アリョーシャの追憶(1)2009-12-16

 幼子のアリョーシャを胸に抱えて、彼の母が聖像の前で聖母に祈る、というより哀願する印象的な場面で。

≪・・・ лишь выступая всю жизнь как бы светлыми точками из мрака, как бы вырванным уголкам из огромной картины, которая вся погасла и исчезла, кроме этого только уголочка.≫

<試訳> あたかも闇の中の輝く点のように、また、全体は色あせて消え去った巨大な絵から引きちぎられて残った、まさにこの一片のように、生涯を通じて心に浮かんでくるのだ。

 アリョーシャの母は、普通ではない精神状態の女性として描かれているが、我が子の行く末を懇願する姿は哀切で胸を打つ。
 彼は彼女の美しさと、限りない愛情を生涯心に刻む。カラマーゾフの人々の受け継ぐ真情の一つの源泉だと思う。