銀のシガレットケースですよ2021-05-15

 ≪Старуха опомнилась, и решительный тон гостя её, видимо, ободрил.
- Да чего же ты, батюшка, так вдруг... что такое? - спросила она, смотря на заклад.
- Серебряная папиросочница: ведь я говорил прошлый наз.
Она протянула руку.
- Да чтой-то вы какой бледный? Вот и руки дрожат! Искупался, что ль, батушка?
- Лихорадка, - отвечал он отрывисто.≫

<試訳> 老婆は気を取り直した。客のはっきりした態度に元気づいたらしかった。
「いったいどうしたんだい、あんたさん、そんな藪から棒に… 何だい、それは?」 質草に目をやりながら老婆が尋ねた。
「銀のシガレットケースですよ。前回言ったでしょう」
老婆が手を伸ばした。
「それにしても、どうしたんだい、真っ青な顔をして? 手も震えているじゃないか! 水でも浴びてきたのかね?」
「熱があるんです」 彼はぶっきらぼうに言った。

・ 老婆を前にラスコーリニコフの緊張が隠しようもなく身体に表れます。差し出した質草はシガレットケースに似せた木片を包んで紐で固く縛ったもので、感づかれないかと恐れて手が震えるのでしょう。自作自演の担いきれない役の重圧に、早くも押し潰されそうです。