тысяч сребреников.≫
<試訳> 一般的に我がロシアの社会では、最も態度の立派なのは、たびたび殴られた連中なんですが、― お気づきでしたかね? 私がこんな体たらくなのは、これまで田舎に引っ込んでたからですよ。いずれにせよ、私はその頃、借金がもとで危うく牢にいれられかけましてね。相手はネージン生まれのギリシア人でした。そこにたまたま現れたのがマルファ・ペトロ―ブナでしてね、値を掛け合って銀貨3万ルーブリで私を身請けしてくれたわけです」
・ スビドリガイロフは賭け事で借金を作ったのではないかと想像します。マルファに助けられた負い目があったのです。結婚に至ったのは、それが大きかったのでしょう。ネージンはウクライナの町の名です。
<試訳> 一般的に我がロシアの社会では、最も態度の立派なのは、たびたび殴られた連中なんですが、― お気づきでしたかね? 私がこんな体たらくなのは、これまで田舎に引っ込んでたからですよ。いずれにせよ、私はその頃、借金がもとで危うく牢にいれられかけましてね。相手はネージン生まれのギリシア人でした。そこにたまたま現れたのがマルファ・ペトロ―ブナでしてね、値を掛け合って銀貨3万ルーブリで私を身請けしてくれたわけです」
・ スビドリガイロフは賭け事で借金を作ったのではないかと想像します。マルファに助けられた負い目があったのです。結婚に至ったのは、それが大きかったのでしょう。ネージンはウクライナの町の名です。
ちょっとでも謀反気をおこそうものなら ― 2024-07-28
≪(Всего-то я семьдесят тысяч был должен). Сочетались мы с ней законным браком, и увезла она меня тотчас же к себе в деревню, как какое сокровище. Она ведь старше меня пятью годами. Очень любила. Семь лет из деревни не выезжал. И заметьте, всю-то жизнь документ против меня, на чужое имя, в этих тридцати тчсячах держала, так что задумай я в чём-нибудь взбунтоваться, - тотчас же в капкан! И сделала бы! У женщин ведь это всё вместе уживается.≫
<試訳> 「(借金は全部で7万ルーブリもありました)。私たちは正式に結婚し、彼女は私を宝物のようにして、すぐに自分の田舎へ連れ帰りました。なにしろ彼女は5歳年上でしたからな。とても愛してくれましたよ。7年間というもの私は田舎から出ませんでした。それにいいですか、彼女は一生涯、私の例の3万ルーブリの借用証書を他人名義で握っていたんです。ですから、私が何かでちょっとでも謀反気をおこそうものなら、すぐさま罠にかかるって寸法で! やりかねない女でしたよ! 女性の胸の内にはいろんな思いが同居していますからなあ」
・ マルファはスビドリガイロフが離れないようにがっちりと縛っていたわけです。彼としては生活の面では不自由がなかったのですが、満たされないものはあったかも知れません。
<試訳> 「(借金は全部で7万ルーブリもありました)。私たちは正式に結婚し、彼女は私を宝物のようにして、すぐに自分の田舎へ連れ帰りました。なにしろ彼女は5歳年上でしたからな。とても愛してくれましたよ。7年間というもの私は田舎から出ませんでした。それにいいですか、彼女は一生涯、私の例の3万ルーブリの借用証書を他人名義で握っていたんです。ですから、私が何かでちょっとでも謀反気をおこそうものなら、すぐさま罠にかかるって寸法で! やりかねない女でしたよ! 女性の胸の内にはいろんな思いが同居していますからなあ」
・ マルファはスビドリガイロフが離れないようにがっちりと縛っていたわけです。彼としては生活の面では不自由がなかったのですが、満たされないものはあったかも知れません。
何だか気が滅入ってしまいましてね ― 2024-07-29
≪- А если бы не документ, дали бы тягу?
- Не знаю, как вам сказаь. Меня этот документ почти не стеснял. Никуда мне не хотелось, а за границу Марфа Петровна и сама меня раза два приглашала, видя, что я скучал. Да что! За границу я прежде ездил, и всегда мне тошно бывало. Не то чтоб, а вот заря занимается, залив Неаполитанский, море, смотришь, и как-то грустно.≫
<試訳> 「証書がなかったら、逃げだしたんですか?」
「どう答えたらいいでしょうなあ。その証書にほとんど束縛されていたわけじゃありませんな。どこへも行きたいと思いませんでしたが、マルファが私が退屈しているのを見て、2度ほど外国行きを勧めてくれました。だが行ったところでどうなるもんでしょう! 外国へは、以前何度か行きましたがね、いつも嫌気がさしてくるんですよ。嫌気と言うとなんですが、例えば明けの空がしらむ頃、ナポリ湾とか、海とかを眺めていると、何だか気が滅入ってしまいましてね」
・ スビドリガイロフの複雑な感情です。もともと外国を旅をしても楽しめなかったというのです。負い目があるとは言え、マルファとの生活になじんで、案外快適だったのかも知れません。
- Не знаю, как вам сказаь. Меня этот документ почти не стеснял. Никуда мне не хотелось, а за границу Марфа Петровна и сама меня раза два приглашала, видя, что я скучал. Да что! За границу я прежде ездил, и всегда мне тошно бывало. Не то чтоб, а вот заря занимается, залив Неаполитанский, море, смотришь, и как-то грустно.≫
<試訳> 「証書がなかったら、逃げだしたんですか?」
「どう答えたらいいでしょうなあ。その証書にほとんど束縛されていたわけじゃありませんな。どこへも行きたいと思いませんでしたが、マルファが私が退屈しているのを見て、2度ほど外国行きを勧めてくれました。だが行ったところでどうなるもんでしょう! 外国へは、以前何度か行きましたがね、いつも嫌気がさしてくるんですよ。嫌気と言うとなんですが、例えば明けの空がしらむ頃、ナポリ湾とか、海とかを眺めていると、何だか気が滅入ってしまいましてね」
・ スビドリガイロフの複雑な感情です。もともと外国を旅をしても楽しめなかったというのです。負い目があるとは言え、マルファとの生活になじんで、案外快適だったのかも知れません。
酒をやめたら何も残らんのです ― 2024-07-30
≪Всего противнее, что ведь действительно о чём-то грустишь! Нет, на родине лучше: тут, по крайней мере, во всем других винишь, а себя оправедываешь. Я бы, может, теперь в экспедицию на Северный полюс поехал, потому j'ai le vin mauvais, и пить мне противно, а кроме вина ничего больше не остаётся. Пробовал. А что, говорят, Берг в воскресенье в Юсуповом саду на огромном шаре полетит, попутчиков за известную плату приглашает, правда?≫
<試訳> 「実際、何かを思って悲しくなるほど、厭な事ことはありませんからな! いや、生まれ故郷が一番です。故郷にいると、少なくとも、何でも他人のせいにして、自分を正当化していられますんでね。私は今、北極探検に行きたいような気持ちなんですよ、なぜなら、『酒癖が悪いものですから』、それも、酒を飲むjのは厭でたまらないのに、それでいてその酒をやめたら何も残らんのです。試験済みでしてね。ところで、日曜日にユスポフ公園でベルクが巨大な気球にのって飛ぶんだそうで、一定の料金で同乗者を募っているそうですが、本当ですか?」
・ どの民族にとっても祖国は代えがたく懐かしいものでしょう。ロシア人も小説や音楽などから、「我が祖国」、「母なる大地」、「スラブ魂」という感覚が強いように感じます。とは言え、スビドリガイロフが故郷を一番だと思う理由はいただけません。次々に話題を変えて、彼は打ち解けたようにラスコーリニコフに問いかけます。「ベルク」は当時の実在の興行師だったそうです。
「酒癖が悪いものですから」、をなぜか 「j'ai le vin mauvais,」と、フランス語を使っています。
<試訳> 「実際、何かを思って悲しくなるほど、厭な事ことはありませんからな! いや、生まれ故郷が一番です。故郷にいると、少なくとも、何でも他人のせいにして、自分を正当化していられますんでね。私は今、北極探検に行きたいような気持ちなんですよ、なぜなら、『酒癖が悪いものですから』、それも、酒を飲むjのは厭でたまらないのに、それでいてその酒をやめたら何も残らんのです。試験済みでしてね。ところで、日曜日にユスポフ公園でベルクが巨大な気球にのって飛ぶんだそうで、一定の料金で同乗者を募っているそうですが、本当ですか?」
・ どの民族にとっても祖国は代えがたく懐かしいものでしょう。ロシア人も小説や音楽などから、「我が祖国」、「母なる大地」、「スラブ魂」という感覚が強いように感じます。とは言え、スビドリガイロフが故郷を一番だと思う理由はいただけません。次々に話題を変えて、彼は打ち解けたようにラスコーリニコフに問いかけます。「ベルク」は当時の実在の興行師だったそうです。
「酒癖が悪いものですから」、をなぜか 「j'ai le vin mauvais,」と、フランス語を使っています。
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