泥濘と悪臭の中へ2010-04-12

自らを蔑み下降志向するドミートリィの心情

≪но судьба свершится и достойный станет на место, а недостойный скроется в переулок навеки - в грязны свой переулок, в возлюблённый и свойственный ему переулок, и там, в грязи и вони погибнет добровольно и с наслаждением.≫

<試訳>だけど運命は現実のものとなるんだ、ふさわしい者がその場所に着き、ふさわしくない者は永久に裏小路へ身を隠すことでね。我がぬかるみの裏小路へ、身に合った最愛の裏小路へだ。そこで、泥濘と悪臭の中で享楽のうちに自ら進んで破滅するのさ。

「ふさわしい者」がイワンで、「ふさわしくない者」が自分というわけです。この後、アリョーシャが「裏小路というのはグルーシェンカのところですか」と驚きます。ドミートリィはカテリーナと婚約したまま、娼婦グルーシェンカを父フョードルと争うということになります。凄まじいほどの彼の情念に圧倒されます。でも、彼の心の動きには、どこか分かるところもあり不条理と否定し去ることもできません。むしろ純真すぎて痛ましいとさえ思います。