すぐにも休みたまえ2023-05-01

 ≪- Немедленно спать, - решил он, осмотрев, по возможности, пациента, - а на ночь принять бы одну штучку. Примёте? Я ещё давеча заготовил... порошочек один.
- Хоть два, - отвечал Раскольников.
Порошок был тут же принят.≫

<試訳> 「すぐにも休みたまえ」 患者をできるだけ念入りに見回すと、ゾシーモフがきっぱりと言った。「それと寝るときに一包飲むといいんだが、飲むかい? もうさっき調合してあるんだが… 粉薬を一包だ」
「よければ2包を」 ラスコーリニコフが答えた。
粉薬はその場で服用された。

・ ゾシーモフはラズミーヒンに頼まれて、ラスコーリニコフが意識を失って寝込んだ時から診察しています。ラスコーリニコフの身体と精神の状態に興味をもっているようです。診察料もとらない友人に随分助けられています。

生きている限り学べ2023-05-02

 ≪- Это очень хорошо, что ты сам его поведешь, - заметил Зосимов Разумихину; - что завтра будет, увидим, а сегодня очень даже недурно: значительная перемена с давешнего. Век живи, век учись...
- Знаешь, что мне сейчас Зосимов шепнул, как мы выходили, - брякнул Разумихин, только что они вышли на улицу. ≫

<試訳> 「君が送っていくのは何よりだ」 ゾシーモフがラズミーヒンに言った。「明日どうなるかはとにかく、今日はかなり調子がいいくらいだな。さっきからするとかなりの変わりようだよ。生きている限り学べ、だな…」
「今、出がけにゾシーモフが僕に何を囁いたか分かるかい」 通りへ出るとすぐに、ラズミーヒンが切り出した。

・ ラスコーリニコフのために、客の接待を放ってまで付き添うラズミーヒンの深い友情です。ラスコーリニコフも当然のように行為を受け入れています。そういえば診察してくれたゾシーモフへも、お礼の言葉もないのが不思議な感じです。さっきまで意識を回復しても寝床に伏せたきりだったラスコーリニコフが、意外にも外出してやって来た姿にゾシーモフは驚きます。 " 生きているたぎり、学べ… " は、自分の知見と違った興味あるケースと感じて自戒の言葉を発したのでしょう。

あいつに考えがあるからさ2023-05-03

 ≪- Я, брат, тебе всё прямо скажу, потому что они дураки. Зосимов велел мне болтать с тобою дорогой и тебя заставить болтать, и потом ему рассказать, потому что у него идея... что ты... сумасшедший или близок к тому. Вообрази ты это себе!≫

<試訳> 「あいつら馬鹿だからね、僕はね、君には何でも打ち明けて言うつもりだよ。実はゾシーモフは僕に、道すがらずっと君と話し、君にもしゃべらせて、後で教えろと指示したんだ。あいつに考えがあるからさ… つまり君がね… 気がふれているか、それに近いとね。考えても見たまえよ!」

・ ゾシーモフはラスコーリニコフの言動から、何かがおかしいと医師として直感したのでしょう。ラズミーヒンには、親しいが故に気づかない面があります。性格をよく知っているとは言え、友が秘めているあの凶行の事など知る由もありません。

何を考えていようと放っておきゃいい2023-05-04

 ≪Во-первых, ты второе его уменее, во- вторых, если ты не помешанный, так тебе наплевать на то, что у него такая дичь в голове, а в-третьих, этот кусок мяса, и по специальности своей - хирург, помешался теперь на душевных болезнях, а насчёт тебя повернул его окончательно сегодняшний разговор твой с Заметовым.≫

<試訳> 「第一、君はゾシーモフより三倍も賢いんだし、第二に、もし君がおかしくないんだったら、彼が何を考えていようと放っておきゃいいし、第三に、あの太っちょは、自分の専門が外科医なのに、今や精神科に熱中しやがってね、君がザメートフと交わした今日の会話で、君についての診断をすっかり転換させられたんだよ。

・ 医師のゾシーモフはラスコーリニコフの挙動に病的な問題を感じたのです。ラスコーリニコフはザメートフに、当局を欺く犯罪の手口をいかにもリアルに話して驚かしていました。そもそもあのような凄惨な事件を起こす犯人が普通の感覚とは考えられませんが、それがラスコーリニコフだとは未だ誰一人知らないのです。

裏の裏まで分かった2023-05-05

 ≪- Заметов всё тебе рассказал?
- Всё, и отлично сделал. Я теперь всю подноготную понял, и Заметов понял... Ну, да одним словом, Родя... дело в том... Я теперь пьян капельку... Но это ничего... дело в том, что эта мысль... понимаешь? действительно у них наклёвывалась... понимаешь?≫

<試訳> 「 ザメートフは君に何もかも話したのかい?」
「何もかもね、それでとても良かったんだ。僕は裏の裏まで分かったし、ザメートフも理解したんだ…。まあ要するにね、ロージャ、こういう事なんだ。僕は今ほんのちょっと酔っているけど… それはどうってことない… 問題はね… こういう事さ、分かるかな? 実際、連中の頭で、何度も突っつき回してね… 分かるかな?」

・ 酔っているラズミーヒンの口調が回りくどくて、ザメートフが彼に話した内容が分かりません。ラスコーリニコフとの会話か、事件についての情報でしょう。ラスコーリニコフは、犯行が疑われているかどうかの一点を知りたいはずです。ラズミーヒンの酔いに、もう少し付き合わなければなりません。

何もかもはっきりしたよ2023-05-06

 ≪То есть они никто не смели её вслух высказать, потому дичь нелепейшая, и особенно когда этого красильщика взяли, всё это лопнуло и погасло навеки. Но зачем же они дураки? Я тогда Заметова немного поколотил, - это между нами, брат; пожалуйста, и намёка не подавай, что знаешь; я заметил, что он щекотлив; у Лавизы было, - но сегодня, сегодн всё стало ясно.≫

<試訳> 「つまり、彼等は敢えてその考えを口にしないのさ、だって話にならない馬鹿げた事だし、それに特に、あのペンキ職人を捕らえた時に、その考えはすっかりご破算になって永久に消えちゃったんだ。けれど、どうして彼らは間抜けなんだろう? 僕はその時ザメートフをちょっとばかり張り飛ばしてやったもんさ。これはここだけの話だぜ、いいかい、知ってるのを仄めかすのもやめておけよ。なにしろあいつはひどく気にしているからね。ラビーザの店でやっつけたのさ。- けれど今日という今日は、何もかもはっきりしたよ」

・ ラズミーヒンが事件の犯人像についてザメートフと議論し、諍いを起こしたのです。酔って回りくどい友の話に、張本人のラスコーリニコフは、「僕がやったんだよ!」 と叫び出したい気持ちを抑えているのではないかとも想像します。

君が気絶したのを利用したのさ2023-05-07

 ≪Главное, этот Илья Петрович! Он тогда воспользовался твоим обмороком в конторе, да и самому потом стыдно стало; я ведь знаю...
Раскольников жадно слушал. Разумихин спьяну пробалтывался.
- Я в обморок оттого тогда упал, что было душно и краской масляною пахло, - сказал Раскольников.≫

<試訳> 「何とこれが、副署長のイリヤ・ペトロービッチのしわざなんだ! あいつがあの時、署での君が気絶したのを利用したのさ。もっとも、後になって恥じていたがね、僕は知ってるよ…」
ラスコーリニコフは貪るように聞いていた。ラズミーヒンは酔って内幕を喋った。
「あの時は蒸し暑い上に、油性塗料の臭いがしてたので気絶したんだよ」 ラスコーリニコフが言った。

・ ラズミーヒンは当局の情報に通じています。ラスコーリニコフが家賃滞納の件で出頭した時、署内で事件の話題が出るとすぐに卒倒したのが問題にされたらしいのです。その内容がはっきりせず、彼はじりじりしているようです。

小指にも値しません2023-05-08

 ≪- Ещё объясняет! Да и не онда краска: воспаление весь месяц приготовлялось; Зосимов-то налицо! А только как этот мальчишка теперь убит, так ты себе представить не можешь! "Мизинца, говорит, этого человека не стою!" Твоего, то есть. У него, иногда, брат, добрые чувства. Но урок, урок ему сегодняшний в "Хрустальном дворце", это верх совершенства!≫

<試訳> 「言い訳などいらないよ! それに塗料だけじゃないさ。病気がまる一か月も蝕んでいたんだ。ゾシーモフが証人さ! ところで、あの坊やが今日どんなに打ちのめされたか、君に想像できるもんか! “ あの人の小指にも値しません ” なんて言ってるんだぜ。つまり、君の小指の事さ。あいつはね、時々素直になるんだ。だが、あいつにとっては教訓さ、とてもいい教訓だったよ、今日の " 水晶宮 ” での君の話は、完璧以上だ!」

・ “ 坊や ” は警察署のれっきとした事務官のザメートフをからかって言ったものです。二人の親しい関係を感じます。ラスコーリニコフが例の事件について生々しく解説して、ザメートフを茫然とさせた事を、ラズミーヒンが愉快そうに話しています、

その場にいたかったなあ2023-05-09

 ≪Ведь ты его испугал сначала, до судорог довёл! Ты ведь почти заставил его опять убедиться во всей этой безобразной бессмыслице и потом, вдруг, - язык ему выставил: "На, дескать, что, взял!" Совершенство! Раздавлен, уничтожен теперь! Мастер ты, ей-богу, так их и надо. Эх, не было меня там! Ждал он тебя теперь ужасно.≫

<試訳> 「だって君はザメートフを最初驚かしたじゃないか、震えさせるほどににね! 君はあの馬鹿げた醜悪な想像をほとんど信じ込ませておいて、それから突然、ぺろりと舌を出したんだぜ。“ おい、どうだい!” とばかりにな。完璧だ! 今、あいつはぶちのめされて参ってるぜ! 名人だよ君は、確かに、奴らにはその手でいかなくっちゃな。ちぇっ、その場にいたかったなあ! あいつは君に今ひどく会いたがってるんだ」

・ ラスコーリニコフは、当局に勤めるザメートフが自分をどれほど疑っているかを確かめようとしました。自らの犯行をなぞりながら犯罪をいかにうまく実行するかを話したのです。翻弄してやりこめた印象があります。

あまりしゃべり過ぎたようだな2023-05-10

- А... уж и этот... А в сумасшедшие-то меня почему записали?
- То есть не в суамсшедшие. Я, брат, кажется, слишком тебе разболтался... Поразило, видишь ли, его давеча то, что тебя один только этот пункт интересует; теперь ясно, почему интересует; зная все обстоятельства... и как это тебя раздражило тогда и вместе с болезнью сплелось...≫

<試訳> 「ポルフィ―リィも君と知り合いになりたがってるんだが…」
「ああ… あいつもか… ところでなぜ僕を気が変だとしたんだい?」
「気が変だと言うわけじゃないさ。僕はどうも、あまりしゃべり過ぎたようだな…。さっきゾシーモフが驚いたのはね、君がただ一点にだけ興味を持っているからなんだ。でも、なぜ興味を持つのか、今はっきりしたよ。事情を全部知ってみると… あの時、あの事件が君を苛立たせて、しかも病気と結びついてしまったのが分かったから…」

・ 医者のゾシーモフはラスコーリニコフが事件に妙にこだわっているのを病的だと見ています。ラズミーヒンは事件を知った衝撃が、もともと弱っていた心身をさらに害したのだとして納得します。友があのような事件を起こすなどとは想像もできないのです。