精魂尽き果てていた ― 2021-02-01
≪Та уже при последних усилиях, но ещё раз начинает лягаться.
- А чтобы те леший! - вскрикивает в ярости Миколко. Он бросает кнут, нагибается и вытаскивает со дна телеги длинную и толстую оглоблю, берёт её за конец в обе руки и с усилием размахивается над савраской.
- Разразит! - кричат кругом.
- Убьёт!
- Моё добро! - кричит Миколка и со всего размаху опускает оглоблю. Раздаётся тяжёлый удар.≫
<試訳> 馬はもう精魂尽き果てていたが、もう一度蹴り始めた。 「こいつめ、くたばりやがれ!」 かんかんになってミコールカが怒鳴った。彼は鞭を投げ捨て、身をかがめて馬車の底から長くて太い梶棒を引き出し、その端を両手に持って痩せ馬の上に力いっぱい振りかざした。 「打ち砕くぞ!」 あたりの人々が叫んだ。
「殺してしまう!」
「俺のものだ!」 ミコールカが叫んで、思い切り梶棒を振り下ろした。鈍い音が響いた。
・ 目をそむけたくなるような蛮行です。誰も止める事ができません。老いさらばえた雌馬が撲殺されようとしているこの場面は、ラスコーリニコフの夢の中での出来事ですが、実際に彼自身が反芻してきた事と重なって暗示的です。
- Разразит! - кричат кругом.
- Убьёт!
- Моё добро! - кричит Миколка и со всего размаху опускает оглоблю. Раздаётся тяжёлый удар.≫
<試訳> 馬はもう精魂尽き果てていたが、もう一度蹴り始めた。 「こいつめ、くたばりやがれ!」 かんかんになってミコールカが怒鳴った。彼は鞭を投げ捨て、身をかがめて馬車の底から長くて太い梶棒を引き出し、その端を両手に持って痩せ馬の上に力いっぱい振りかざした。 「打ち砕くぞ!」 あたりの人々が叫んだ。
「殺してしまう!」
「俺のものだ!」 ミコールカが叫んで、思い切り梶棒を振り下ろした。鈍い音が響いた。
・ 目をそむけたくなるような蛮行です。誰も止める事ができません。老いさらばえた雌馬が撲殺されようとしているこの場面は、ラスコーリニコフの夢の中での出来事ですが、実際に彼自身が反芻してきた事と重なって暗示的です。
最後の力を振り絞って ― 2021-02-02
≪- Секу её, секи! Что стали! - кричат голоса из толпы. А Миколка намахивается в другой раз, и дргой удар со всего размаху ложится на спину несчастной клячи. Она вся оседает всем задом, но вспрыгивает и дёргает, дёргает из всх последних сил в разные стороны, чтобы вывезти; но со всех сторон принимают её в шесть кнутов, а оглобля снова вздымается и падает в третий раз, потом в четвёртый, мерно, с размаха.≫
<試訳> 「ひっぱたけ、ひっぱたけ! どうした!」 群衆の中から声が飛んだ。ミコールカは梶棒をもう一度振りかざして、哀れな馬の背中に力任せに次の一撃を加えた。雌馬は尻をつきそうに崩れたが、それでも跳ね上がって、最後の力を振り絞って馬車を運ぼうと、四方八方へ引こうともがくのだった。だが、どの向きからも6本の鞭が馬を捉えた。梶棒がまた振りかざされ3度目が、さらに4度目が規則正しく背に落とされた。
・ 夢なのだと言い聞かせながら訳を進めています。無意識のうちにラスコーリニコフの想念が、夢の形で渦巻いているようです。
<試訳> 「ひっぱたけ、ひっぱたけ! どうした!」 群衆の中から声が飛んだ。ミコールカは梶棒をもう一度振りかざして、哀れな馬の背中に力任せに次の一撃を加えた。雌馬は尻をつきそうに崩れたが、それでも跳ね上がって、最後の力を振り絞って馬車を運ぼうと、四方八方へ引こうともがくのだった。だが、どの向きからも6本の鞭が馬を捉えた。梶棒がまた振りかざされ3度目が、さらに4度目が規則正しく背に落とされた。
・ 夢なのだと言い聞かせながら訳を進めています。無意識のうちにラスコーリニコフの想念が、夢の形で渦巻いているようです。
斧でやったらいいぜ ― 2021-02-03
≪Миколка в бешенстве, что не может с одного удара убить.
- Живуча! - кричат кругом.
- Сейчас беспременно падет, братцы, тут ей и конец! - кричит из толпы один любитель.
- Топором её, чего! Покончить с ней разом, - кричит третий.
- Эх, ешь те комары! Расступись! - неистово вскрикивает Миколка, бросает оглоблю, снова нагибается в телегу и вытаскивает жлезный лом.≫
<試訳> ミコールカは一撃で殺せなかった事に激昂していた。
「しぶとい奴だ!」 あたりの連中が叫んだ。
「じきに必ず倒れるさ、それでおしまいだ!」 群衆の中から野次馬の一人が叫んだ。
「斧でやったらいいぜ、何してる! 一思いに片付けろよ」 もう一人が叫んだ。
「えい、うるせい! どけろ!」 かっとしてミコールカが叫んで梶棒を投げ捨てると、また馬車にかがみこんで金梃子を引っ張り出した。
・ ミコールカは馬車を動かそうとしているのではなく、もはや馬を打ち殺そうという妄執しかありません。囃し立てられ煽られて、抑制のきかない状態です。
“ 斧でやったら… ” は記憶しておくべき重要な伏線です。
- Живуча! - кричат кругом.
- Сейчас беспременно падет, братцы, тут ей и конец! - кричит из толпы один любитель.
- Топором её, чего! Покончить с ней разом, - кричит третий.
- Эх, ешь те комары! Расступись! - неистово вскрикивает Миколка, бросает оглоблю, снова нагибается в телегу и вытаскивает жлезный лом.≫
<試訳> ミコールカは一撃で殺せなかった事に激昂していた。
「しぶとい奴だ!」 あたりの連中が叫んだ。
「じきに必ず倒れるさ、それでおしまいだ!」 群衆の中から野次馬の一人が叫んだ。
「斧でやったらいいぜ、何してる! 一思いに片付けろよ」 もう一人が叫んだ。
「えい、うるせい! どけろ!」 かっとしてミコールカが叫んで梶棒を投げ捨てると、また馬車にかがみこんで金梃子を引っ張り出した。
・ ミコールカは馬車を動かそうとしているのではなく、もはや馬を打ち殺そうという妄執しかありません。囃し立てられ煽られて、抑制のきかない状態です。
“ 斧でやったら… ” は記憶しておくべき重要な伏線です。
にぶい音が響いた ― 2021-02-04
≪- Берегись! - кричит он и что есть силы огорошивает с размаху свою бедную лошаденку. Удар рухнул; кобыленка зашаталась, осела, хотела было дёрнуть, но лом снова со всего размаху ложится ей на спину, и она падает на землю, точно ей подсекли всё четыре ноги разом.
- Добивай! - кричит Миколка и вскакивает, словно себя не помня, с телеги. Несколько парней, тоже красных и пьяных, схватывают что попало - кнуты, палки, оглоблю, и бегут к издыхающей кобыленке.≫
<試訳> 「危ねえぞ!」 ミコールカが叫んで、振り上げた金梃子をありったけの力で哀れな馬に打ち下ろした。にぶい音が響いた。雌馬はぐらついて崩れ落ちた。それでも起き上がろうとしたが、またも思い切り振り上げた金梃子が背中に打ち下ろされ、まるで4本の足を一度になぎ払われたように地面に倒れた。
「息の根を止めろ!」 ミコールカは叫ぶと、夢中で馬車から飛び降りた。やはり酔って赤い顔をした数人の若者が、手当たり次第に鞭や、棒や、梶棒を手に取って死にかけている雌馬に駆け寄った。
・ 酔って理性を失った人々がこうまで荒んで、残酷な行為ができるものかと慄然とします。しかもこの馬はこれまで働き手として主人に尽くしてきたはずです。こんな仕打ちを受けて命を奪われるのは理不尽です。この抑制のきかない荒々しい感情が、やがて人間に向かわないとも限りません。
人間の増長、暴虐、熱狂の怖さへの作者の強い憤りが時を越えて伝わって来ます。
- Добивай! - кричит Миколка и вскакивает, словно себя не помня, с телеги. Несколько парней, тоже красных и пьяных, схватывают что попало - кнуты, палки, оглоблю, и бегут к издыхающей кобыленке.≫
<試訳> 「危ねえぞ!」 ミコールカが叫んで、振り上げた金梃子をありったけの力で哀れな馬に打ち下ろした。にぶい音が響いた。雌馬はぐらついて崩れ落ちた。それでも起き上がろうとしたが、またも思い切り振り上げた金梃子が背中に打ち下ろされ、まるで4本の足を一度になぎ払われたように地面に倒れた。
「息の根を止めろ!」 ミコールカは叫ぶと、夢中で馬車から飛び降りた。やはり酔って赤い顔をした数人の若者が、手当たり次第に鞭や、棒や、梶棒を手に取って死にかけている雌馬に駆け寄った。
・ 酔って理性を失った人々がこうまで荒んで、残酷な行為ができるものかと慄然とします。しかもこの馬はこれまで働き手として主人に尽くしてきたはずです。こんな仕打ちを受けて命を奪われるのは理不尽です。この抑制のきかない荒々しい感情が、やがて人間に向かわないとも限りません。
人間の増長、暴虐、熱狂の怖さへの作者の強い憤りが時を越えて伝わって来ます。
十字架ってものがねえな ― 2021-02-05
≪Миколка становится сбоку и начинает бить ломом зря по спине. Кляча протягивает морду, тяжело вздыхает и уирает.
- Доканал! - кричат в толпе.
- А зачем вскачь не шла!
- Моё добро! - кричит Миколка, с ломом в руках и с налитыми кровьвю глазами. Он стоит будто жалея, что уж некого больше бить.
- Ну и впрямь, знать, креста на тебе нет! кричат из толпы уже многие голоса.≫
<試訳> ミコールカは横に立って金梃子でむやみに打ち始めた。痩せ馬は鼻ずらを突き出して辛そうに大きく息をして、それから息を引き取った。
「息の根を止めたぜ!」 人混みの中に声が上がった。
「それにしても、何で走らせなかったのかね!」
「俺のものだい!」 叫んだミコールカは、手に金梃子を持ち、血走った眼をしていた。彼はまるでもうこれ以上打つ相手がいないのを残念がっているように立っていた。
「確かにお前にゃ十字架ってものがねえな!」 群衆の中から今度は多くの声が上がった。
・ 自分のした事の非情さ、残酷さに気づかずに立ちすくむミコールカの姿は醜悪です。さすがにやり過ぎを非難する声が人々から上がりますがもう遅すぎます。私達人間は何度このような過ちを繰り返してきたか、と胸を突かれます。歴史の暗喩にもとれる普遍性があると思います。
“ 十字架 ” はこの小説で決定的な場面に出てきますが、「白痴」の中で、殺意を秘めるラゴージンと主人公のムイシュキン侯爵が十字架を交換し合う緊張した場面が印象的です。信仰と良心の象徴のようです。
- Доканал! - кричат в толпе.
- А зачем вскачь не шла!
- Моё добро! - кричит Миколка, с ломом в руках и с налитыми кровьвю глазами. Он стоит будто жалея, что уж некого больше бить.
- Ну и впрямь, знать, креста на тебе нет! кричат из толпы уже многие голоса.≫
<試訳> ミコールカは横に立って金梃子でむやみに打ち始めた。痩せ馬は鼻ずらを突き出して辛そうに大きく息をして、それから息を引き取った。
「息の根を止めたぜ!」 人混みの中に声が上がった。
「それにしても、何で走らせなかったのかね!」
「俺のものだい!」 叫んだミコールカは、手に金梃子を持ち、血走った眼をしていた。彼はまるでもうこれ以上打つ相手がいないのを残念がっているように立っていた。
「確かにお前にゃ十字架ってものがねえな!」 群衆の中から今度は多くの声が上がった。
・ 自分のした事の非情さ、残酷さに気づかずに立ちすくむミコールカの姿は醜悪です。さすがにやり過ぎを非難する声が人々から上がりますがもう遅すぎます。私達人間は何度このような過ちを繰り返してきたか、と胸を突かれます。歴史の暗喩にもとれる普遍性があると思います。
“ 十字架 ” はこの小説で決定的な場面に出てきますが、「白痴」の中で、殺意を秘めるラゴージンと主人公のムイシュキン侯爵が十字架を交換し合う緊張した場面が印象的です。信仰と良心の象徴のようです。
家に帰ろうな ― 2021-02-06
≪Но бедный мальчик уже не помнит себя. С криком пробивается он сквозь толпу к савраске, обхватывает её мертвую, окровавленную морду и целует её, целует её в глаза, в губы... Потом вдруг вскакивает и в исступлении бросается с своими кулачонками на Миколку. В этот миг отец, уже долго гонявшийся за ним, схватывает его наконец и выносит из толпы.
- Пойдём! пойдём! - говорит он ему, - домой пойдём!≫
<試訳> しかし、可哀そうな少年はもはや我を忘れていた。わっと叫び声をあげて人混みをかき分けて鹿毛の馬へ近づき、死んだ馬の血まみれの鼻面を抱いて顔や目や唇に口づけするのだった…。それから突然跳ね起きると、小さな拳を振り上げて夢中になってミコールカに飛びかかった。この瞬間、ずっとあとを追ってきた父親が、やっと息子をつかまえて人混みから彼を連れ出した。
「行こう! 行くんだよ!」 父親が息子に言った。「家に帰ろうな!」
・ ラスコーリニコフ少年が死んだ馬を憐れみ、ミコールカの蛮行に憤慨して飛びかかります。無我夢中の行動は大人の誰もができなかった真情の発露です。
- Пойдём! пойдём! - говорит он ему, - домой пойдём!≫
<試訳> しかし、可哀そうな少年はもはや我を忘れていた。わっと叫び声をあげて人混みをかき分けて鹿毛の馬へ近づき、死んだ馬の血まみれの鼻面を抱いて顔や目や唇に口づけするのだった…。それから突然跳ね起きると、小さな拳を振り上げて夢中になってミコールカに飛びかかった。この瞬間、ずっとあとを追ってきた父親が、やっと息子をつかまえて人混みから彼を連れ出した。
「行こう! 行くんだよ!」 父親が息子に言った。「家に帰ろうな!」
・ ラスコーリニコフ少年が死んだ馬を憐れみ、ミコールカの蛮行に憤慨して飛びかかります。無我夢中の行動は大人の誰もができなかった真情の発露です。
胸が苦しくてたまらなかった ― 2021-02-07
≪- Попочка! За что они... бедную лошадку... убили! - всхлипывает он, но дыханье ему захватывает, и слова криками вырываются из его стесненной груди.
- Пьяные, шалят, не наше дело, пойдём! - говорит отец.
Он обхватывает отца руками, но грудь ему теснит, теснит. Он хочет перевести дызание, вскрикнуть, и просыпается. Он проснулся весь в поту, с мокрыми от поту волосами, задыхаясь, и приподнялся в ужасе.≫
<試訳> 「お父さん! どうしてあの人達は… 可哀そうな馬を… 殺したの!」 少年はしゃくりあげ、息が切れ、言葉が叫び声となって苦しい胸からほとばしった。
「酔っ払い達が悪ふざけをしてるんだよ、関係ないさ、さあ行こう!」 父親が言った。
息子は父親にしがみついたが、胸が苦しくてたまらなかった。深く息を吸って叫びたかった、そこで目が覚めた。目覚めると全身汗ぐっしょりで、髪の毛も濡れていた。彼は息を切らしながら怖ろしい気分で起き上がった。
・ ラスコーリニコフが夢で見たのは、幼い自分の眼前で馬が撲殺されるまでの、一部始終の凄まじい光景でした。在りし日の父も登場しましたが、自分の心情が十分に伝わらなかったようです。あまりの衝撃に、目覚めてからも興奮を引きずっています。
- Пьяные, шалят, не наше дело, пойдём! - говорит отец.
Он обхватывает отца руками, но грудь ему теснит, теснит. Он хочет перевести дызание, вскрикнуть, и просыпается. Он проснулся весь в поту, с мокрыми от поту волосами, задыхаясь, и приподнялся в ужасе.≫
<試訳> 「お父さん! どうしてあの人達は… 可哀そうな馬を… 殺したの!」 少年はしゃくりあげ、息が切れ、言葉が叫び声となって苦しい胸からほとばしった。
「酔っ払い達が悪ふざけをしてるんだよ、関係ないさ、さあ行こう!」 父親が言った。
息子は父親にしがみついたが、胸が苦しくてたまらなかった。深く息を吸って叫びたかった、そこで目が覚めた。目覚めると全身汗ぐっしょりで、髪の毛も濡れていた。彼は息を切らしながら怖ろしい気分で起き上がった。
・ ラスコーリニコフが夢で見たのは、幼い自分の眼前で馬が撲殺されるまでの、一部始終の凄まじい光景でした。在りし日の父も登場しましたが、自分の心情が十分に伝わらなかったようです。あまりの衝撃に、目覚めてからも興奮を引きずっています。
心の中が混乱して暗かった ― 2021-02-08
≪"Слава богу, это только сон! - сказал он, садясь под деревом и глубоко переводя дыхание. - Но что это? Уж не горячка ли во мне начинается: такой безобразный сон!" Всё тело его было как бы разбито; смутно и темно на душе. Он положил локти на колена и подпёр обеими руками голову. "Боже! - воскликнул он, - да неужели ж, неужели ж я в самом деле возьму топор, стану бить по голове, размозжу ей череп...≫
<試訳> “ 夢で良かった ” 木の根方に腰を下ろし、深く息をつきながら彼は言った。“ しかしどうしたんだ? 熱病にでも罹かったんだろうか、こんな醜悪な夢を見るなんて!” まるで体中を打ちのめされたかのようだった。心の中が混乱して暗かった。彼は膝に肘を載せて頭を両手で支えた。“ ああ!” 彼は叫んだ。“ 僕は果たして、果たして本当に斧を手にし、頭めがけてあいつの頭蓋を打ち砕くつもりなのか…
・ 悪夢を見て心身ともにぐったりして彼が発したのは、自分もミコールカの様に振舞うのかという自問です。このところずっと頭の中にあったものが夢の形で現れたのです。恐ろしい計画を密かに抱えていては、他の全てが霞んでしまうでしょう。
<試訳> “ 夢で良かった ” 木の根方に腰を下ろし、深く息をつきながら彼は言った。“ しかしどうしたんだ? 熱病にでも罹かったんだろうか、こんな醜悪な夢を見るなんて!” まるで体中を打ちのめされたかのようだった。心の中が混乱して暗かった。彼は膝に肘を載せて頭を両手で支えた。“ ああ!” 彼は叫んだ。“ 僕は果たして、果たして本当に斧を手にし、頭めがけてあいつの頭蓋を打ち砕くつもりなのか…
・ 悪夢を見て心身ともにぐったりして彼が発したのは、自分もミコールカの様に振舞うのかという自問です。このところずっと頭の中にあったものが夢の形で現れたのです。恐ろしい計画を密かに抱えていては、他の全てが霞んでしまうでしょう。
耐えられないと完全に悟った ― 2021-02-09
≪буду скользить в липкой, тёплой крови, взламывать замок, красть и дрожать; прятаться, весь залитый кровью... с топором... Господи, неужели?"
Он дрожал как лист, говоря это. "Да что же это я! - продолжал он, восклоняясь опять и как бы в глубоком изумлении, - ведь я знал же , что я этого не вынесу, так чего ж я до сих пор себя мучил? Ведь ещё вчера, вчера, когда я пошёл делать эту... пробу, ведь я вчера же понял совершенно, что не вытерплю...≫
<試訳> べとつく生温かい血の海に足を取られながら、錠をこじ開けて金を盗むのか? そして、全身に血を浴び… 斧を持ち、震えながら人目を避けるのか… ああ、果たしてそんな事ができるだろうか?”
彼はそんな事を喋りながら、木の葉のように震えた。 “ いったい僕は何という事を!” 彼は再び起き上がり、心底驚いたように続けた。“ あれが僕には耐えられないのを知ってたはずじゃないか、それならなぜこれまで悩んできたんだ? だって、昨日、昨日だ、もうそれを… 試しに行った時に、耐えられないと完全に悟ったじゃないか…。
・ 自分が斧を振るう事を考え続けていたのです。昨日質屋の老婆の所へ行ったのはその下見でした。そんな事はとてもできないと実感した戻ったのですが…。
Он дрожал как лист, говоря это. "Да что же это я! - продолжал он, восклоняясь опять и как бы в глубоком изумлении, - ведь я знал же , что я этого не вынесу, так чего ж я до сих пор себя мучил? Ведь ещё вчера, вчера, когда я пошёл делать эту... пробу, ведь я вчера же понял совершенно, что не вытерплю...≫
<試訳> べとつく生温かい血の海に足を取られながら、錠をこじ開けて金を盗むのか? そして、全身に血を浴び… 斧を持ち、震えながら人目を避けるのか… ああ、果たしてそんな事ができるだろうか?”
彼はそんな事を喋りながら、木の葉のように震えた。 “ いったい僕は何という事を!” 彼は再び起き上がり、心底驚いたように続けた。“ あれが僕には耐えられないのを知ってたはずじゃないか、それならなぜこれまで悩んできたんだ? だって、昨日、昨日だ、もうそれを… 試しに行った時に、耐えられないと完全に悟ったじゃないか…。
・ 自分が斧を振るう事を考え続けていたのです。昨日質屋の老婆の所へ行ったのはその下見でした。そんな事はとてもできないと実感した戻ったのですが…。
どうしていつまでも躊躇しているんだ ― 2021-02-10
≪Чего ж я теперь-то? Чего ж я ещё до сих пор сомневался? Ведь вчера же, сходя с лестницы, я сам сказал, что это подло, гадко, низко, низко... ведь меня от одной мысли наяву стошнило и в ужас бросило... Нет, я не вытерплю, не вытеролю! Пусть, пусть даже нет никаких сомнений во всех этих расчётах, будь это всё, что решено в этот месяц, ясно как день, справедливо как арифметка.≫
<試訳> それなのになぜ今になって? どうしていつまでも躊躇しているんだ? 昨日階段を降りながら自ら言ったじゃないか、こんな事は下劣で、醜悪で、卑劣だと… あの事一つを考えただけで現実に僕は吐き気がし、恐怖に陥ったじゃないか…。 駄目だ、僕は耐えられない、持ちこたえられないんだ! たとえ、たとえこの計算の全てに何の疑念もないとしても、このひと月の間に決めた事が全て明白で、算術のように正当だとしても、だめだ。
・ 斧を使った犯行の計画について煩悶しています。つい今しがた夢で見たような惨劇に耐えられないのを自覚しているのです。昨日の下見でも、緊張の連続でした。彼がなぜそのような事を計画し苦しまなければならないのか、まだ明らかではありません。
<試訳> それなのになぜ今になって? どうしていつまでも躊躇しているんだ? 昨日階段を降りながら自ら言ったじゃないか、こんな事は下劣で、醜悪で、卑劣だと… あの事一つを考えただけで現実に僕は吐き気がし、恐怖に陥ったじゃないか…。 駄目だ、僕は耐えられない、持ちこたえられないんだ! たとえ、たとえこの計算の全てに何の疑念もないとしても、このひと月の間に決めた事が全て明白で、算術のように正当だとしても、だめだ。
・ 斧を使った犯行の計画について煩悶しています。つい今しがた夢で見たような惨劇に耐えられないのを自覚しているのです。昨日の下見でも、緊張の連続でした。彼がなぜそのような事を計画し苦しまなければならないのか、まだ明らかではありません。
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